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ファインダー  作者: 福山直木
フィルム ~それぞれの活動報告~
30/74

●とある写真家の憂鬱5

翌日、デパートに行くと他の出展者が準備をしていいた。

「おはようございます」

挨拶をすると笑顔で返してくれた。ハンドメイドグループの方々は皆、50代から60代のおばあちゃんだった。いろいろと会話をしながら準備する姿は輝いていた。私もこんな感じで輝けているだろうかと考えた。


昨日壁に掛けた写真を眺めた。どれもこれもお気に入りの写真たち。撮った時の出来事や感情が思い出さなくても浮かぶ。

その写真のほとんどは、定期的に個展を開くようになる前のもの。元から写真に興味はあったため、当時の写真が多いのだ。


個展を繰り返し、ねぎらいの言葉も指摘の声も掛けられた。まだ少ないがファンもできた。それが間違いなくプレッシャーになっているように感じる。

自分の創作物を発信するだけならネット上でも出来るご時世。プロを志す理由を問われた時、相手を納得させる程の理由がある訳じゃない。


「あの・・・もうやってますか?」

前も来てくれたことのある顔見知りだった。

気が付けば、開始時間を過ぎていた。

「はい。どうぞ」その人を招いた。

早速、展示を眺めながら話し掛けてきた。

「新作はある?」

「これです」

指し示した写真はとある日の空。私がまだ学生だった頃に撮ったものだった。

「これはまた、悲しそうな雰囲気の写真だね」

「悲しそう・・・ですか」

「うん、とても・・・」

切なそうな顔をする。

「こういう写真しかないのかもしれません・・・色んな写真を撮ってきたはずなのに・・・」

「やはり、君の写真は悲しいイメージばかりだね」

そのあと、いくつかアドバイスをして帰ろうとした。名前も素性も知らない四十代くらいの男性は、いつもこんな風だ。

帰りかけた男性に問いかけた。

「あの・・・お名前は?」

「大石・・・と言います。あなたと同じ写真を愛するものです。ではまた」

そう言い残して、去っていった。

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