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武術師範は異世界でも道を示す  作者: 白玉男爵
第三章 武術師範、名を知られる
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武術師範、王との謁見(後編)

冒険者証を受け取ったヤスヒコを見て、フレッド王は満足そうに頷く。


「今後も王国のために力を貸してほしい」


ヤスヒコは迷いなく答えた。


「受ける依頼を変えることはありません」


「これまで通り、できることをするだけです」


「階級が変わっても、それは変わりません」


その言葉を聞いた瞬間だった。


「ぶはっ!」


突然、広間の端から豪快な笑い声が響いた。


「はっはっはっは!」


「やっぱりそう言うと思ったぜ!」


全員の視線がそちらへ向く。


そこには、一人の大男が立っていた。


見慣れた顔。


ヤスヒコが問いかけた。


「……ロブか」


「よぅ!」


普段通りの調子で挨拶をする大男。


その様子を見ていたシャーロットも驚きを隠せない。


「えっ!?」


「ロブさんってあのロブさん!?」


カミリーも続く。


「先生、知ってたんですか?」


「関係者とは聞いていた」


ビルは口を半開きにしたまま固まっていた。


男は笑いながら歩いてくる。


「いやぁ、悪かった悪かった」


「黙ってた方が面白そうだったからよ」


フレッド王が苦笑する。


「紹介しよう」


「第四騎士団団長、ロベルト・トールだ」


その瞬間。


ビルたち三人は完全に固まった。


「……え?」


「団長!?」


ロベルトは豪快に笑いながら頭をかいた。


「騎士団長なんて名乗ってたら、気軽に酒も飲めねぇからな」


「堅苦しいのは苦手なんだ」


そしてヤスヒコの前まで歩く。


「ま、変わらずよろしくな」


ニヤリと笑った。


たった、それだけだった。


ヤスヒコは数秒見つめたあと、小さく頷く。


「ああ」


その何気ないやり取りに、広間の空気が一気に和らぐ。


ロベルトは腹を抱えて笑った。


「やっぱお前さん最高だ!」


「俺が王国の騎士団長だって聞いても反応薄いな!」


ヤスヒコは静かに答える。


「ロブはロブだ」


その一言に、今度はフレッド王までもが声を上げて笑った。


「ははは!」


「確かにその通りだ!」


「ロベルト。よい縁を得たようだな」


ロベルトは愉快そうに答える。


「ええ、いい友を待ったもんですな」


謁見の間は、先ほどまでの厳かな空気が嘘のように、穏やかな笑いに包まれていた。


その後は当初の緊張感も薄れ、終始和やかな雰囲気で謁見を終えた。


──


正午過ぎ。


王城の大階段を下りながら、ビルが何度も振り返った。


「夢みたいだった……」


シャーロットも新しい冒険者証を見つめる。


「先生、本当に二級になっちゃったね」


カミリーは静かに笑う。


「先生なら、どの階級でも通用します」


ヤスヒコは三人を見渡した。


「階級は変わった」


「だが、積み重ねることは変わらん」


「お前たちも決して忘れるな」


三人は力強く頷いた。


「「はい!」」


夕陽が王都を赤く染める。


四人は静かに王城をあとにした。


この日。


メタリア王国に、新たな二級冒険者が誕生した。


その名は、ウスイ・ヤスヒコ。


だが本人にとって、それはただ一枚の冒険者証が変わっただけのことだった。

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