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武術師範は異世界でも道を示す  作者: 白玉男爵
第三章 武術師範、名を知られる
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武術師範、帰路に就く(後編)

帰路の馬車。


往路では徒歩だった道も、今回は馬車だったこともあり、景色は驚くほど早く流れていった。


荷台ではビル、シャーロット、カミリー、そしてアリアの四人が途切れることなく話を続けている。


ヤスヒコはその少し離れた場所に腰掛け、流れていく景色を静かに眺めていた。


「そういえば先生って、旅の途中でも全然疲れた顔しないよね」


シャーロットが不思議そうに呟く。


「確かに」


ビルも頷いた。


「俺なんか尻が痛くて仕方ないのに」


「鍛え方が違うんじゃないか?」


カミリーが苦笑する。


その横でアリアは頬杖をつきながらヤスヒコを眺めていた。


「ヤスヒコってさ、本当に何者なの?」


ヤスヒコは街道の先を見たまま答える。


「冒険者だ」


「それは知ってるって」


アリアは呆れたように笑った。


「そういうことじゃないんだけどなぁ」


結局、それ以上は聞かなかった。


聞いても答えないことは、もう何となく分かっていたからだ。


──


二日後。


街道の先に、見慣れた城壁が見えてくる。


エンターサンド。


ビルは思わず声を上げた。


「帰ってきた!」


シャーロットも嬉しそうに身を乗り出す。


「やっぱり落ち着く!」


カミリーも小さく微笑んだ。


「長かったようで短かった」


ヤスヒコは静かに街を見つめる。


「行くぞ」


その一言で、一行は馬車を降りた。


エンターサンド冒険者ギルド。


昼過ぎということもあり、中は多くの冒険者で賑わっていた。


扉が開く。


「……あ」


誰かが呟く。


「帰ってきたぞ」


「あいつらだ」


視線が一斉に入口へ集まった。


その中を、ヤスヒコたちは静かに歩いていく。


受付では、見慣れた女性が笑顔で迎えた。


エミリアだった。


「お帰りなさい、ヤスヒコさん」


その笑顔は、三週間前と何一つ変わらない。


ヤスヒコも軽く頭を下げる。


「ああ」


「ご無事で何よりです」


その様子を見ていたビルたちも自然と笑みを浮かべた。


しかし。


酒場の奥から、数人の冒険者が立ち上がる。


「おい!」


「王都どうだった!」


「昇級審査は!?」


次々と声が飛ぶ。


ビルは少し得意げに笑った。


「聞いて驚くなよ!」


「先生――」


そこでヤスヒコが新しい冒険者証を受付へ差し出した。


エミリアはそれを受け取る。


一瞬。


目が止まった。


「……え?」


何度か見直す。


もう一度見る。


そして。


「に……二級!?」


思わず声が裏返った。


ギルド中が静まり返る。


「二級!?」


「嘘だろ!?」


「この短期間で!?」


「何があったんだ!」


一気に騒ぎになる。


エミリアもまだ信じられない様子だった。


「ヤ、ヤスヒコさん……」


「本当に二級なんですか?」


「ああ」


短く答える。


それだけで十分だった。


ギルド中にどよめきが広がる。


「本当に二級だ……」


「いや、あり得ねぇ……」


「三週間だぞ?」


「どうやったらそんなことになるんだ」


ビルは腕を組み、満足そうに笑った。


「だから言っただろ」


「先生はすごいんだって」


シャーロットも嬉しそうに胸を張る。


「ね!」


「先生だもん!」


カミリーは苦笑しながら二人を見る。


「お前たちが威張るな」


その時だった。


エミリアが、ヤスヒコの後ろへ目を向ける。


そこには金髪の少女が立っていた。


「……あの」


「そちらの方は?」


アリアは一歩前へ出る。


満面の笑みを浮かべた。


「やっほー、アリア・グランだよ!」


「ちょっとヤスヒコについてきちゃった!」


その瞬間。


ギルドの空気が凍り付いた。


「…………」


誰も言葉を発しない。


数秒。


沈黙が続く。


そして。


「「えええええぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」」


ギルド中に、この日一番の絶叫が響き渡った。


誰もが目を疑い、誰もが自分の耳を疑う。


王都へ向かった一人の六級冒険者は、


二級冒険者となって帰ってきた。


その隣には、特級冒険者アリア・グランが立っている。


誰一人として想像もしなかった帰還だった。


だが、当の本人だけは何一つ変わらない。


階級が変わろうと、周囲の評価が変わろうと。


ヤスヒコは今日までと同じように、自分にできることを積み重ねていくだけだった。


だからこそ、


その静かな歩みは、ここからさらに大きく動き始めようとしていた。

第三章はここで終了です。


時系列や話し方等々おかしな点や矛盾点があれば教えてください。

頭抱えながら直します。

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