◆ひとりぼっちな写真部の日常10
次の日、部室に向かうと誰も居なかった。
前田先生に出欠を確認してもらうと、二人とも休んでいるという。
木次川くんはともかく、石田さんが気になった。風邪をひいたと連絡があったようだが体調が悪そうな素振りはなかったため、昨日のことが原因ではないかと思った。
次の日、部室に向かうと木次川くんがいた。
私が入ってきたことを気にも留めず、椅子にもたれ掛かってスマホをいじっている。
「・・・こ、こんにちは」
話しかけてみたが、返答はなかった。
そのまま沈黙状態が続いた。
彼の目の前に座って本を読みながら、様子をうかがっていた。目の前に座ってから気づいたのだが、彼も様子をうかがっている。
何分かしてついに目が合った。しかし、彼はすぐに目を反らした。
結局、何の進展もなく無言のまま帰ってしまった。
木次川くんのことが気がかりだが、今日も来なかった石田さんのことも心配だった。
次の日も木次川くんだけ、ちゃんと出席していた。
真意を知りたいのだが、本人は相変わらず私の声に耳を傾けようとはしない。
そのため、前田先生に石田さんの状態を確認するついでに彼のことを訊いてみることにした。
下校時間にはまだ早い時間帯。思い思いの放課後を過ごす生徒たちが行き交う職員室前で先生を待っていた。
「お待たせ」
「お忙しいところ、すみません。石田さんの様子はどうですか?」
「今日は来てたみたいよ。部活に来てないの?」
「はい・・・」
「木次川くんが何かしたかしら?」
「いえ、何かした訳じゃないんですけど」
言葉を続けようとしたが、先生が遮るように言った。
「ちょっと威圧的に感じちゃったのね」
申し訳なさそうな顔をした。
「たぶん、そうかと・・・」
少し気まずい雰囲気になりそうだったため話を続けた。
「木次川くんは部に入りたいと自分から?」
さらに申し訳なさそうに答えた。
「そうではないの・・・そうした方が良いって提案したら、勝手にしろって言ってきてね・・・」
「それで写真部に?」
「ごめんなさい。あなたなら上手く動かしてくれると思ったんだけど」
そんな風に見えるらしいが、そんな片鱗は一切ない。
「そんなことありませんよ」
「私が石田さんのことをどうにかするから、ハルミさんは残りの部員と木次川くんのことに集中してちょうだい。彼は不器用だから、こちら側から歩み寄ってあげないとコミュニケーションがとれないの」
「わかりました。石田さんのことをお願いします」
先生に挨拶をして、再び部室に戻った。
誰もいない部室で外を眺めながら飲む無糖珈琲は、いっそう苦く感じた。
「よし、頑張るか・・・」
木次川くんに歩み寄るため、明日はもっと話しかけてみようと決意した。




