表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/13

異物の証明

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

それでは12話です。

 洞窟を出た俺たちの顔には、達成感などという甘っちょろい感情は皆無だった。

 マリは洞窟内でのトドメを引きずっているのか、唇を噛み締めたまま一言も発さない。だが、その瞳から迷いは消えていた。それが俺の「投資」に対する、一番の配当だ。

 ギルドの扉を開けると、安酒の臭いと無遠慮な視線が突き刺さる。中央のテーブルでは、ガロンが鼻で笑いながら待ち構えていた。

「おいおい、戻ってきたのか? 生きて帰るなんて珍しいこともあるもんだな」

 ガロンの言葉に、周囲の冒険者たちから驚きの言葉が、漏れる。

「おいギルマス、そいつら死体すら残らねぇと思ってたぜ」

「ガキ二人でゴブリンの群れなんて、自殺志願者かよ」

 驚愕の波が広がる中、ガロンの視線がマリに突き刺さる。獲物を狙う野獣の眼差しだ。

 俺は表情一つ変えず、カウンターへと歩み寄った。

 受付嬢が怯えたように俺たちを見つめる。その震える手元を無視し、俺は背嚢から指揮役の首を放り投げた。

 ゴトリ、とカウンターに乾いた音が響く。

「……ひっ!?」

 受付嬢が短く悲鳴を上げ、椅子ごと後退った。カウンターに転がったのは、紛れもないゴブリン・リーダーの首。それも、断面が抉り取られたような、執拗な殺意を感じさせる斬り口だ。

「依頼達成だ。……それと、これはボーナスとして受け取ってくれ」

 俺はマリを前に突き出した。

「今回のゴブリンの最後の一撃は、こいつが決めた。俺が手を下す必要はなかったからな」

 ギルド内から笑い声が消えた。

 ガロンの表情から余裕が剥がれ落ち、周囲の冒険者たちがごくりと唾を呑む音が聞こえる。

「……ガキに殺させたのか? あの指揮役を?」

「ああ。俺の『相棒』として相応しいか試したんだ」

 俺はガロンの首元に、そっと指先を添えた。

 ただの指先。だが、ガロンの体は石像のように硬直した。

「ガロン。お前は俺たちを『子供』だと侮っていたな。だが、見ての通りだ。俺たちの手には、すでに人間を殺すためのタコができている。お前が俺たちをどう評価しようと勝手だが――次に無駄な干渉をしてくるなら、お前もこのゴブリンと同じ『処理対象』になる」

 静寂。ギルドの空気が物理的な重圧を伴って凍りつく。

「……て、手伝いが必要なら、いつでも言ってくださいね……」

 受付嬢の震える声だけが、虚しく響いた。

 ガロンは俺の冷徹な眼差しに気圧され、喉を鳴らして一歩後退った。俺はそんな奴には目もくれず、背を向ける。

「行くぞ、マリ。……次の仕事を探す」

 俺たちはギルドの喧騒を後にした。

 夕闇の町を歩きながら、ふと空を見上げる。

 あいつ――最愛の嫁に首を刎ねられたあの日、俺は確かに死んだ。 だが、今の俺は、あの日以上の「化け物」に成り果てている。

 これでいい。

 感情を殺し、利益を計算し、不要な人間を排除し続ける。

 いつか、あいつを再び見つけ出した時、俺は人間としてではなく、もっと合理的な「死神」として再会できるはずだ。

 隣を歩くマリの歩調が、俺と完全に同期している。

 俺たちの冒険は、まだ始まったばかりだ。


ここまで読んでいただき、本当にありがと

うございます!


少しでも「続きが気になる」「面白い」と感じていただけましたら、

ブックマークや評価(★)で応援していただけるとめちゃくちゃ励みになります!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ