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武術師範は異世界でも道を示す  作者: 白玉男爵
第一章 武術師範、異世界に立つ
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武術師範、異形を制す

小鬼が飛びかかってきた。


粗末な刃物を振り上げ、獲物の首を狙う。


だが――


ヤスヒコの姿は、そこにはなかった。


「遅い」


小さく呟く。


相手の動きを読む。


肩の揺れ。


足の運び。


視線。


すべてが攻撃の前兆だった。


長年、拳を交えてきたヤスヒコには、それだけで十分だった。


半歩だけ身体をずらす。


振り下ろされた刃物が空を切った。


その瞬間。


ヤスヒコの手が小鬼の腕を取る。


捻る。


流す。


そして――


地面へ叩き伏せた。


「神楽守道流、崩し」


小鬼の身体が地面へ沈む。


ヤスヒコは追撃しない。


倒れた相手を見下ろし、静かに息を吐く。


「もうやめておけ」


言葉が通じるとは思っていない。


だが、武人として告げずにはいられなかった。


しかし。


小鬼は笑った。


折れた腕を無理やり動かし、残った手で刃物を握る。


「……そういうことか」


ヤスヒコの目が細くなる。


相手は止まらない。


こちらを殺すまで動くつもりだ。


「ならば……」


ヤスヒコは構え直す。


神楽守道流は守るための拳。


だが、命を奪う覚悟もまた、武を扱う者の責任。


襲い来る小鬼へ、一歩踏み込む。


拳は最小限。


力は一点。


身体の中心へ打ち込む。


鈍い音。


小鬼の身体が吹き飛ぶ。


壁へ叩きつけられ、そのまま動かなくなった。


「……」


静寂が戻る。


ヤスヒコは拳を見る。


老人の手ではなかった。


だが、人を傷つける感覚だけは変わらない。


「命を奪う拳か……」


小さく呟く。


できれば使いたくなかった。


しかし、この世界では。


己の知らない敵と向き合わなければならないらしい。


ヤスヒコは小鬼から視線を外した。


そして洞窟の奥へ進む。


出口を探すために。


どれほど歩いただろうか。


暗闇の先に、微かな光が見えた。


「……外か」


自然と足が速くなる。


光へ向かって歩く。


そして――


ヤスヒコは立ち止まった。


目の前に広がっていたのは、見たことのない景色だった。


巨大な木々。


青く澄んだ空。


遠くにそびえる山々。


そして。


空を飛ぶ、巨大な影。


「……」


言葉が出なかった。


夢ではない。


幻でもない。


確かに、この世界に存在している。


ヤスヒコは静かに息を吐く。


「……どうやら」


拳を握る。


「俺は、とんでもない場所に来てしまったらしいな」


その男はまだ知らない。


この世界には剣があり。


魔法があり。


人の理解を超えた存在がいることを。


そして。


己の神楽守道流が、この世界で新たな形へ進化していくことを。


臼井ヤスヒコの第二の人生は、ここから始まる。

完結できるよう頑張ります。

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