贖罪
空へ飛び立った矢が、弓を持つハーピーへ向かって軌道を変えた。
「ギャアッ!」
矢が翼に突き刺さり、高度が落ちる。
残った短剣タイプもユースケが引きつけ、その間にサクラとシオリが攻撃を重ねた。
ほどなく、最後のハーピーが光の粒となって消える。
「これで1つ目!」
シオリが杖を下ろした。
翼を破壊すれば飛行を封じられる。
弓タイプはサクラとシオリが優先し、短剣タイプはユースケが引きつける。
戦い方が分かってしまえば、あとは早かった。
街道周辺を移動し、見つけた群れを順番に倒していく。
途中、何度か通知も表示された。
【HPが1上昇しました】
【MPが1上昇しました】
【VITが1上昇しました】
休憩を挟みながら、さらに5つの群れを殲滅する。
最後のハーピーが光の粒となって消えたところで、新たな通知が表示された。
【討伐依頼:ハーピーの群れ】
【討伐完了】
「終わったー!」
シオリが両腕を上げる。
「結構狩ったね」
サクラも弓を下ろした。
「戻ろうか」
「賛成!」
4人は玄武門へ向かった。
◇
玄武門へ戻ったのは15時頃だった。
そのまま冒険者ギルドへ向かい、依頼達成を報告する。
【クエストを達成しました】
【300,000Gを獲得しました】
報酬は4人で均等に分け、1人75,000G。
「結構おいしかったね!」
「近場だったしね」
ユースケはヘルパーを閉じた。
始まりの街が消えるのは明日。
何が起きるか分からない以上、今日はこのまま玄武門で過ごした方がいい。
「今日はこのあと自由にしようか」
「明日は?」
シオリが聞く。
「9時にここでどう?」
「おっけー!」
「はい。大丈夫です」
「私もいいよ」
明日の9時、冒険者ギルドで集合することにした。
「そうだ。サクラとはまだフレンド登録してなかったね」
「今さら?」
「今だからでしょ」
「それもそっか」
互いにヘルパーを操作する。
【サクラとフレンドになりました】
「これで連絡できるね」
「高校からの友達なのに変な感じ」
「確かに」
シオリとヒナは先にギルドを出る。
ユースケもサクラを見る。
「サクラ、夜空いてる?」
「空いてるけど」
「飯行かない?」
「いいよ!」
「じゃあ18時にギルド前で」
「おっけー!」
サクラとも別れ、ユースケは防具屋へ向かった。
◇
防具屋で、まだアイアンだった頭、腕、足をシルバー装備へ更新する。
【シルバーヘルムを購入しました】
【シルバーガントレットを購入しました】
【シルバーグリーブを購入しました】
合計230,000G。
その場で装備を変更する。
これで武器と盾を含め、身につけている装備はすべてシルバーになった。
アイアンソードやアイアン防具は使うことはなさそうなので、買値の半値で売ってしまった。
ユースケは軽く身体を動かして感触を確かめてから、防具屋をあとにした。
◇
宿の部屋へ戻っても、18時まではまだ時間がある。
ユースケはベッドへ腰を下ろし、ヘルパーを開いた。
【名前:ユースケ】
【職業:盗賊】
【レベル】25
【HP】68+12
【MP】64+13
【STR】22+14
【VIT】21+9
【AGI】29+12
【DEX】29+13
【INT】21+8
【LUK】22+2
ハーピー戦でHP、MP、VITがそれぞれ1ずつ上がった。
【武器熟練度】
【短剣:Lv2】
【片手剣:Lv6】
【両手剣:Lv4】
【弓:Lv2】
【杖:Lv2】
【盾:Lv5】
【現在装備】
【武器:シルバーソード】
【盾:シルバーシールド】
【頭:シルバーヘルム】
【胴:シルバーアーマー】
【腕:シルバーガントレット】
【足:シルバーグリーブ】
【装飾品①:安らぎの指輪】
【装飾品②:修練の指輪】
防具はこれですべてシルバーになった。
最後にアイテムボックスの武器へ目を移す。
【主な所持武器】
【短剣:ポイズンダガー+3】
【片手剣:シルバーソード】
【両手剣:アイアングレートソード】
【弓:アイアンボウ】
【杖:アイアンスタッフ】
状況に応じて武器を変えられるのは、今まで何度も役に立っている。
「次は杖か両手剣をシルバーにしようかな」
ヘルパーを閉じる。
もうすぐ18時だ。
ユースケは立ち上がり、サクラとの待ち合わせ場所へ向かった。
◇
冒険者ギルド前へ行くと、すでにサクラが待っていた。
「遅い!」
「ちょうど18時だよ」
「私の方が早かったから遅い!」
「無茶苦茶だな」
2人で近くの食堂へ入る。
料理を注文し、向かい合って座った。
「今日のハーピー、結構楽だったね」
「サクラと相性良かったからね」
「やっぱ弓選んで正解だったなー」
「さすが弓道部のエース候補だね」
「ゲームでも弓選ぶと思ってた?」
「もちろん」
「分かってんじゃん」
料理が運ばれてくる。
今日の戦闘や、第28始まりの街での出来事を話しながら食事を続けた。
久しぶりに2人で話しているのに、不思議とそんな感じはしない。
高校の頃と変わらなかった。
しばらくして、ユースケは箸を止めた。
「サクラ」
「ん?」
「…ごめん」
サクラが首を傾げる。
「何が?」
「FKOのこと」
サクラの表情が変わった。
「俺のせいでサクラたちを危険なことに巻き込んだ…」
少しの間、サクラは黙ってユースケを見る。
「何それ」
「誘ったのは俺だし…」
「でも、参加するって決めたのは私でしょ」
すぐに言葉を返された。
「ユースケに誘われたからって、嫌ならやってないし」
「…うん」
「こんなことになるって知ってたわけでもないじゃん」
「それはそうだけど」
「じゃあユースケのせいじゃないでしょ」
サクラが箸を置く。
「タケシもマユも同じ。みんな自分で参加するって決めたんだから」
ユースケは黙って聞いた。
「勝手に3人分まで背負わないでよ」
「…分かった」
「ほんとに?」
「たぶん」
「分かってないじゃん!」
サクラが呆れたように笑う。
ユースケもつられて笑った。
「じゃあさ」
「ん?」
「帰ったら奢ってよ」
「何を?」
「いつものファミレスのマンゴーパフェ!」
「1番高いやつじゃん」
「いいじゃん。お詫びしたいんでしょ?」
「そういう使い方する?」
「する!」
サクラが楽しそうに笑う。
ユースケも笑いながら、残っていた料理へ箸を伸ばした。
しばらくして、サクラが静かに口を開く。
「タケシとマユも見つけようね」
ユースケは視線を落とし、込み上げてきたものを飲み込む。
少しして顔を上げると、サクラが何も言わずに待っていた。
「うん」




