表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武術師範は異世界でも道を示す  作者: 白玉男爵
第一章 武術師範、異世界に立つ
PR
11/54

EX2「あの人って、何者なんだ?」

昇級試験の翌日。


エンターサンド冒険者ギルド。


朝から多くの冒険者で賑わう館内では、一つの話題で持ちきりだった。


「昨日の昇級試験、見たか?」


「ああ」


「素手で八級になった新人だろ」


「フォレストウルフを退けたって噂も本当だったらしいぞ」


「しかも今日も薬草採取だってよ」


「八級なのにか?」


「討伐依頼じゃないのか」


「変わった奴だよな」


その会話を、依頼掲示板の前でビルたち三人が聞いていた。


ビルが首をかしげる。


「八級になったのに薬草採取かぁ」


「俺なら討伐依頼を受けるけどな」


シャーロットも腕を組む。


「ほんと変」


「せっかく強いのにもったいない」


カミリーだけは黙っていた。


少し考えるように掲示板を見つめている。


その時だった。


「おはようございます」


受付からエミリアの声が聞こえた。


三人は揃って受付へ向かう。


「エミリアさん、おはようございます」


ビルが元気よく頭を下げる。


「おはようございます、皆さん」


エミリアは柔らかく微笑んだ。


依頼書を受け取りながら、ビルが思い切って尋ねる。


「あの……」


「ヤスヒコさんって、いつも薬草とか見回りばっかり受けてるんですか?」


エミリアは少し驚いたように目を丸くした。


「ええ」


「ほとんど毎日ですよ」


シャーロットが思わず口を挟む。


「なんで?」


「もっと強い魔物を倒した方がお金も稼げるじゃん」


エミリアは少し考えてから答えた。


「ヤスヒコさんは、依頼に大きいも小さいもない、と考えているみたいです」


「頼まれたことは、最後まできちんとやり遂げる」


「それだけなんです」


ビルは驚いた顔になる。


「それだけ……?」


エミリアは頷いた。


「薬草も、次に育つように採取されています」


「納品もいつも丁寧ですし、報告が遅れたこともありません」


「それに……」


少しだけ苦笑する。


「依頼の帰り道で困っている方を見つけると、放っておけないみたいなんです」


「荷物運びを手伝ったり」


「道に迷った子どもを送り届けたり」


「壊れた柵を直したり……」


「だから予定より帰りが少しだけ遅くなる日もあります」


三人は顔を見合わせた。


ビルが小さく呟く。


「依頼じゃないのに?」


「はい」


エミリアは微笑んだ。


「きっと、ヤスヒコさんにとっては同じなんでしょうね」


「困っている人を助けることも、依頼をこなすことも」


その言葉を聞き、カミリーは静かに口を開く。


「……強い人だから優しいんじゃない」


二人が振り向く。


カミリーはゆっくり続けた。


「優しい人だから、あんなに強くなれたのかもしれない」


しばらく誰も言葉を発しなかった。


シャーロットが腕を組みながら、小さく笑う。


「でもさ、本人はそんなこと考えてなさそう」


エミリアも思わず笑みをこぼした。


「ふふっ」


「それは私もそう思います」


四人の間に穏やかな笑いが広がる。


ビルは腕を組み、真剣な顔になった。


「なあ」


「俺たち、ちゃんとお礼しよう」


カミリーが頷く。


「ああ」


「助けてもらったままじゃ終われない」


シャーロットも笑った。


「じゃあ、ご飯でも誘おっか」


「それならあの人も断らなさそう」


ビルが勢いよく頷く。


「決まり!」


三人は顔を見合わせて笑った。


その笑顔を見ながら、エミリアも静かに微笑む。


――きっと、喜んでくださいますよ。


そんな予感がしていた。


その翌日。


三人はギルドの前で、ヤスヒコの帰りを待つことになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ