↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アストライト・ジャーニー ~終星の魔女と機械兵~  作者: 天野 肇
第2章 箱庭の楽園

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
10/48

4


 視界が大きく揺れ、火花が散った。


「うわ! ごめんつい――」


 ノルニルが悲鳴をあげる。衝動的な行動だったのだろう。子供というのは、全く予測不能な生き物だ。火にかけて使う調理器具を、まさかあんな凶悪な兵器に変えるなんて。


 というか、あれ、ア――、

 黒いオイルがこめかみ付近から一筋流れる。それを見た彼女が凍り付く。


「え。まさか……ねえ。壊れちゃった?」

「かも、ネ……」


 視界がさっきから途切れ途切れになって、明滅する。

 げんご、能力が、……低下、して、く……。


 椅子に括られたまま、くったりと体を前のめりにさせているボ、クのすぐ近くで。


「うわああああああ! やばい、やり過ぎた! ごめん! ごめんね!」


 そ──そん、な焦りを含めた謝罪が飛んデくる。


「ねえ、どこ! どこが痛いの!」


 痛みはないが、明らカ、に異常をきたた、し、しているの──は、頭部ダろ。


 君が――サンザン――叩いてくれたんだから、間違い、なななイ……。


「そ、そうだよね! あ、あわわ……! ちょっと待って! 待っててね! お願いだから喋るのやめないで! 喋ってて! 今、なんとかするから!」


「しゃ、be、るっt、なにヲ」


「なんでもいいから!」



 おろおろしながら、彼女は車椅子を僕にぴったり寄せた。無茶なことを言って、腕を伸ばしてくる。


 そこで、プツッと。視界を形づくっていた回路が切れた。


 ア゛アアアッ――! という汚い叫びを最後に聞いて。


 かねてからの望み通り、僕は壊れた。かなり、あっけなかったけど。


 ――。




「……起きて、ライ君」


 それから、どれほどの時間が経ったかはわからない。解析不能な未知のエネルギーが全身を巡る感覚と共に、僕は再び目覚めた。それも、今までになく最適な状態で。


 そして気がついた時には、ノルニルの顔がすぐ近くにあった。彼女は車椅子からうんと体を伸ばした状態で、僕の頭を引き寄せ、自分の額を僕の額にくっつけていた。


 目蓋を何度か動かして、動作確認。驚いたことに、どこもかしこも正常だった。

 異常がない。はずがないのに。なんだこれは。


 確かに先ほど、弾丸がボディを貫通し、内部の回路は一部破損した。さらにフライパンによる連続殴打で、頭部の回路もいくつか逝った。


 自動修復プログラムであっても、せいぜい軽く穴を塞げる程度だ。ここまで完璧に直すことなんてできない。というより、修復ではない。この感覚は、再起動直後の状態に近い。


「何をしたんだ」


 はっきりした声を出すと、彼女は安心したように、閉じていた目を開いた。


 深海を思わせる、幾重にも重なった深い青。ゆらゆら揺れるその瞳の色から、僕が分析したのは、悲しみと不安の感情だった。しかし、彼女が僕の状態を確認すると、瞳の青の上半分に、夜明けのような金色のグラデーションが差した。


「はあ。よかった……」


 ほっと息を吐いて、彼女は僕から離れていく。


 僕の頬を滑り落ちていく小さな指は、か細く震えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。