それでも前へ
【始まりの街が消滅しました】
【新たな街が開放されました】
周囲から、少しずつ声が上がり始める。
「新しい街…?」
「どこだ?」
「地図見ろ!」
ユースケも世界地図を開こうとして、手を止めた。
先に確認しておきたいことがある。
玄武大陸の生存者数。
【玄武大陸 7,541名】
「…702人」
思わず数字が口から漏れた。
「え?」
サクラがユースケを見る。
「消える直前は8,243人だった。702人減ってる」
シオリの表情から笑みが消れる。
「そんなに…」
始まりの街に残っていた渡り人たちだろう。
第27始まりの街では、コウジたちと協力して24人を玄武門まで連れてきた。
だが、他の始まりの街でも同じように救出が行われたとは限らない。
ヒナが小さく息を吐く。
「間に合わなかった人が、それだけいたんですね…」
「うん…」
ユースケはもう1度、7,541という数字を見る。
ゲーム開始時は10,000人。
すでに2,459人が、この玄武大陸から消えていた。
しばらく数字を見つめたあと、ユースケは世界地図へ表示を切り替える。
以前まで『???』だった場所が変わっていた。
【第14玄武門】
【推奨レベル18】
↓
【第7玄武街】
【推奨レベル25】
↓
【???】
【推奨レベル??】
↓
【???】
【推奨レベル??】
「出た!」
シオリが声を上げる。
ユースケは第7玄武街を選択した。
【第7玄武街】
【推奨レベル25】
【第13玄武門と第14玄武門の渡り人が合流する街です】
【現在の第7玄武街の渡り人 0名】
【現在の第13玄武門の渡り人 397名】
【現在の第14玄武門の渡り人 409名】
「第13玄武門の人数も分かるんだ」
サクラが表示を見る。
「そうみたいだね。2つ合わせて806人か。玄武大陸全体では4人に1人くらい亡くなってるから、少し多く残ってる方かもしれないね」
「私たちも戻ったしね」
シオリが小さく言う。
「第27の人たち、24人連れてこられたもん」
「うん。それも少しはあると思う」
玄武門も2つの始まりの街が合流する場所だった。
さらに先では、2つの玄武門が1つの街へ集まる。
少しずつ、渡り人が集約されていく仕組みらしい。
「推奨レベル25かー」
シオリが自分のステータスを確認する。
「私、まだ23だよ」
「私も23です」
ヒナも続く。
サクラが自分を指差した。
「私は24」
「俺が25だから、今のままでも4人なら進めるかもしれないけど…」
ユースケは第7玄武街の表示を見る。
新しく開放されたばかりで、道中にどんなモンスターがいるのかも分からない。
「急ぐ必要はないし、シオリとヒナが25になるまでは、この辺でクエストをやろうか。サクラもあと1だしね」
「賛成!」
「私もその方がいいと思います」
サクラも頷く。
「じゃあ今日は?」
ユースケが時刻を確認する。
13時を少し回ったところだった。
「今日はもうあまり時間がないから、前にやったハーピー討伐でいいかな。まだ受けられるか確認してみよう」
「またハーピーかー」
シオリが空を見上げる。
「今度はもっと楽に倒せそうだけどね」
「それは言えてる!」
4人は広場を離れ、冒険者ギルドへ向かった。
◇
冒険者ギルドの中も、新たな街の話題で持ちきりだった。
受付へ向かう者。
クエスト一覧を確認する者。
すでに仲間を集め、第7玄武街へ向かう相談を始めている者もいる。
ユースケたちは受付で討伐クエストを確認した。
【ハーピー討伐クエスト】
【推奨レベル23】
【報酬:300,000G】
昨日と同じクエストが表示されている。
「受けられるね」
「じゃあこれにしよう!」
4人はクエストを受注し、昨日と同じ北東部へ向かった。
◇
最初のハーピーを見つけたのは、それからしばらくしてからだった。
短剣を持った4体と、弓を持った2体。
昨日と同じ構成だ。
「じゃあ昨日と同じでいこうか」
「任せて!」
ユースケが前へ出る。
短剣を持ったハーピーが急降下してくるが、今度は動きが分かっている。
盾で受け止め、すぐに片手剣を振るう。
その間に、サクラの矢が上空のハーピーへ飛んだ。
翼を射抜かれた1体が体勢を崩す。
「シオリ!」
「はいよ!」
魔法が着弾し、そのまま地上へ落ちた。
ユースケが地上の敵を引きつけ、サクラが翼を狙う。
シオリが魔法で追撃し、ヒナが状況に応じて攻撃と回復を切り替える。
戦い方が分かっているだけで、討伐速度は大きく変わった。
「次、来るよ!」
「うん!」
次の群れ。
その次。
多少の傷は負ったが、危ない場面はほとんどない。
夕方になる前には、最後のハーピーが地面へ落ちた。
シオリが嬉しそうにヘルパーを見る。
「24になった!」
「私もです」
ヒナも小さく笑う。
サクラも自分の表示を確認した。
「私も25になったよ!」
これでユースケとサクラがLv25。
シオリとヒナがLv24。
第7玄武街の推奨レベルまで、あと1だ。
「いい感じだね」
ユースケたちは玄武門へ戻った。
◇
冒険者ギルドでクエストの完了を報告する。
【ハーピー討伐クエストを達成しました】
報酬を4人で受け取り、ユースケは明日のクエスト一覧にも目を通した。
推奨レベル24の討伐クエストは1つだけだった。
「明日はこれをやってみようか」
【討伐クエスト】
【グレートサラマンダーの討伐】
【推奨レベル24】
【依頼内容】
【赤岩の谷にて、グレートサラマンダーを討伐】
【報酬】
【400,000G】
「ハーピーじゃなくて?」
シオリが聞く。
「レベル上げだけならハーピーでもいいけど、せっかくだから討伐報酬も狙いたいしね」
サクラが笑う。
「新しい敵も見たいんでしょ?」
「それもあるかな」
「やっぱり」
ヒナがクエスト一覧を見る。
「明日で25まで上げられるといいですね」
「うん。それから第7玄武街へ行こう」
次の目的は決まった。
4人で夕食を済ませたあと、それぞれ宿へ戻ることになった。
◇
3人と別れたユースケが向かったのは、以前にも夜狩りをしたコボルトの狩場だった。
アイアングレートソードを構え、コボルトと向かい合う。
パワースラッシュ。
ワイドブレイド。
通常攻撃も混ぜながら、ひたすら両手剣を振るう。
何十体目かのコボルトを倒した時、視界に通知が現れた。
【両手剣の熟練度がLv5になりました】
【両手剣スキル「グランドインパクト」を習得しました】
「ピコーンきた!」
ユースケはすぐにスキルを確認する。
【グランドインパクト】
【消費MP:5】
【強力な一撃を放ち、一定時間、敵の物理攻撃力と魔法攻撃力を低下させる】
「攻撃力低下か」
片手剣のアーマーブレイクは防御力を下げる。
今度はその逆だ。
「試してみよう」
ちょうど次のコボルトがこちらへ走ってくる。
ユースケは両手剣を構えた。
「グランドインパクト!」
踏み込みと同時に、大剣を叩き込む。
コボルトはそのまま光の粒となって消えた。
「…やっぱワンキルだね」
これでは攻撃力低下の効果を確認できない。
片手剣なら防御力低下。
両手剣なら攻撃力低下。
相手によって使い分けられるのは便利そうだ。
「検証は今度かな」
もう少し試したい気持ちはあったが、ユースケは時刻を確認した。
「また2時か…今日はこのくらいにしておこう」
明日も約束がある。
ユースケは両手剣をしまい、玄武門へ戻っていく。
今日はHP、MP、STR、VIT、AGI、DEXが1ずつ上がった。
「結構上がったね」
昼からハーピーと戦い、そのまま夜まで両手剣を振り続けていた。
明日は、グレートサラマンダー討伐だ。




