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危機の予感Ⅲ

 光の射し込む方向へ進んで行くとその出口は入って来た時のものよりも角度が緩やかなものだった。

とはいえよじ登るのは難しいだろう。

「アルベルトさん、あのナイフ持ってますか?」

出口を呆然と眺めているところにエリナが聞いてきた。

「持ってますけど?」

猟師に貰ったボロいナイフはなんとなくで腰には着けていたが、こんなときにナイフなどどうするというのか。

引き返して二刀流であの魔物に挑むのか?

「じゃあ貸してください!」

よく分からないままエリナにナイフを渡すとエリナはそれを壁に突き立てた。

そして自分のナイフを更に高い位置に突き立て、ナイフを登山用のピッケルのように使い穴を登り始めたのだ。

「ちょっと待っててくださいね。予備のロープがありますから上に着いたら用意します!」

エリナのバイタリティには驚かされっぱなしだ。


 難なく登りきったエリナの姿が消えて直ぐにロープが垂れてきた。

「いいですよー!登ってください!」

ロープに掴まりながら穴を登るが足元の土が崩れてなかなか難しい。

これをナイフで登るとはたいしたものだ。

時々ずり落ちながらロープをつたって登っていくと少しずつ外が見えてきた。

土まみれで外に出るとそこはどこかの森のようだ。


 先に登ったエリナはロープを繋いだ木の前で腕を組んで考え事をしている。

「うーん、入ったとこがあそこで…コロニーがあそこで…ここは……」

悩んでいるエリナを他所に周りを見渡してみると見覚えのある穴の開いた倒木があった。

「あ!エリナさんここはフリーベルの西にある森みたいです!」

「え?そうなんですか?」

「はい!この倒木は俺がクシル村からフリーベルに行くときに休憩した場所です!」

そう、あの時角兎が刺さった倒木だ。

ここがあの場所だとするとフリーベルもそう遠くはない。


 「シッ!」

突然エリナが小声で制止してきた。

耳を澄ませると草が擦れるカサカサという音に混じって何か奇妙な声のようなものも聞こえてくる。

段々とその奇妙な声はこちらに近づいていた。

「アルベルトさん、そこの茂みの奥に隠れましょう」

エリナに言われるまま隠れると少ししてから醜い姿の人型の魔物達が姿を現した。

「な、アルベルトさ…て、ここにいるか……」

確かに鏡に映る自分の姿に似た魔物達ではあるが間違いなく他人だ。

魔物と間違われることはたまにあるので馴れたが、魔物を自分と間違われるのは少し腹が立った。

「あれはゴブリンですね。ホブゴブリンもいます。あの大きいのがそうです。」

魔物は子供ぐらいの大きさのものが4匹にそれを率いる大人ぐらいの大きさのものが1匹という編成だ。

全員棍棒を装備している。


 ゴブリン達は倒木に腰かけて話し始めた。

「キョテンイドウノ、ジュンビハ、モンダイナイカ?

ホブゴブリンの問い掛けにゴブリン達はあたふたして一番小さい個体が前に押し出された。

「ア、アスニハ、カンリョウシマス」

押し出されたゴブリンは足をガタガタと震わせていた。

その答にホブゴブリンの方は眉間に皺を寄せていた。

「アスニハ、シュウゲキノ、ヨテイダロ!キョウジュウニ、オワラセロ!」

「シ、シカシ…」

反論をしようとしたゴブリンはその瞬間ホブゴブリンの棍棒で吹き飛ばされた。

「モンクヲイッテイルナ。ジュンカイハ、コレデオワリダ。サッサト、ジュンビヲススメロ!」

ホブゴブリンに促されてゴブリン達はそそくさと来た方向へ戻って行き、ホブゴブリンもそれに続いた。


 「あいつらの言う襲撃…もしかしたらあの蝙蝠の魔物の言ってた計画と関係があるかもしれません。道は分かるんですよね?フリーベルに知らせないと!」

確かにこれはただ事では無さそうだ。

フリーベルはここからそう遠くない。

急いで戻ろう―――



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