冒険者への道
少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです。
あれから一週間。
マリの傷は癒え、ようやく動けるようになったが、俺たちの飢えは限界に達していた。
「……お兄ちゃん、お腹すいたね」
掠れた声でマリが呟く。
あのゴミ溜めに行けば、何らかの食い物にはありつけるかもしれない。だが、一度顔を覚えられたチンピラや、俺を追う騎士団の目があるかもしれない。リスクが高すぎる。
俺は思考を回す。食い詰めたスラムの住人が、合法的に金を稼ぐ唯一の手段。
冒険者。
かつて騎士団が軍事演習で利用した、あのギルドのことだ。
だが、確か年齢制限があったはずだ。……十歳。俺は、今の自分の年齢を把握していない。
「なぁマリ……お前、いくつになった?」
不意に問うと、マリは少し不思議そうに、だが無邪気に笑った。
「私は9歳だよ?」
栄養状態のせいか、年齢よりも小さく見える。「……7歳かと思ったぞ。」
しまった、と思っても遅い。マリの顔をじっと見つめる。
「お兄ちゃんより2コ下だから、9歳だもん……!」
……そうか、9歳か。
馬鹿で助かった。いや、この無邪気さが、今の俺を救っているのかもしれない。
ならば俺は11歳。冒険者登録の条件はクリアしている。
俺は立ち上がった。この腐った泥沼を這い上がるための、最初の一歩を踏み出すために。
「マリ。俺は冒険者になる。お前はお留守番だ。……できるな?」
「嫌だー! 私も行くーー!」
食い気味に返された。……お前、見た目も実年齢的にも、冒険者登録なんて無理だろう。
「入れなくてもいい! 私も一緒に着いていく!」
俺は暫く考えた。
……確かに、この荒れたスラムにコイツを一人で残しておくのは不安だ。だが、決してマリを心配しているわけではない。
コイツは俺の『駒』だ。マリがいなくなれば、俺の生活基盤も、精神的な支え……いや、単に俺に都合の良い『駒』が失われるだけだ。不利になる。
(……そうだ。コイツも一緒に連れて行き、俺の手駒として徹底的に鍛え上げればいい)
俺は小さく息を吐き、マリを見下ろした。
「……勝手にしろ。ただし、俺の足手まといになるようなら即座に切り捨てるぞ」
「やったーー!」
マリは俺に飛びついた。
……チッ、鬱陶しい奴だ。
――冒険者ギルド前
重厚な木の扉の前に立つ。中からは怒号と安酒の臭いが漏れ出していた。
「いくぞ、マリ」
「うん、お兄ちゃん」
俺たちは、ギルドの扉を開けた。
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