虎狩り
アルベルトの話では中位の魔物が単独で行動していたということだ。
斥候と見て間違いない。
森のゴブリン達と関係があるかはわからないがどちらにせよ潰す必要がある。
町の警備はいつもより強化した。
マルロ卿の屋敷にも副官を向かわせた。
指揮を執るのは奴の方が得意なのだ。
共にコロニーの調査に向かうのは熟練の兵士二人。
ヘンリーはフリーベルで並ぶ者のないクロスボウの名手だ。
性格も冷静沈着、内部がどのようになっていても彼なら取り乱すことはないだろう。
ジョンは長年私と共に戦ってきた戦友だ。
小柄な身体での俊敏な動きで私をサポートしてくれる。
ひねくれた性格で人望のない男だが、言動とは裏腹に隊をよく見て危なければ裏でフォローしている。
平原を歩いていると確かにアルベルトとエリナの言っていた場所に大きな穴があった。
「ここが土竜のコロニーらしい。何が出てくるか分からん。気を引き締めて行くぞ!」
「了解」「へっ、いつも通りにやるだけだ」
土竜の通路は狭く一列になるしかない。
盾を持った自分が先頭を行くべきだ。
次に援護ができるヘンリー。
ジョンの出番はまだ無さそうだ。
ヘンリーにランタンを持たせ盾を構えて通路を進みだした。
「こうして暗い所を進んでると昔を思い出さねえか?」
「ジョン、今は任務中だ。警戒を怠るな。」
「相変わらずホフマンは固えなぁ」
「昔話ぐらい帰ってからいくらでもできるだろ」
ジョンも相変わらずマイペースなやつだ。
とはいえ、これが彼のやり方だ。
呑気なことを言いつつも警戒はしっかりやっている。
「ほら、入軍試験の時もこんなだっただろ?たしかあの時挑んだのは土竜なんかよりもっと凶悪なやつだったと思うけどよ。まあ、たいして変わんねえか!」
「いつまでも喋っているなよ」
入軍試験で挑んだのは魔虎の巣穴だ。
三人で挑むはずが一人が途中で怖じ気づいてジョンと二人になってしまった。
その時もジョンはこんな調子で「大丈夫だろ」と言っていた。
――25年前――
「大丈夫だろ」
「何が大丈夫なものか?相手は魔虎だぞ?三人でも難しいというのに……」
このジョンと言う男は馬鹿なのではないか?
組まされたのが臆病者と馬鹿者だなんて最悪だ。
「ほら、行くぞ」
「お、おい待て」
あんな小柄な身体で何ができるというのか?
とはいえ山道を進んでいくジョンを放っておくわけにもいかない。
何とかして死ぬ前に撤退させよう。
「本気で勝てると思ってるのか?毎年この試験では死者も出ている。一人いないこの状態では勝てないどころかどっちも死ぬぞ!」
「大丈夫だってーの。俺はけっこう強えぞー」
こんな奴が強いものか。
説得を聞かないようなら一人でも逃げるしかない。
そう考えた瞬間頭上から剣戟が降ってきた。
「やっぱりあんたも強えじゃねえか」
咄嗟に構えた盾でジョンの剣を防ぐことができたが、この速さは普通ではない。
「仲間に斬りかかるとは何のつもりだ?」
「お前、俺が強えっていうの信じてなかっただろ?それにお前なら防げると思ってたしな」
何を適当なことを抜かすのか。
結果的に防げはしたが仲間を攻撃するということが問題なのだ。
「あの攻撃ができる俺と、それを防げるお前なら魔虎に勝てると思わねえか?」
「何?」
確かに勝てる可能性は見える。
しかし、やはりこのぐらいではまだ危険だ。
「さっさとしねーと置いてくぞ」
「あ、おい、まだ勝てるとは言っていないぞ!」
無茶苦茶な奴ではあるが、あの男、ジョンはここで失うにはもったいない男だ―――




