獣王Ⅲ
土煙から現れた魔物に戦闘体勢をとる。
ヘンリーもそれに合わせてクロスボウを構えた。
「二人か…」
品定めするような魔物の視線が身体をなぞる。
「お前達は下がっていろ」
魔物はうしろで憤るゴブリン達を待機させた。
「余興として楽しませてもらおう」
魔物はゆっくりとこちらに歩み寄ってくる。
撤退は難しい。
ならば攻めるだけだ。
「おおおおお!!!」
魔物の頭目掛けて勢いよく斬りつけた。
隙を突いた斬撃が魔物の頭をかち割る。
そのはずだった。
剣は片手で止められた。
刀身は魔物を傷つけることなく強靭な指で挟まれている。
「悪くない太刀筋だ」
力を入れているというのに全く剣は動かない。
「人間にしては強い方だな?しかし魔族はそれ以上に強いのだよ」
魔物に剣を掴まれ攻撃できずにいると背後から矢が飛んできた。
矢は顔の横を通り過ぎて魔物へ向かった。
「後衛もなかなかの腕のようだな」
飛んできた矢をもう片方の手で掴み魔物は感心した。
続けて3本連続で矢は飛んできたがどれも片手で払われた。
「ふむ…これだけ射ってこの者に当てずに済むとは見事な射撃だ」
魔物は剣を掴んでいた手を放してその手でこちらを平手打ちした。
平手打ちは見た目以上の威力を持ち、それを受けた身体が壁まで飛ばされた。
「悔しいか?だがこれは仕方のないことだ……貴様ら人間とはそもそもの作りが違うのだよ!」
魔物は愉快そうに笑い、見下してきた。
しかし、その笑みは一瞬で怒りに変わった。
「だというのに何故魔族が人間に排斥される!?この世界を統べるのは強き者であるべきだ!!」
魔物の言葉は既にこちらには向いていない。
どうやらうしろに控えるゴブリン達の士気を高めるためのものとしてまんまと利用されたようだ。
「これまでの魔族は団結が足りなかった!だが、これからは互いに手を取り世界の支配権を持つべき我らの手に取り戻すのだ!」
その言葉にまたゴブリン達が沸き立ち歓声があがった。
ドゴオオオ!!
その瞬間待機していたゴブリン達の上の天井が崩落した。
これはたまたまの事故ではない。
人為的なものだ―――




