▲ついてないサラリーマンの苦悩5
ちょっとした世間話をしながらラーメンを食べ終えた。妹が支払いを済まして店を出た。
妹を家に送る途中、彼女は沈黙を破った。
「で、どうなの?」
静まりかえった夜道に彼女の声が響く。
問いの意味は分かっている。自分はどうしたいのかと訊いているのだろう。
「正直どうしていいのか、どうしたらいいのか分からない・・・」
答えを出せない自分が不甲斐なかった。
「じゃ、考えといて。まとまったら教えてよ」
返答にうんざりしたのか、だるそうに言った。
それから間もなく、呟くように妹は言った。
「本当は言うつもりなかったけど・・・父さんに話をつけとけって言われたんだ・・・」
その言葉に驚かずにはいられなかった。
「まじか!ほ、本当なのか?」
彼女はうんと頷いた。
「あくまで確認だって言ってたから、急ぐ必要はないと思うけど」
「そうか・・・」
もう猶予は少ないということだ。
沈黙したまま歩き続ける。
少し間が空いて「そうだ。これあげる」と妹が言う。
思い出したようにポケットから紙を取り出した。
「大学の先生がくれたんだけど、色々あって行く暇ないからさ・・・まぁ、興味はないと思うけど、無趣味卒業できるかもしれないし行ってみ」
余計なお世話だと心で思いながら、受け取った。
それはとある写真展のチケットだった。
妹は合わせたように呟く。
「お父さん、まだカメラやってるんだって」
偶然だと思いたいのだが、もしかしたら先生がくれたというのは嘘で考えさせるために渡したのではと考えを巡らせてしまう。
とりあえず、自然な感じで返事をした。
「そうか・・・親父も物好きだな」
「お兄ちゃんがあまりにも無趣味なんだよ」
呆れたような目でこっちを見る。
「そういう、お前は趣味あるのか?」
「もちろん!お兄ちゃんとは違うの!」
自信満々に返事をした。
「それは・・・その趣味は・・・仕事になるのか?」
もし、それが仕事として成立するものならば、彼女に継がせることなどできない。無論そのつもりはないのだが。
何かを考えて言葉を選ぶように話した。
「私ね・・・やっぱりいいや。趣味は仕事にする予定はないよ」
「なんだよ・・・気になるだろ」
それを聞いた途端に、妹はごまかすように早口で言った。
「なんでもないから。それじゃ、このあたりでいいよ」
気づけば、妹の住むアパートが見えていた。
「あぁ、わかった。ラーメンありがとう」
「次会う時までに考えを固めておいてよ」
念を押すように言った。
「わかってる。それじゃあな」
返事をして、彼女と別れた。




