魂の帰還、そして地獄の器
ご拝読ありがとうございます。
本作品は、最愛の裏切りから始まる、ドロドロとした愛憎と復讐の物語です。
※一部、精神的に辛い描写(NTR・残虐描写等)が含まれます。
復讐の果てに何が待っているのか――主人公の行く末を、最後まで見届けていただければ幸いです。
「……ここは?」
真っ白な空間。上下も左右もわからない、静寂に満ちた場所。
首を断たれる直前の冷たさも、舌を噛みちぎられた痛みもない。
「ここは生と死の狭間……魂の休憩所です」
どこからともなく響く声に振り返ると、そこにいたのは、生まれてから一度も見たことがないほどの美しさを纏った女性だった。
「……女神さま……?」
「その通りです」
女神は悲しげな微笑みを浮かべ、俺を見つめる。
「貴方は、理不尽にも愛する妻に拷問を受け、目の前で妻の情事を見せられ、首を刎ねられましたね」
「……知っている。全て覚えている」
その言葉だけで、俺の魂の底から、どす黒く、しかし真紅に染まったオーラが噴き出した。
怒りと憎悪が、空間を軋ませる。女神でさえ、その殺意の純度に後ずさるほどだ。
「今は怒りを収めてください! 私でも、その殺意をまともに受ければダメージを受けてしまいます!」
女神の叫びも、今の俺には遠い。
俺の魂には、善人には決して宿らぬ禁忌のスキルが刻まれていた。
――『悪魔の憤怒』。
このスキルは、俺の殺意を力に変え、効率的な復讐のための叡智を与える。
しかし、その代償は重い。常に俺の心を殺戮の衝動で満たし、理性よりも破壊を優先させようとする。
「……転生させろ。リリアナを、あの王国を根底から腐らせてやる」
女神は悲しげに頷き、光を放つ掌を俺にかざした。
視界が急激に暗転する。
次に目覚めた時、俺は泥と汚水にまみれた、死にかけの浮浪児の身体の中にいた。
「……ッ!」
喉にこみ上げる血の味。
意識が戻った瞬間、魂に刻まれた『悪魔の憤怒』が暴れ出した。
周囲の人間すべてを焼き払いたいという衝動が、脳髄を駆け巡る。このままスキルを全開にすれば、王都を壊滅させることなど造作もないだろう。
しかし。
(……いや。ここで出してはならない)
俺は血を吐きながら、必死に自分の胸を抑え込んだ。
ここで力を解放して何になる。この身体で魔族を討てるか? 敵の懐に潜り込んで、あの女の目を覆う絶望を拝めるか?
(こんなところで、俺の復讐を終わらせるわけにはいかない)
俺は、前世の文官としての冷徹な思考で、内なる悪魔の衝動を無理やりねじ伏せる。
少年の身体が、激しい拒絶反応で痙攣する。だが、俺はそれを制御し続けた。
今の俺は、ただの死にかけの子供ではない。
復讐のために生き、復讐のために悪魔すら飼い慣らす――冷徹な復讐鬼だ。
遠くで王城の鐘が鳴っている。
……待っていろ、リリアナ。
俺は、一番残酷な方法で、貴様を壊しに行ってやる。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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