卒業式っぽい訳だが
俺はカウンターの上に転移して、そこから見下せる位置に指を指す。
「はいそこに正座!ルッカもノコさんもとりあえずそこに正座!!」
「…なんで動ける?おかしいぞお前」
ルッカがポカンとした顔で俺を見る。
「…ギガラスネークの毒とか言っていたな。ならばおかしいな。おかしいぞお前」
ノコさんも真顔で俺を見る。
「師匠もそう思いますか。やっぱりこいつおかしいですよね。お前おかしいぞ?」
「師匠言うな。しかしこいつは確かにおかしいな。うん、お前はおかしい」
むかむか。人に指差すんじゃねぇよ。
「俺がおかしいとかどうとか今はどうでもいいでしょ?そこに正座つってんだろ?あ?」
「「はい」」
ギュチギュチチチチチギュチチッ!!!
俺の後ろでバックリと口を開け蠢く巨大な魔法空間を目にして、ルッカとノコさんは俺が指差す先に大人しく正座した。
「…で?これって結局一体どういう話なのさ?」
まぁ何となくどういう話かは見当ついてるけど。
「そうだな…それを話すにはやはり‘あの日’あった事から話さねばいけないだろう…」
ルッカは遠い目をして語り始める。
―――そう、あの日、私と師匠はいつも通り研究の資金を稼ぐ為、近くの森へ…
「だから回想に入ろうとすんなって。食い千切るよ?」
「すまん。すまんというかごめんなさい。だから‘それ’をこっちに寄越さないでくれ、下さい」
ルッカは自分の目前に迫る‘それ’に恐々としながら、今度こそ普通に話し始めた。
それでいいんだよそれで。
「…私は昔、親に捨てられてな、そこは森の中だった。そんな途方に暮れていた私に魔物が襲い掛かってきてな。その時初めて師匠が私の前に現れたんだ。師匠は魔術師で、私に襲い掛かってきた魔物をこう…魔術でな?やっつけてな?私は凄いと思ってな?師匠に弟子にしてくれって頼み込んだんだ。師匠も最初は渋っていたけど最後には私を弟子にしてくれてな?私はうれしくてな?でもな?私は魔法使いだったみたいでな?ある日魔法を使ってしまってな?師匠は才能コンプでな?だから魔法使いが嫌いでな?だから私を嫌いになってな?だから私を捨てたんだっ」
涙ぐむな鬱陶しい。
というかルッカの今までのクールキャラは単にノコさんを意識してただけみたいだな。
素のルッカは歳相応な女の子とみたね。
「だ、誰が才能コンプか!なに?私がお前の才能に嫉妬した?はっ、自惚れるなこの馬鹿者がッ!」
ノコさんは心外とばかりに叫んだ。
ルッカも負けじと叫び返す。
「いや!師匠は確かに私に嫉妬してた!嫉妬してたもん!」
「なにおう!?」
あーだこうだすんだあーだ。
途端にルッカとノコさんは互いに唾を飛ばし始めた。こいつら…。
「私が魔法使いだったからでしょ!魔法使いだったからじゃん!魔法使いはダメなんでしょ!?師匠は私の事がもう嫌いなんでしょ?大嫌いなんでしょ!?」
もはやルッカが何を言っているのか分からん。うわ、めっちゃ泣いてる。
「な、なにおう!?」
ノコさんそればっかですねあんた。しかしノコさんもルッカの様子に分かり易く狼狽してるな。
なんだかんだでノコさん、ルッカに弱いんだろうな。
というか本人はさっきから否定してるけど、ルッカを何かから庇ってた事は目に見えてるしねこの人。
やれやれ、そろそろ助け舟でも出しますか。
「ルッカさんはノコさんが大好き!はい、ルッカさん!」
「!?」
俺は大声で叫んだ。ノコさんがぎょっとして俺を見る。
「私は師匠が大好き!」
「!?」
即座に反応したルッカにも、ぎょっとするノコさん。
ルッカは続けて言う。
「私が親に捨てられて、寂しくてひもじくて、本当に寂しかった時、師匠は私に手を差し伸べてくれました!」
おっそうだな。俺は合いの手でもいれますか。
「4月から始まった、魔術活動!」
「文字の読み書きさえ満足に出来なかった私に、師匠は優しく一から全部教えてくれました!」
ルッカはまた即座に反応する。よしよし、ノコさんがあたふたオロオロし始めた。よし。
「はぁじめていった、魔物の森ッ!」
「怖い魔物さん達の姿に何度も心が折れそうになった私を、師匠は何度も励ましてくれました!」
そこでノコさんの動きが段々と大人しくなっていく。よし、よしよし。もう一押し。
「はぁじめて祝った、たぁんじょうび!」
「それまで誕生日がなかった私に、ある日師匠は沢山のお料理と、大きなケーキを用意して「今日がお前の誕生日だ」と言ってくれました!お料理もケーキも凄く美味しくて、私はとっても幸せでした!」
「しぃあわせでぇしたぁ!」
ノコさんは遂に堪えきれなくなったのか、口に手を当て、涙を流し始めた。
うんうん。分かるよその気持ち。いややっぱり分かんないけど。まぁいいや。
あー卒業式合いの手も飽きたわ。もう止めるわ。いきなり止めるわ。
もうここまでくれば流れでいけるだろう。
「………」
「………」
「………?」
「「「………」」?」
なんだよ。急にみんな黙りやがって。
すると、
「…ねぇ?合いの手は?」
ルッカが不満そうに俺を睨んだ。え?合いの手そんなに必要だった?
なんか書いてたらこんなになりました。
後悔はかなりしています。




