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「正義は勝ぁあああつ‼︎ 絶対勝ぁあああああつ‼︎ 協力プレイ最高‼︎ イエーイ‼︎ イエーイ‼︎ イエーイ‼︎ イエッ……」
「えッ⁉︎」
馬鹿みたいに万歳を繰り返していた彼女が、なんの前触れもなくガクンッと意識を失ったのは、その時だった。
「ノル、ニル……⁉︎」
頭も四肢も力なく投げ出される。ガタガタうるさい機関銃のように騒いでいたはずの彼女が、その瞬間から僕の腕の中でぴくりとも動かなくなった。
「おい、しっかりしろ」
揺さぶっても起きない。目を閉じ、顔色も悪い。呼吸はあるが外傷はない。ただ気絶しているだけにも見える。だが、本当にそれだけなのか。
強烈な日差しがじりじりと降り注ぎ、干からびた大地は巨大な生命体に掘り返され、もはや爆心地のような有様になっている。吹き荒れる砂埃が関節部にまとわりつく。水場もなければ、日陰もない。
機械の僕でさえ外気温の上昇を感知している。生身の彼女なら、なおさらだ。この場所は、今の彼女には適していないのかもしれない。
日光を避けられる場所を探そう。ここじゃない。別の場所へ――。
そう考え、『鬼殺し』を残骸から引き抜いた、その時だった。
身に覚えのある地鳴りと激しい地震が、再びその場を襲った。この尋常じゃない揺れ。あの不快な鳴き声。
まさか――。
そう考えるより早く、叫び声を重ねながら、そいつらが地底から姿を現した。
おいおい。嘘だろ。
先ほどノルニルがタナトスと呼び、僕が討伐したものと同じ、グロテスク極まりない化け物が、新たに数体も飛び出してくる。大きさにはばらつきがあり、先ほどの個体より小さい。だが、獰猛さまで劣るわけではないらしい。
奴らは僕らを見つけると、四方八方から一斉に襲いかかってきた。先ほどの奴と同じように、鞭のような尾を伸ばし、飛び立った僕らを追う。
僕の状態が万全なら、たとえ勝算が限りなく低くても、戦闘を選んだだろう。機械兵は、たとえ全壊しようとも背を向けない。最後の一機になろうとも、戦場の炎へ身を投じる。
けれど――今は例外だ。腕の中にノルニルがいる。それだけで、戦闘を続行するという選択肢は切り捨てられた。
彼女を抱えたまま戦うべきではない。先ほどまでの驚異的な速度も出ない。むしろ翼の破損によって、飛行性能は大幅に低下している。これ以上の戦闘は無意味だ。
そう判断し、僕は退避を実行すべく、残存エネルギーの大半を翼とマッハドライヴへ送り込んだ。
バランスが取りづらい。機体が安定しない。そこへ、奴らの黒い尾が伸びてくる。一本が右脚へ絡みつき、僕を地上へ引き戻そうとした。
一体だけならまだしも、複数では分が悪すぎる。『鬼殺し』を振り抜いて尾を断ち切る。だが、すぐに別の尾が翼へ、腕へと巻きついてくる。
どうする、この状況。
今の出力では、空へ逃げ切れない。かといって、ノルニルを抱えたまま陸上戦へ移ったところで、四方から囲まれて餌にされるだけだ。このまま力比べを続けても、いずれ地上へ引きずり落とされる。
砲撃では奴らの分厚い外殻を貫けない。『鬼殺し』も、先ほどの加速がなければ決定打になる保証はない。
どうする――。
なかなか次の手が定まらない。上でも下でも、どちらに転んだところで――。
けれど、選択肢は二つ。空か。陸か。
――いや…………待て。
その時、気づいた。
タナトスが大地を掘り返したことで、深く陥没した地面の奥から顔を覗かせている――黒い何か。
そんな都合のいいことがあるだろうか。だが、もし僕の予想どおりなら。あれがただ地中に埋まった巨大な岩石なら、それまでだ。
それでも、もう他に手はない。
渾身の出力で機体を捻り、締め上げる尾を『鬼殺し』で断ち切った。刀を一度体内へ収納し、空いた左腕を砲撃形態へ変形させる。
真下。地中から顔を出している黒いそれへ向けて、一発の砲撃を放った。
爆発音。炎と煙が柱となって勢いよく立ち上がる。僕は結果を確かめるより先に、その場所へ向かって降下した。
煙が風に攫われ、黒い表面が露わになる。
よし――。穴が空いている。
あれはやはり、岩石などではなかった。予想どおりだ。
空にも、陸にも逃げられないなら。だったら――地下へ行けばいい。
タナトスたちには狭すぎる。けれど、僕らなら難なく通れる大きさの穴へ向かって、マッハドライヴにブーストをかけた。
あと少し。もう少しだ。
穴まで残り数百メートルに差しかかった、その時だった。
真上から、重く容赦のない鞭の一撃が振り下ろされる。地下への侵入に備えて速度を落とした、その瞬間を狙われた。
右翼へ直撃。激しい金属音とともに、右翼が半壊する。
そんな――ここで。
姿勢を立て直そうにも間に合わない。すでに破損している左翼だけでは、もう機体を浮上させられない。
その瞬間から、僕らは飛んでなどいなかった。ただ、地中へ向かって猛スピードで落下しているだけだった。
深さがどれほどあるのか。この先がどこへ続いているのか。そんなことを解析する余裕もない。
僕はせめて、と両腕でノルニルの頭部と体を包み込んだ。この先に待ち受ける衝撃から、彼女だけでも守れるように。
そして――。
僕らは闇の中へと突入した。




