相変わらず
「ユースケさーん!」
冒険者ギルドの入口から声が飛んできた。
振り返ると、リクが大きく手を振っている。その後ろにはカイとソラもいた。
「おはよう!」
「おはよー!シオリちゃんもヒナちゃんも!」
「おはよー!」
「おはようございます」
3人がこちらまで来ると、リクの視線がサクラへ向いた。
「ん?その人は?」
「ああ。紹介するね。サクラ」
「サクラだよ。よろしく!」
リクが一瞬固まった。
「…サクラ?」
「うん」
「えっ!?ユースケさんが探してたサクラさん!?」
「あ、覚えてたんだ」
「覚えてるよ!タケシさんとサクラさんとマユさんでしょ?」
カイとソラもサクラを見る。
「見つかったんですね」
「さっき偶然会ったんだ」
「マジで!?」
リクがサクラへ顔を向ける。
「私たち、第28始まりの街から来たんだけど、前にユースケさんからサクラさんたちを探してるって聞いてたんだよ」
「そうなんだ」
「それでサクラも第28だったみたいでね」
「え?」
リクが目を丸くする。
サクラが頷いた。
「うん。さっき最後に残ってた人たちを玄武門まで連れてきたところ」
「えぇっ!?」
ユースケは苦笑した。
「それで…ごめん。せっかく来てもらったんだけど、聞きたかったこと分かっちゃったんだ」
「えぇっ!?じゃあ私たち何しに来たの!?」
「ほんとごめん」
「まあ、いいけどさー」
リクが視線を宙へ向ける。
しばらくして、その表情が変わった。
「ほんとだ。第28、0人になってる」
「これで間違いないね」
ユースケも念のため、第27始まりの街を確認する。
【第27始まりの街】
【現在人数:0人】
表示は昨日と変わっていない。
「第27も0人のまま」
「良かったです」
ヒナが小さく笑った。
「これで第27と第28は大丈夫だねー!」
「うん」
少なくとも、この玄武門につながる2つの始まりの街に取り残された人はいない。
ユースケはそのまま、始まりの街が消えるまでのカウントダウンへ目を移した。
残り時間は、すでに26時間台まで減っている。
「あと27時間くらいか」
「もう1日ちょっとしかないんだ…」
シオリの声が少し小さくなる。
サクラがギルドの外へ目を向けた。
「始まりの街が消えたら、次はここだったりして」
玄武門。
始まりの街を抜けた渡り人たちが集まる場所だ。
「可能性はあると思う」
「やっぱり?」
「うん。でも、本当に消えるのかも、いつ消えるのかも分からない」
今のところ告知されているのは、始まりの街の消滅だけだ。
ヒナが頷く。
「何か起きた時に、遠くにいるのは少し怖いですね」
「そうだね。消滅するまでは、玄武門からあまり離れない方がいいかな」
「じゃあ近場で狩り?」
サクラがすぐに反応する。
「クエストでも探してみようと思ってる」
「いいじゃん!」
「私たちは今日は別のところ行く予定だよー」
リクが言うと、カイとソラも頷いた。
「じゃあ今日は別行動だね」
「リクちゃん、またねー!」
「またねー!」
3人は手を振りながらギルドを出ていった。
その背中を見送ってから、ユースケはサクラを見る。
「サクラはこれから予定ある?」
「ないよ。第28の人たち連れてくるので終わり」
ユースケはシオリとヒナへ目を向けた。
「2人とも、サクラも一緒でいい?」
「もちろん!一緒に行こうよ!」
「はい。私も大丈夫です」
サクラが笑う。
「じゃあ混ぜてもらおっかな」
ユースケはサクラをパーティーへ誘った。
すぐに承認され、メンバー情報が表示される。
サクラはLv24。
シオリとヒナはLv23。
そしてユースケはLv25。
「サクラ、24なんだ」
「そっちは25じゃん」
「まあ、いろいろあって」
「私だっていろいろあったから!」
「そうみたいだね」
4人で依頼掲示板へ向かう。
条件は、玄武門から遠すぎないこと。
今日中に戻ってこられること。
いくつかの依頼を眺めていると、1枚が目に留まった。
【討伐依頼:ハーピーの群れ】
【推奨Lv:23】
【玄武門北東の街道周辺に住み着いたハーピーの群れを殲滅してください】
【報酬:300,000G】
「これ良くない?」
サクラが依頼を指差した。
「ハーピー?」
シオリが横から覗き込む。
「飛んでるやつだよね?」
「たぶん」
サクラが弓へ手を添える。
「なら私の出番じゃん!」
「そうだね」
近接攻撃だけでは戦いにくい相手だ。
だが今は、弓を主武器にしているサクラがいる。
「これにしよう」
依頼を受注し、4人は玄武門を出た。
◇
北東へ続く街道を歩いていく。
空を遮るものは少なく、遠くまで見渡せる。
しばらく進んだところで、サクラが足を止めた。
「いた」
視線の先。
上空を複数の影が旋回している。
人に近い上半身に、大きな翼。
武器を確認すると、短剣を持った個体が4体。弓を持った個体が2体いる。
「6体か」
ユースケはそのうちの1体へアナライズを使った。
【ハーピー】
【レベル:23】
【弱点属性:なし】
【耐性属性:なし】
【状態異常耐性:なし】
「Lv23。弱点も耐性もなし。状態異常耐性もないみたい」
「じゃあ属性は気にしなくていいね!」
シオリが杖を構える。
ヒナも上空を見ながら頷いた。
「弓を持っているのもいますね」
「うん。サクラ、弓の2体を優先でお願いできる?」
「任せて!」
ユースケはシルバーソードとシルバーシールドを構えた。
「俺が前に出る。シオリは単体魔法で援護。ヒナは後ろお願い」
「おっけー!」
「はい!」
「じゃ、行こ!」
4人が街道を外れた瞬間、ハーピーたちがこちらへ顔を向けた。
甲高い鳴き声が響く。
弓を持った2体が上空で矢をつがえた。
「来るよ!」
矢が降ってくる。
ユースケは盾を上げた。
ガンッ!
1本をシールドで弾く。
もう1本はすぐ横の地面へ突き刺さった。
続いて、短剣を持ったハーピーが翼を畳んで一気に降下してくる。
「シールドノック!」
盾を打ち鳴らす。
短剣を持ったハーピーたちの視線がユースケへ集まった。
先頭の1体が短剣を振り下ろす。
ガキンッ!
ユースケは盾で受け止めた。
「サクラ!」
「分かってる!」
矢が飛ぶ。
ユースケの頭上を抜け、ハーピーの翼へ突き刺さった。
「ギャアッ!」
大きく体勢を崩す。
すぐにサクラがもう1本放った。
同じ翼へ命中する。
翼が大きく折れ曲がり、ハーピーが地面へ転がった。
立ち上がろうとするが、翼を動かしても飛び上がれない。
「部位破壊か」
「翼壊せば飛べなくなるみたい!」
「なるほど」
地面でもがくハーピーへ踏み込み、シルバーソードを振り下ろす。
ハーピーが光の粒となって消えた。
【ハーピーを討伐しました】
【ハーピーの羽を獲得しました】
その横から、別のハーピーが急降下してきた。
「アイスバレット!」
シオリの放った氷の弾丸が直撃する。
ハーピーが光の粒となって消えた。
だが、上空の弓タイプはまだ残っている。
そのうちの1体がさらに高度を上げた。
普通の矢では狙いにくそうな距離だ。
「問題なし!」
サクラが弓を空へ向ける。
「ホーミングアロー!」
放たれた矢は、ハーピーではなくその上空へ飛んでいく。
「え?」
シオリが目で追った。
高く上がった矢が、途中で軌道を変える。
弧を描きながらハーピーへ向かい、上空から一気に降り注いだ。
「ギャアッ!」
矢が背中を捉える。
ハーピーが大きく高度を落とした。
「追尾するの!?」
「弓Lv7!」
「すごっ!」
サクラはすでに次の矢をつがえている。
「ダブルショット!」
立て続けに2本。
1本が胴体へ。
もう1本が翼へ突き刺さった。
ハーピーが地面へ落ちる。
「相変わらずだね」
「何それ。褒めるならもっとちゃんと褒めてよ!」
「とても上手です」
「よろしい!」
サクラが満足そうに笑い、すぐに次の矢をつがえる。
ユースケも盾を構え直した。
久しぶりに一緒に戦っているはずなのに、不思議とそんな感じはしなかった。




