無念の継承と来訪者
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機巧人形の残骸が転がる書庫の床には、幾多もの戦士たちの骸が転がっていた。
俺は、一人の戦士の傍らに膝をつき、その骸が握りしめていた剣の柄に手をかけた。冷たい。だが、鉄の奥には、彼が最後に抱いた「生きたい」という熱量が微かに残っている気がした。
「……ツワモノ共の夢の後、だな」
俺はその剣を、静かに引き抜いた。引き抜いた瞬間、カサリと骨が崩れる。俺は剣を掲げ、残響のない空間に向けて小さく誓った。
「お前たちがここに倒れた理由は、俺がゼノスとリリアナを討つことで証明してやる。……その無念、俺が全て引き受けていく」
ふと、背後の気配に気づく。マリだ。
彼女は俺の背中を、まるで獲物を観察するような、それでいて限りなく慈しむような、矛盾した瞳で見つめていた。
「……お兄ちゃんは、本当に変なところがあるね。死んだ人たちの重荷なんて、引き受けなくてもいいのに」
マリはふわりと笑う。だが、その笑みには微かな、けれど明確な『嫉妬』の色が混じっていた。
「……ああ。だが、必要なことだ」
「ふふ、そう。お兄ちゃんが背負うなら、私もそれ、お兄ちゃんと一緒に背負ってあげる」
マリの言葉は、まるで「お兄ちゃんを縛る鎖を、私が管理する」という宣言のようだった。
俺は剣を腰に差し直す。この剣はもう、ただの鉄屑じゃない。復讐を完遂するための、共犯者の魂だ。
遺跡の外は、既に夕闇が支配し始めている。門をくぐり、冷たい外気に触れたその時だった。
――拍手が、聞こえた。
夜の闇に溶け込んでいたはずの男が、ゆっくりと影から姿を現す。
冒険者ギルドのマスター、ガロンだ。
「何故あんたが……? そうか、これは初めから仕組まれていたのか……」
「いやはや、見事だ。死者の言葉を借りて、自らの背を正すか」
ガロンは夕陽に照らされた俺たちが拾った剣を指差し、値踏みするように目を細めた。その瞳には、単なるギルドマスターの知性ではなく、もっと……『神や悪魔の盤上を覗き見るような』底冷えする光が宿っている。
「その剣、ただの鉄屑にするには惜しいな。だが、お前たちのその『覚悟』……面白い。随分と、重い荷物を背負い込んだものだ」
ガロンの視線が、俺からふと、隣に立つマリへと移る。
その瞬間、ガロンの表情が、狩人が猛獣の気配を察したかのように強張った。
奴は気づいたのか? 俺たちの――いや、マリの底にある『本性』に。
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