帝国の救護院
今回すごく短くてすみません…!
港町からの景色とは一変し、帝都はまさに大都会といった感じであった。様々な人種が入り乱れ、民族衣装かのように着ている服も異なるが、それが良い意味で調和されている。主要な道は石畳でできており、魔道具が発展しているからか、街灯や噴水などの設備も多いように思われる。
教会はモスクやクーポラを連想させるようなドーム型で、魔石が煌びやかに散りばめられていた。
この世界ではエレミシア神を唯一神として信仰されており、世界各地に教会が建てられている。聖典では、男性の太陽神と月の女神が溶け合い今の形になったとされ、神像は中性的な物になっている。神に祈る場所として教会があるが、建物の作りにはこだわりはないようだった。現に、バイディン王国の教会はどちらかというとロココ様式のような教会であり、帝都に比べてやや簡素であった。
本当に神が現れて助言をしていたり、祈りによって加護を受けることや、自分の能力が上がるようなことはなく、スキルアップは完全に努力による経験と実績である。教会と併設するように救護院があるのも、負傷者の精神的安定を保つことを目的としている節がある。そういった宗教観はこの世界がゲームと思えないような現実味を帯びていた。
教会では通常のポーションだけでなく、治癒術師が治癒力を付与したハイポーションなどが販売されており、それが主な収入源となっている。治癒術師のランクに応じて生成できるポーションランクは異なり、ランクに応じた料金となるのだが、教会での治癒術師からの直接治癒は基本的には無償で提供されている。
「大きな教会ですね」
リズは、そのまま後ろに倒れるのではないかというほど見上げたまま感嘆していた。
「これだけ大きな教会となると、救護院の方も立派なのでしょうね。きっと働き手は多い方が良いわね!」
「フローラ様…逞しいのは良いことですが、他にご感想はないんですか」
複雑そうな表情のリズを横目に、その重厚な扉を開けた。
「こんにちは。ここで治癒術師の登録をしたいのですが、可能でしょうか」
港町では常に募集はされていると聞いたが、一応確認する。聖職者と思われる女性は、まさに聖母のような微笑みで対応してくれた。
「帝都教会へようこそ。治癒術師様のご登録は受け付けております。登録者が少ないため、是非とも宜しくお願いします」
と頭を下げられてしまった。
「お二人とも治癒術師様でよろしかったでしょうか?」
「えーっとぉ、私はですね…」
「治癒術師は私だけです。彼女と一緒に登録は難しいでしょうか」
「助手の方は治癒術師としては登録できませんが、お世話係としてはご登録できますよ」
どうやら、たまにギルドメンバー同士でここで暫く働く人もいるらしく、治癒術師とその相方の受け入れは珍しくないとのことであった。
「よかったわね、リズ」
「はい! これからもフローラ様のお世話係を頑張ります!」
「お世話をするのは負傷者の方々よ?」
固まったリズの表情を見て急に不安になった。
帝都の教会では、教会と修道女が暮らす修道院、負傷者の治療を行う救護院の三つの建物があり、治癒術師や世話係らの生活は修道院となる。案内された部屋に荷物を置いた私たちは、早速救護院へと向かった。
救護院の中は意外と消毒液特有の臭いは全くなく、負傷者のいる部屋ははめ殺しの窓があるためか、どこか湿気を感じるなといった印象であった。
入り口にはシスターと少女が待っていた。白髪混じりの金髪を一つに纏めたシスターは救護院長であり、治癒術師だと紹介される。
「救護院の中は、長くここで従事してくれている彼女にお任せするわね。若いけれど、ここを一番よく知ってくれているのよ。フローラさんはその後で私の部屋に来てくれるかしら。それではお願いしますね、セシリア」
そう言い残して、救護院長は部屋を後にし
た。
「初めまして、セシリアです。これから宜しくお願いします!」
救護院長に紹介された彼女、セシリアは気丈な顔立ちで一歩前へ踏み出し、見た目と同じく溌剌とした声で挨拶をするが、目つきはどこか警戒心を持ったように鋭かった。
「まず始めに、ここでの怪我人への関わり方や治療については規則に則って行って下さい。負傷者への直接手当は禁止です」
治療するのに直接手当が禁止とは? 中々前途多難な予感がし、リズと顔を見合わせた。




