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玄武の渡り人 ~帰還できるのは、ただ1つの大陸だけ~  作者: かにかま
第2章 玄武門

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相変わらず

「ユースケさーん!」


冒険者ギルドの入口から声が飛んできた。


振り返ると、リクが大きく手を振っている。その後ろにはカイとソラもいた。


「おはよう!」


「おはよー!シオリちゃんもヒナちゃんも!」


「おはよー!」


「おはようございます」


3人がこちらまで来ると、リクの視線がサクラへ向いた。


「ん?その人は?」


「ああ。紹介するね。サクラ」


「サクラだよ。よろしく!」


リクが一瞬固まった。


「…サクラ?」


「うん」


「えっ!?ユースケさんが探してたサクラさん!?」


「あ、覚えてたんだ」


「覚えてるよ!タケシさんとサクラさんとマユさんでしょ?」


カイとソラもサクラを見る。


「見つかったんですね」


「さっき偶然会ったんだ」


「マジで!?」


リクがサクラへ顔を向ける。


「私たち、第28始まりの街から来たんだけど、前にユースケさんからサクラさんたちを探してるって聞いてたんだよ」


「そうなんだ」


「それでサクラも第28だったみたいでね」


「え?」


リクが目を丸くする。


サクラが頷いた。


「うん。さっき最後に残ってた人たちを玄武門まで連れてきたところ」


「えぇっ!?」


ユースケは苦笑した。


「それで…ごめん。せっかく来てもらったんだけど、聞きたかったこと分かっちゃったんだ」


「えぇっ!?じゃあ私たち何しに来たの!?」


「ほんとごめん」


「まあ、いいけどさー」


リクが視線を宙へ向ける。


しばらくして、その表情が変わった。


「ほんとだ。第28、0人になってる」


「これで間違いないね」


ユースケも念のため、第27始まりの街を確認する。


【第27始まりの街】

【現在人数:0人】


表示は昨日と変わっていない。


「第27も0人のまま」


「良かったです」


ヒナが小さく笑った。


「これで第27と第28は大丈夫だねー!」


「うん」


少なくとも、この玄武門につながる2つの始まりの街に取り残された人はいない。


ユースケはそのまま、始まりの街が消えるまでのカウントダウンへ目を移した。


残り時間は、すでに26時間台まで減っている。


「あと27時間くらいか」


「もう1日ちょっとしかないんだ…」


シオリの声が少し小さくなる。


サクラがギルドの外へ目を向けた。


「始まりの街が消えたら、次はここだったりして」


玄武門。


始まりの街を抜けた渡り人たちが集まる場所だ。


「可能性はあると思う」


「やっぱり?」


「うん。でも、本当に消えるのかも、いつ消えるのかも分からない」


今のところ告知されているのは、始まりの街の消滅だけだ。


ヒナが頷く。


「何か起きた時に、遠くにいるのは少し怖いですね」


「そうだね。消滅するまでは、玄武門からあまり離れない方がいいかな」


「じゃあ近場で狩り?」


サクラがすぐに反応する。


「クエストでも探してみようと思ってる」


「いいじゃん!」


「私たちは今日は別のところ行く予定だよー」


リクが言うと、カイとソラも頷いた。


「じゃあ今日は別行動だね」


「リクちゃん、またねー!」


「またねー!」


3人は手を振りながらギルドを出ていった。


その背中を見送ってから、ユースケはサクラを見る。


「サクラはこれから予定ある?」


「ないよ。第28の人たち連れてくるので終わり」


ユースケはシオリとヒナへ目を向けた。


「2人とも、サクラも一緒でいい?」


「もちろん!一緒に行こうよ!」


「はい。私も大丈夫です」


サクラが笑う。


「じゃあ混ぜてもらおっかな」


ユースケはサクラをパーティーへ誘った。


すぐに承認され、メンバー情報が表示される。


サクラはLv24。


シオリとヒナはLv23。


そしてユースケはLv25。


「サクラ、24なんだ」


「そっちは25じゃん」


「まあ、いろいろあって」


「私だっていろいろあったから!」


「そうみたいだね」


4人で依頼掲示板へ向かう。


条件は、玄武門から遠すぎないこと。


今日中に戻ってこられること。


いくつかの依頼を眺めていると、1枚が目に留まった。


【討伐依頼:ハーピーの群れ】

【推奨Lv:23】

【玄武門北東の街道周辺に住み着いたハーピーの群れを殲滅してください】

【報酬:300,000G】


「これ良くない?」


サクラが依頼を指差した。


「ハーピー?」


シオリが横から覗き込む。


「飛んでるやつだよね?」


「たぶん」


サクラが弓へ手を添える。


「なら私の出番じゃん!」


「そうだね」


近接攻撃だけでは戦いにくい相手だ。


だが今は、弓を主武器にしているサクラがいる。


「これにしよう」


依頼を受注し、4人は玄武門を出た。



◇


北東へ続く街道を歩いていく。


空を遮るものは少なく、遠くまで見渡せる。


しばらく進んだところで、サクラが足を止めた。


「いた」


視線の先。


上空を複数の影が旋回している。


人に近い上半身に、大きな翼。


武器を確認すると、短剣を持った個体が4体。弓を持った個体が2体いる。


「6体か」


ユースケはそのうちの1体へアナライズを使った。


【ハーピー】

【レベル:23】

【弱点属性:なし】

【耐性属性:なし】

【状態異常耐性:なし】


「Lv23。弱点も耐性もなし。状態異常耐性もないみたい」


「じゃあ属性は気にしなくていいね!」


シオリが杖を構える。


ヒナも上空を見ながら頷いた。


「弓を持っているのもいますね」


「うん。サクラ、弓の2体を優先でお願いできる?」


「任せて!」


ユースケはシルバーソードとシルバーシールドを構えた。


「俺が前に出る。シオリは単体魔法で援護。ヒナは後ろお願い」


「おっけー!」


「はい!」


「じゃ、行こ!」


4人が街道を外れた瞬間、ハーピーたちがこちらへ顔を向けた。


甲高い鳴き声が響く。


弓を持った2体が上空で矢をつがえた。


「来るよ!」


矢が降ってくる。


ユースケは盾を上げた。


ガンッ!


1本をシールドで弾く。


もう1本はすぐ横の地面へ突き刺さった。


続いて、短剣を持ったハーピーが翼を畳んで一気に降下してくる。


「シールドノック!」


盾を打ち鳴らす。


短剣を持ったハーピーたちの視線がユースケへ集まった。


先頭の1体が短剣を振り下ろす。


ガキンッ!


ユースケは盾で受け止めた。


「サクラ!」


「分かってる!」


矢が飛ぶ。


ユースケの頭上を抜け、ハーピーの翼へ突き刺さった。


「ギャアッ!」


大きく体勢を崩す。


すぐにサクラがもう1本放った。


同じ翼へ命中する。


翼が大きく折れ曲がり、ハーピーが地面へ転がった。


立ち上がろうとするが、翼を動かしても飛び上がれない。


「部位破壊か」


「翼壊せば飛べなくなるみたい!」


「なるほど」


地面でもがくハーピーへ踏み込み、シルバーソードを振り下ろす。


ハーピーが光の粒となって消えた。


【ハーピーを討伐しました】

【ハーピーの羽を獲得しました】


その横から、別のハーピーが急降下してきた。


「アイスバレット!」


シオリの放った氷の弾丸が直撃する。


ハーピーが光の粒となって消えた。


だが、上空の弓タイプはまだ残っている。


そのうちの1体がさらに高度を上げた。


普通の矢では狙いにくそうな距離だ。


「問題なし!」


サクラが弓を空へ向ける。


「ホーミングアロー!」


放たれた矢は、ハーピーではなくその上空へ飛んでいく。


「え?」


シオリが目で追った。


高く上がった矢が、途中で軌道を変える。


弧を描きながらハーピーへ向かい、上空から一気に降り注いだ。


「ギャアッ!」


矢が背中を捉える。


ハーピーが大きく高度を落とした。


「追尾するの!?」


「弓Lv7!」


「すごっ!」


サクラはすでに次の矢をつがえている。


「ダブルショット!」


立て続けに2本。


1本が胴体へ。


もう1本が翼へ突き刺さった。


ハーピーが地面へ落ちる。


「相変わらずだね」


「何それ。褒めるならもっとちゃんと褒めてよ!」


「とても上手です」


「よろしい!」


サクラが満足そうに笑い、すぐに次の矢をつがえる。


ユースケも盾を構え直した。


久しぶりに一緒に戦っているはずなのに、不思議とそんな感じはしなかった。

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