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玄武の渡り人 ~帰還できるのは、ただ1つの大陸だけ~  作者: かにかま
第2章 玄武門

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小心翼翼

ゴブリンジェネラルを倒してしばらくすると、部屋の中央に光が集まり始めた。

やがて、1つの宝箱が姿を現す。


「これが初回討伐の宝箱だよ」

ユースケの言葉に、Aチームの8人が集まった。

宝箱を開くと、眩しい光が広がる。


【職業に応じた討伐報酬を獲得しました】


「おおっ!」

「装備だ!」

「やった!」

それぞれの前に表示された報酬を見て、8人から次々と声が上がる。

さっきまでの緊張が嘘のように、嬉しそうに報酬を確認していた。


ユースケは自分の前を見る。

何も表示されていない。

シオリとヒナも同じだった。

「やっぱり、初回だけみたいだね」

「みたいだね!」


その時、部屋の奥に石造りの階段が現れた。

「この先が玄武門です」

ユースケはAチームを見る。

「あと少しですよ」

11人は階段を上っていった。



◇

階段を抜けると、目の前に巨大な城壁が広がった。

「あれが…玄武門」

Aチームの1人が呟く。

ここまで辿り着いた8人の顔に、安堵が広がっていく。


「お疲れ様でした。これでAチームは到着ですね」

「ありがとうございました!」

8人が頭を下げる。


ユースケは少し笑ってから、玄武門の中へ視線を向けた。

「俺たちはBチームとCチームを迎えに戻ります」

そして、8人へ向き直る。

「17時に、玄武門の冒険者ギルド前で待ち合わせにしましょう」

「分かりました!」

「じゃあ、またあとで」


ユースケはシオリとヒナを見る。

「戻ろうか」

「うん!」

「はい」


3人は石造りの階段を下り、再び旅立ちの洞窟へ戻った。

歩きながら、ユースケはフレンドチャットを開く。


(ユースケ)

『Aチーム、全員無事に玄武門へ着きました。今から戻ります』


すぐに返事が届いた。


(コウジ)

『了解。こっちも問題ない』


「よかった」

小さく息を吐く。


(ユースケ)

『次はBチームで行きます』


(コウジ)

『分かった。待ってる』


ユースケはチャットを閉じた。

「向こうも全員無事みたい」

「よかったー!」

「では、次はBチームですね」

「うん。すぐ戻ろう」


3人は洞窟を引き返していった。



◇

洞窟の入口を出ると、コウジが手を上げた。

「おかえり!」


その後ろでは、BチームとCチームの16人が固まって待っている。

「ただいま。Aチームは全員無事に玄武門まで着きました」

その言葉に、16人から安堵の声が上がった。


「じゃあ、次はBチームで行きましょう」


Bチームの8人が前へ出る。


戦士1人。

盗賊1人。

僧侶2人。

狩人2人。

魔術師2人。


そこへユースケ、シオリ、ヒナが加わり、11人でパーティーを組み直した。

「コウジさん、また留守番よろしくお願いします」

「任せろ!」


ユースケはBチームを見る。

「Aチームも全員無事に抜けられました。同じように落ち着いていきましょう」

8人が頷く。


11人は再び旅立ちの洞窟へ入った。



◇

Bチームの攻略も順調に進んだ。

ユースケがシールドノックで敵を引きつけ、シオリとヒナのフロストサークルでゴブリンを一掃する。

残ったホブゴブリンへ、後方から矢と魔法が集中した。


戦闘を繰り返しながら進み、やがてボス部屋へ辿り着く。

「行きましょう」

扉を開ける。


そこには、今回も巨大な金棒を持ったゴブリンジェネラルが立っていた。

「やっぱり出るね」

未攻略者がいれば、ゴブリンジェネラルが出現するようだ。


戦い方もAチームと同じだった。

ユースケがすべての敵を引きつける。

シオリとヒナの範囲魔法でゴブリンを減らし、残ったホブゴブリンへ遠距離攻撃を集中する。


最後に残ったゴブリンジェネラルへ、ユースケがアーマーブレイクを叩き込んだ。

金棒が頭上へ持ち上がる。

「離れて!」


全員が距離を取る。

ドォンッ!

金棒が石床へ叩きつけられた。


動きの止まったゴブリンジェネラルへ、矢と魔法が一斉に飛ぶ。


同じ攻防を繰り返し――。

「グオオォォッ!」

ゴブリンジェネラルが光の粒となって消えた。


「やった!」

Bチームから歓声が上がる。


やがて宝箱が現れ、8人が初回討伐報酬を受け取った。

「おおっ!」

「やった!」


嬉しそうに報酬を確認する8人を見届けると、部屋の奥に石造りの階段が現れる。

そのまま階段を上り、Bチームも無事に玄武門へ辿り着いた。


「17時に冒険者ギルド前へ集合してください。Aチームにも同じように伝えてあります」

「分かりました!」

「じゃあ、またあとで」


ユースケはシオリとヒナを見る。


残るは、Cチームの8人。


「あと1組だね」

「うん!」

「最後ですね」


3人は最後の8人を迎えに、再び旅立ちの洞窟へ戻っていった。



◇

再び洞窟を抜けると、コウジとCチームの8人が待っていた。

ユースケは残った8人を見る。


「じゃあ、最後はCチームです」


Cチームは、


戦士2人。

格闘家1人。

盗賊2人。

僧侶1人。

狩人1人。

魔術師1人。


「今回はコウジさんも一緒にお願いします」

「おう!」


Cチームの8人に、ユースケ、シオリ、ヒナ、コウジが加わる。


12人。

正式パーティーの上限ぴったりだ。


それぞれが武器を確認する中、1人だけ動かない少年がいた。


中学3年生のシュン。

職業は盗賊。


始まりの街を出た時はLv12だったが、ここまでの戦闘でLv13になっている。

それでも、24人の中では1番レベルが低かった。


シュンはアイアンダガーを握ったまま、洞窟の入口を見つめている。


「シュン?」

コウジが声をかける。

「どうした?」


シュンはしばらく黙っていた。

やがて、握っていたダガーへ視線を落とす。


「…俺、遠距離攻撃できないよ」

「ん?」

「みんな弓とか魔法で後ろから攻撃してたじゃん。でも俺、これしかないし…」


手にしているのは、転職した時に選んだアイアンダガー。


「弓も魔法も買えなかったし…」

シュンの声が小さくなる。

「俺、レベルも1番低いし…」


洞窟の暗い入口を見る。

だが、足は動かなかった。


コウジがシュンのそばへ歩み寄る。

「大丈夫だ」

「でも…」

「危なくなったら俺が助ける。ユースケさんたちもいるんだ。AチームもBチームも無事だっただろ?」

「分かってるけど…」


シュンはダガーを強く握る。

「でも、俺が攻撃するなら前に行くしかないじゃん」


コウジが言葉を止めた。


「じゃあ、前に出なければいいよ」

ユースケが声をかけた。


「え?」


シュンが顔を上げる。

ユースケはヘルパーを操作し、アイアンボウを取り出した。


「これ使って」

差し出された弓を見て、シュンが目を瞬く。


「…弓?」

「俺のアイアンボウ。玄武門まで貸すよ」

「でも、俺、弓なんて使ったことないよ」

「大丈夫。盗賊は弓も得意なんだよ」

「そうなの?」

「うん。弓適性は110%あるから、相性はいいよ」


ユースケ自身も盗賊へ転職してから弓を使ってきた。


「スキルはなくても普通に撃てるし、矢も自動で出る。最初は当てることだけ考えればいいよ」


シュンはアイアンボウを見る。

それでも、すぐには手を伸ばさなかった。


「…俺にできるかな」

「やってみないと分からないよ」


ユースケはそのまま弓を差し出す。

「前に出るのが怖いなら、無理に前に出る必要はないからね」


シュンがゆっくりと手を伸ばす。

アイアンボウを受け取り、確かめるように握った。


「…これなら、後ろにいていい?」

「もちろん」


ユースケは頷く。

「敵は俺が引きつけるから、シュン君は後ろから撃ってみて」


シュンはもう1度、洞窟の入口を見る。

さっきまでとは違い、今度は視線を逸らさなかった。


「…分かった」

小さく息を吐く。


「やってみる」


コウジが笑った。

「それでいい」


ユースケは全員を見渡す。

「じゃあ、最後のチームです。全員で玄武門まで行きましょう」

「おう!」

「はい!」


シュンもアイアンボウを握り、小さく頷いた。


12人は、旅立ちの洞窟へ足を踏み入れた。

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