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アストライト・ジャーニー ~終星の魔女と機械兵~  作者: 天野 肇
第3章 終焉をもたらす黒き死神

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4

「……ふう、危なかった」


 心底安心したように息を吐いたのはノルニルだった。


 まさか、これは。このあり得ぬ状況を一瞬にして作り出したのは――いや、僕でないとすれば、もうそうとしか思えない。


「これも、君の魔法なのか」

 問えば、彼女はぎくりとして視線を逸らした。


「んっ……まー、それは置いといてさ」

「置いておけない。説明してくれ」

「いや……これほんと、あんまり長くはしてられないからさ。ライ君……まだ飛べそう?」

「それなんだが。さっき少し破損したみたいだ。バランスが非常に取りにくい」

「まじ――⁉︎」

「飛べるには飛べる。でも速さが充分に出せない。飛び上がったところで、はたき落とされる可能性が高い」

「そんな……」

「空中がだめなら、地上で迎え撃つしかない」

「ま、待ってよ、戦うっていうの⁉︎ こいつに勝てるの⁉︎」

「勝てる見込みは……46%といったところだ。でも、手がないわけじゃない」


 ノルニルはごくっと喉を鳴らす。


「君にも、まだ出せる手札があるんだろ」

「ま、まあ……あるには、あるけども……んむむう」

「その力があれば、勝率を今以上に押し上げられるか」

「うん……できる、と思う」


 自信なさげに頷く。だが、迷っている暇もない。彼女が先ほど言ったように、この状態は長く維持できないらしい。うっすらと額に汗を滲ませる彼女に、僕は短く告げた。


「じゃあ、それで頼む」


 同時に、モノクロだった視界がパッと色を取り戻した。

 風が吹く。雲が流れる。砂埃が舞い上がる。

 止まっていたなにもかもが、一斉に動き出した――。


「やばい、解けちゃった――ライ君‼︎」


 洞穴のような口腔が僕らを噛み砕くより先に、僕は飛び上がってその一撃をかわした。

 それにしても……。


「邪魔すぎる」

「うるさいな‼︎」


 片手が塞がっている状態は辛い。それでも、ここはなんとか凌ぐしかない。

 顎を上げ、僕は左手を口の中へ躊躇《ちゅうちょ》なく突っ込んだ。


「なにそれ! セルフリバース⁉︎」

 んなわけがないだろうが……!


 斜め下から飛んできた下品なツッコミに、ちょっとイラッとする。

 喉の奥まで指を送り、そこで掴んだものを一気に引き抜いた。


「うっ……ライ君……」


 ああ、見ての通りだ。

 僕たちクロガネシリーズには、それぞれ異なる特殊武装が与えられている。

 そして、僕に搭載されたのが――体内に収められた、この一振りの刀。

 鍔《つば》も柄《つか》も、刀身さえも。すべてが黒一色に染め上げられたその名は――『冥刀《めいとう》・鬼殺《おにごろ》し』。


 元は軍が保有していた国宝級の名刀を模したレプリカ。この刀の携行を許され、なおかつ扱うことができる機械兵は、僕ただ一人だけだ。



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