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しきりに喋りまくっていたノルニルが疲れたのか、僕の背中ですうすうと寝こけてしまった頃。
僕はなんだか見覚えのあるような場所に行きついた。
進んでも進んでも闇は途切れず、研究施設の名残がほんの少し残っているだけの通路で、景色なんて変わらないはずなのに。なんだか、ここに来たことがあるんじゃないかと思えてならない――。
『よう。おっ、あれ……トートじゃなくてお前、新型機械兵か』
『うーわ、ほんっっとよく似てますね。眼鏡かけたらわかんないや』
『トート博士もまた物好きなことを』
『なあ、ちょっと寄ってけよ。開発中の保存食があるんだ。味は調整中だがすげぇんだ。自信作』
『ちょうどいいからトート博士に持って行って食べてもらって。感想もよろしくー! ソックリ機械兵クン』
……そうだ。
出撃前の待機中、暇すぎてラボ内を歩き回っていた時。この通路でよく開発部門の若者たちに呼び止められ、話しかけられた記録がある。
トート博士はこの地下研究所ではかなり優秀な技術主任だったそうで、おまけにお節介焼きだったから、ラボの様々な開発ごとに引っ張られては、その都度断らずに協力していたのだ。
だから顔が広くて、それゆえにラボ内をふらふらすれば、僕が必ず捕まって、トート博士と勘違いされる。機械ながらに迷惑というものを覚えたものだ。
そうか。ここはあの時の。
ここが開発部門の区画ならば……。
僕はしきりに壁を叩いて扉を探し、明らかに音が違う場所を見つけ、そこを蹴破った。
「ライ君……なあに、うるさいよ……」
音に伴い、ノルニルが文句を言いながら欠伸をする。
片手を塞がらせているやつがなにを言うか。
「ノルニル、喜んでいいぞ。今、非常用に設置された食料庫を見つけたところだ」
「ほんとう⁉︎ なにか食べられるの……⁉︎」
「ああ、少なくとも芋虫のスープやネズミのジャーキーなんかより、ずっとましなものがな」
食べられるものがあれば、の話だけど……。
全身の発光量を少し上げて踏み込むと、驚いたことに中は随分と綺麗に残されていた。とても三百年経っているとは思えないくらいに。
スーパーマーケットのそれと同じように、天井まで伸びたラックの上まで缶詰めや瓶詰め、レトルトのパウチや真空パックされた食品がびっしりと並んで僕らを待っていた。
「すごいや……これ、ほんとうに食べていいの?」
向こうの壁まで続く相当数のラックと、そこに並べられた食料の山に目を見張るノルニル。
これが全て食べられるのならば、彼女はもうきっと食事に関しては一生困らないだろう。
しかもここは数あるうちの一つに過ぎない。探せばまだまだこんなもの、いくらでも出てくるはず。
「なんか泥棒に入った気分だね。あっ、でもこれほんとに泥棒だね。うわードキドキだあ……‼︎」
「泥棒する前に、まずやることがあるだろ」
背中で忍び笑いする彼女に言って、僕は手当たり次第に保存食を掴み、缶やら箱やらの裏面に記載された数字を探した。うわ……これは。
賞味期限、三百年前に切れてる。こっちもアウトだ。二百五十年前切れ。むしろよくここまでもつやつを作ったな……。テクナの技術は凄まじい。
「アッ‼︎ これっ‼︎」
大声をあげるノルニル、手にはアップルパイの缶詰め。
「これ百年前に切れてる‼︎ おしい‼︎」
気持ちはわからなくはないが、決しておしくはない。
「食べてみたら案外いけるかも」
「やめろ、腹壊すどころか死ぬぞ」
今にも開封してしまいそうな彼女の小さな手からそれを取り上げ、僕は元の場所に戻した。
「ちぇー、一口味見するだけだって」
「生身の体のくせに、君は思い切りがよすぎるんだ」
「ねえ、これはなに? カワイイ絵~」
なんて言ってたら、もう次に興味を示し、手を伸ばして掴んで僕の顔の横に持ってくる。
今度はなにを――。
「ゲッ」
思わず声が出る。だって彼女が握っていたのは、僕ですら飛び跳ねるとんでもない代物だったんだから。




