秘密の共闘者Ⅴ
〈自由の鐘亭〉で舌鼓を打った二人は帰路に着いていた。
「いや~美味しかったですね~。でもアルベルトさんいくらなんでも感動し過ぎでしたよ……クフフ」
エリナにはさっきからずっと笑われてしまっている。
確かに冷静になるとなんだか恥ずかしかった。
早く話題を変えたい。
「あー、明日も魔物退治には行くんですか?」
我ながらとても自然に話題を変えられる素晴らしい質問ができた。
「突然話題変えてきましたね。明日も行きますよ。今日は収穫ゼロでしたしねー。」
あまり自然ではなかった上に獲物の件を蒸し返してしまった。
「冗談ですよ!冗談!私が勝手に逃げたんだって言ったじゃないですか。そんな顔しないでください。」
蒸し返した上に気まで使わせてしまった。
この空気を変えなければ。
「えーとじゃあ一緒に行ってもいいですか?この辺のこと詳しくないんで良ければなんですけど……」
「本当ですか!?嬉しいです!!私親に秘密でやってるせいでいつも一人だったんですよ!!アルベルトさんにはもうばれてるんで気にせず組めますしこちらこそ是非お願いします!!」
「エリナさんは強いですしこちらとしても心強いです」
「またまた~アルベルトさんも強そうな顔してるじゃないですか~」
何か変な期待をされているようで困ったものだ。
明日が不安になってきた。
魔物を見たせ自然と逃げてしまいそうだし、そんなことになったら恥ずかしい。
やっぱり一緒に行くのはやめた方がいいだろうか?
「明日が楽しみですね!アルベルトさん!」
だめだ……そんなに嬉しそうにされてはやっぱりやめたなんて言えない。
仕方ない覚悟を決めよう。
「それにしてもよく今までバレずに続けてこれましたね?」
「隠れて続けるのも大変ですよ~。本格的な装備品とかも使うわけにはいきませんし、兵士は勿論同業者にも見つからないように気を付けてますから。」
なるほど。
エリナがナイフを使ってるのは得意だからというわけではなくバレないようにだったようだ。
「というか、同業者にもバレちゃダメなんですか?別にそのぐらいはよさそうですけど。」
「ダメです!絶対ダメですよ!お父さんの伝がめちゃくちゃ広いんでどこからバレるか分からないんです!」
エリナの父親はいったい何者なのだろうか?
「お婆さんにはバレてないんですか?」
「バレてますよ」
あまりにもあっけらかんと答えられてこちらが驚いてしまった。
「お婆ちゃんは反対してないですし、むしろ両親が束縛しすぎだって言ってます。可愛い娘には旅をさせろ?的なやつですかね?」
あのお婆さんはけっこう懐の広い人のようだ。
まあ、無愛想だから苦手だが。
「ただいまー!」
「おかえり」
〈風精館〉に帰るとお婆さんが“エリナを”にこやかに迎えてくれた。
「部屋は二階の一番手前だよ。ほれ、鍵。」
エリナとは違い無造作に鍵を渡された。
嫌われているのだろうか?
「お婆ちゃん準備ありがとう!」
「いいんだよ~エリナのためだからね~」
孫娘が可愛いのは分かるがせめてその半分ぐらいの愛想をこちらにも向けてほしい。
「それじゃあアルベルトさんまた明日!」
エリナは手を振ってカウンターの奥の部屋に入っていった。
二階の部屋に入ると四畳半ぐらいの部屋にベッドが一つと窓際に机と椅子があるだけのシンプルな内装になっていた。
どの家具もこれといった特徴はないが建物自体とは違いよく手入れされているようだ。
扱いは悪いが部屋に手抜きはないようなので明日に備えてもう休むことにしよう―――




