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嫌疑Ⅱ

 「遅い…」

いくらなんでも遅すぎる。

アルベルトと分かれてからもう数時間経ちもう外は真っ暗だ。

報せた帰りにどこかに寄っているにしてももう戻って来ていい頃だ。

何かに巻き込まれたのかもしれない。

「どうしたんだい?落ち着かないみたいだねぇ…」

お婆ちゃんが心配してロビーに出てきてくれた。

「うん…アルベルトさんが戻って来なくて……何かあったのかな?」

もし報告ができていなければまずいことになる。

「ちょっと出てくるね!すぐ戻るから!」

玄関に置いてあるランタンを手に取り〈風精館〉を飛び出した。


 夜のフリーベルは灯りのついたいくつかの酒場も客が帰り始め町全体が眠りに就いている。

町の中央のマルロ卿の屋敷は2mぐらいの門で閉ざされ灯りも消えていた。

マルロ卿には悪いがここにアルベルトが来たか確認しなければならない。

緊急の用なのだ、門を飛び越えるのも許してくれるだろう。

素早い身のこなしで屋敷の庭に着地し玄関の扉

のドアノッカーを叩いた。

静かな町にゴンゴンというドアノッカーの音だけが響き暫くしてから扉の中から声が聞こえてきた。

「どちら様かな?門は閉めていたはずなのだが…」

「エリナです!急ぎの用だったので飛び越えて来ました!」

それを聞いた声の主、マルロ卿は扉を開けた。

マルロ卿は少し高そうな白い寝間着で蝋燭を持っていた。


 「エリナちゃん……門を飛び越えたのも驚きだけど、急ぎの用とは何かな?」

言われてみると普通の女の子があの門を飛び越えるというのは少々無理があったかもしれない。

だがマルロ卿も寝起きであまり気にしている様子もなく、何より今はアルベルトの方が気がかりだ。

「あの、今日アルベルトさんここに来ませんでしたか?昨日私と一緒にいたすごい顔の人です!」

「今日は来てないな……忘れるような人ではないし、間違いないと思うよ。何かあったのかい?」

ここに来てないということは報告ができていないということだ。

アルベルトはどこに行ってしまったのか?

「アルベルトさんうちの宿に泊まってるんですけど、まだ戻ってなくて……」

「そうか…心配ではあるが今日は遅いし探すのはまた明日にしたらどうかな?その頃には戻ってるかもしれないし」

「ありがとうございます。もう少し探してから戻ります。」

「そうかでは何もないとは思うけど気を付けて。くれぐれも町からは出ないようにね。」


 マルロ卿の言葉を背にまた門を飛び越え町を探して回った。

どこの店にもアルベルトの姿はなく次第に全ての店から灯りが消えていった。

「君、何をしている?」

後ろから声をかけてきたのは巡回中の兵士だった。

「人を探してて」

まじまじと見てくる兵士はハッとして

「これは失礼、エリナさんでしたか。しかし、フリーベルは安全な町ではありますがこんな時間の外出はあまりおすすめできません。その人探しも明日にしてはどうでしょう?」

「急ぎなんです!アルベルトさんっていう特徴的な顔の人なんですけど知りませんか?」

それを聞いて兵士は考え始めた。

「特徴的な顔…もしかしたら……エリナさん、ちょっと来ていただいてよろしいでしょうか?その男に会わせられるかもしれません。」

突然の兵士の言葉に困惑したが可能性があるなら行くしかない。

エリナは兵士に連れられ詰所に向かった―――



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