確かな一歩
旅立ちの洞窟へ入ったCチームの12人は、ユースケを先頭に奥へ進んでいく。
しばらくすると、ゴブリンとホブゴブリンの群れが現れた。
「来ます!」
ユースケがシールドノックで敵を引きつける。
続いてシオリとヒナのフロストサークルが炸裂し、ゴブリンたちが光の粒となって消えていった。
残ったホブゴブリンへ、後方から矢と魔法が飛ぶ。
シュンも借りたアイアンボウを構えた。
「…っ」
放った1本目は外れた。
もう1度弦を引く。
今度の矢は、ホブゴブリンの肩へ突き刺さった。
「…当たった」
シュンが小さく呟く。
「いいね!」
ユースケが声を飛ばす。
シュンは少しだけ表情を緩めると、もう1度弓を構えた。
その後も同じ戦い方で洞窟を進んでいく。
やがて12人は、ボス部屋の前へ辿り着いた。
ユースケは全員を振り返る。
「ここも今までと同じです。最初は俺が全部引きつけます」
視線をコウジへ向ける。
「ゴブリンジェネラルだけになったら、コウジさんも隙を見て攻撃に参加してください」
「分かった。任せろ!」
「他の人たちは後方から援護をお願いします」
全員が頷いた。
シュンもアイアンボウを握り直す。
「じゃあ、行きます」
扉を開ける。
広い部屋の奥に、巨大な金棒を持ったゴブリンジェネラルが立っていた。
その周囲には、ゴブリンとホブゴブリンの姿もある。
「パーティーが1人増えたからか、ゴブリンが2匹増えてますね」
ヒナの言葉に、ユースケが頷く。
「まあ、ヒナとシオリがいれば誤差みたいなものだよ」
「行きます!」
ユースケが駆け出す。
「シールドノック!」
衝撃が広がり、敵の注意がユースケへ向いた。
シオリとヒナがそれぞれ魔法を放つ。
冷気が敵の群れを包み、ゴブリンたちが次々と光の粒へ変わっていった。
残ったホブゴブリンへ、後方から矢と魔法が飛ぶ。
シュンもその中に混じり、矢を放った。
やがてホブゴブリンも倒れ、残るはゴブリンジェネラルだけとなった。
ゴブリンジェネラルが吠え、巨大な金棒を頭上へ持ち上げる。
「離れて!」
全員が距離を取る。
ドォンッ!
金棒が石床へ叩きつけられ、衝撃が周囲へ広がる。
「コウジさん、お願いします!」
ユースケの声に、コウジが前へ出る。
「トリプルスラッシュ!」
横から踏み込み、剣を連続で叩き込んだ。
後方からは矢と魔法が飛ぶ。
再びゴブリンジェネラルが吠え、巨大な金棒を頭上へ持ち上げた。
「離れて!」
全員が距離を取る。
ドォンッ!
金棒が石床へ叩きつけられた。
シュンが弓を引く。
狙いを定め、矢を放った。
矢は真っ直ぐ飛び、ゴブリンジェネラルの眉間に突き刺さる。
「グオッ!?」
ゴブリンジェネラルが大きく仰け反った。
「ナイスヘッドショット!」
ユースケが声を上げる。
「…へへっ」
シュンが嬉しそうに弓を構え直した。
続けて矢と魔法が飛ぶ。
次々と攻撃を受けたゴブリンジェネラルが大きくよろめいた。
「グオオォォッ!」
最後に雄叫びを上げ、その巨体が光に包まれる。
やがて、無数の光の粒となって消えていった。
【レベルが25になりました】
【盗賊スキル「ハイド」を習得しました】
「やった!」
Cチームから歓声が上がる。
シュンは手にしたアイアンボウを見て、少し笑った。
しばらくすると、部屋の中央に光が集まり、宝箱が姿を現した。
「これでみんなも初回討伐報酬がもらえるよ」
Cチームの8人が宝箱の周りに集まる。
宝箱を開くと、眩しい光が広がった。
【職業に応じた討伐報酬を獲得しました】
「来た!」
「何もらった?」
それぞれが自分の報酬を確認していく。
シュンも目の前に表示された内容を見る。
「…え?」
そのまま固まった。
「どうしたの?」
ユースケが声をかける。
シュンがゆっくりと顔を上げた。
「弓だ…」
【隠密の弓】
ATK:+12
攻撃時のヘイト上昇量を軽減する。
「しかも、今のより強い…」
シュンの声が弾む。
「いいの引いたね」
ユースケが笑う。
シュンはもう1度、隠密の弓の表示を見る。
「敵にも狙われにくくなるんだ…」
その目には期待が浮かんでいた。
シュンは借りていたアイアンボウをユースケへ返し、さっそく隠密の弓を装備する。
やがて、部屋の奥に石造りの階段が現れた。
「じゃあ、行きましょう。この上が玄武門です」
12人は階段を上っていった。
◇
玄武門へ到着したのは、15時を少し過ぎた頃だった。
「これで全員ですね」
「うん」
ユースケはCチームの8人を見る。
「AチームとBチームには、17時に冒険者ギルド前へ集まるよう伝えてあります。みんなもそこで合流しましょう」
「分かりました!」
それまで自由行動とし、いったん解散した。
17時。
冒険者ギルド前には、A・B・Cチームの24人と、ユースケ、シオリ、ヒナ、コウジが集まっていた。
「これで全員だね」
ユースケは24人を見渡す。
昨日まで第27始まりの街に残っていた人たちが、今は全員ここにいる。
「みんな、本当にお疲れ様でした」
「ありがとうございました!」
あちこちから声が上がる。
ユースケは少し笑ったあと、表情を引き締めた。
「ただ、ここまで来たから安心ってわけじゃないです」
24人がユースケを見る。
「玄武門も、いつ消滅するか分かりません」
空気が少し変わる。
「それと、玄武門には冒険者ギルドがあります。ここからはクエストも受けられます」
何人かが冒険者ギルドへ視線を向けた。
「報酬ももらえるし、レベル上げにもなると思います。まずは無理のないものからやってみてください」
ユースケは24人を見渡す。
「焦らなくていいです。でも、止まらないでください。少しずつ強くなって、次に進む準備をしていきましょう」
「はい!」
しっかりとした返事が返ってきた。
「じゃあ、今回はこれで解散にしましょう」
24人はそれぞれ仲間と話しながら、玄武門の街へ散っていく。
その中には、真新しい弓を背負ったシュンの姿もあった。
洞窟へ入る前より、その足取りは少しだけ軽くなっていた。
ユースケもその姿を見送ってから、ヘルパーを開く。
レベルは23から25まで上がっていた。
【名前】ユースケ
【職業】盗賊
【レベル】25
【HP】68+10
【MP】64+11
【STR】22+13
【VIT】21+8
【AGI】29+12
【DEX】29+12
【INT】21+7
【LUK】22+2
今回の洞窟攻略では、MP、VIT、AGI、DEXがそれぞれ1ずつ上がっていた。
「やっぱり、盾役を続けると伸び方も変わるな」
修練の指輪を装備している影響もありそうだ。
ユースケはステータスを閉じる。
シュンだけじゃない。
自分もまた、少しずつ前へ進んでいた。




