因縁のウルフ
前夜祭を終え、ユースケたちは宿へ戻ってきた。
「じゃあ、明日は朝9時に冒険者ギルド前で」
「はーい!」
「おやすみなさい」
「おやすみ」
シオリとヒナがそれぞれの部屋へ向かっていく。
ユースケも自分の部屋へ戻ろうとして、足を止めた。
ユースケは修練の指輪を見る。
「…こんな状況だからこそ、修練が必要だよね」
そう呟き、ユースケは宿を出た。
◇
夜の旅立ちの森。
ユースケはアイアングレートソードを手に歩いていた。
前方から低い唸り声が聞こえる。
「ガルルル…」
ウルフが3匹。
以前、この森へ初めて来た時は、3匹がリンクしただけで逃げていた。
「懐かしいな」
3匹のウルフが一斉に駆けてくる。
ユースケは最初の1匹をかわし、そのまま両手剣を振り抜いた。
「ギャンッ!」
一撃で光の粒へ変わる。
続く1匹も横薙ぎの一撃。
最後の1匹も、振り下ろした両手剣で倒した。
「通常攻撃で1発か」
以前とは比べものにならない。
ユースケは周囲を見る。
「これなら、まとめてもいけそうだね」
近くにいたウルフへ近付き、そのまま走り抜ける。
さらに別の群れの近くを通り、次々とウルフを引きつけていく。
ユースケは瞬足で距離を保ちながら、ウルフを引き連れて森を走った。
十分に集まったところで、大きく回り込む。
追いかけてきた10匹近いウルフが、まとまって迫ってくる。
ユースケは足を止め、アイアングレートソードを構えた。
「ワイドブレイド!」
両手剣を大きく振り抜く。
前方へ広がった斬撃が、密集したウルフたちをまとめて捉えた。
「ギャンッ!」
「ガウッ!」
ウルフが次々と光の粒へ変わっていく。
これぞ、ワンワントレイン!
ユースケは再び森の奥へ走り出した。
その後も、同じ狩りを繰り返した。
◇
気付けば、時刻は深夜2時を回っていた。
ユースケは宿の部屋へ戻ると、ベッドへ腰を下ろした。
「今夜の成果は…」
MP+1。
STR+2。
AGI+1。
DEX+1。
そして、両手剣熟練度もLv4になった。
両手剣適性が10%上昇し、80%から90%になっている。
「結構伸びたね」
修練の指輪を装備してから、やはりステータスの伸びはいい気がする。
ユースケはヘルパーを閉じ、ベッドへ横になった。
目を閉じると、すぐに眠りへ落ちていった。
◇
翌朝9時。
冒険者ギルド前には、昨日の28人が集まっていた。
「全員いますね」
ユースケは改めて24人の戦力を確認する。
レベル12が1人。
レベル13が5人。
レベル14が8人。
レベル15が6人。
レベル16が4人。
全員、旅立ちの洞窟の推奨レベル18には届いていない。
職業は、
戦士4人。
格闘家2人。
盗賊4人。
僧侶4人。
狩人5人。
魔術師5人。
昨日決めた通り、8人ずつA、B、Cの3チームに分かれている。
「旅立ちの洞窟までは、28人全員で一緒に行きます。ただ、正式なパーティーは3つに分けておきましょう」
ユースケは3組を順番に見る。
「Aチームには俺。Bチームにはシオリ。Cチームにはヒナとコウジさんが入ります」
それぞれパーティーを組んでいく。
Aチームは9人。
Bチームも9人。
Cチームは10人。
「移動中はチームごとに固まらなくて大丈夫です。俺が先頭に立ちます。コウジさんは最後尾をお願いできますか?」
「任せてくれ」
「他の前衛職の人は、後衛職の人を囲うように動いてください」
全員が頷く。
「それと、旅立ちの森に出るウルフは火属性が弱点です。ファイアを使える人は優先して使ってください」
ユースケは周囲を見渡した。
「じゃあ、行きましょう」
28人はまとまって、第27始まりの街を出発した。
◇
旅立ちの草原を抜け、森へ入る。
ユースケはシルバーソードとシルバーシールドを構え、先頭を進む。
最後尾にはコウジがいた。
しばらく進んだところで、ユースケが足を止める。
「来るよ」
前方の茂みが揺れた。
1匹。
2匹。
次々とウルフが姿を現す。
さらに左右の茂みからも増えていく。
「多い…」
シオリが杖を構える。
ユースケは素早く数えた。
「25匹くらいかな」
周囲がざわつく。
「やっぱり、人数が増えると敵も増えるみたいだね」
25匹近いウルフが一斉に駆け出した。
ユースケはすぐに声を張る。
「チームは気にしなくていいです!前衛は外側!後衛を囲って!」
全員が動く。
「コウジさん、後ろをお願いします!」
「任せろ!」
ユースケはさらに前へ出た。
「シオリ、ヒナ!俺が集める!」
「準備OK!」
「はい!」
押し寄せるウルフを十分に引きつける。
「シールドノック!」
盾を打ち鳴らす音が森へ響いた。
ウルフたちの視線がユースケへ集まる。
ユースケは左右へ動きながら、群れを前方へまとめていく。
「シオリ、ヒナ、お願い!」
シオリが杖を向けた。
「フレイムサークル!」
ウルフたちの足元から、一気に炎が噴き上がる。
「ギャンッ!」
「ガウッ!」
火属性が弱点のウルフが、次々と光の粒へ変わっていく。
少し離れた位置に固まった群れへ、ヒナが杖を向けた。
「フロストサークル!」
冷気が地面を走り、ウルフたちをまとめて包み込む。
2人の範囲魔法で、群れの大半が消えた。
それでも、範囲から外れた5匹ほどが残っている。
「残りをお願いします!」
ユースケの声を合図に、後方から一斉に攻撃が飛んだ。
「パワーショット!」
「ファイア!」
「アイスバレット!」
矢と魔法が残ったウルフへ集中する。
1匹。
また1匹。
最後のウルフも光の粒へ変わった。
森に静けさが戻る。
「よし。このまま行きましょう」
28人は再び隊列を整え、森の奥へ進んでいった。
その後も、何度かウルフの群れに遭遇した。
「シールドノック!」
ユースケが群れを引きつける。
「フレイムサークル!」
シオリの炎がウルフたちを包み、残った敵へ後方から矢と魔法が飛ぶ。
別の戦闘では、ヒナのフロストサークルが群れをまとめて捉えた。
前衛職は後衛を囲んだまま、いつでも動けるよう周囲を警戒している。
最初は緊張していた24人も、何度か繰り返すうちに少しずつ動きが良くなっていった。
「ファイア!」
「パワーショット!」
後方から攻撃が飛び、最後のウルフが光の粒へ変わる。
「いい感じですね」
ユースケは周囲を確認する。
大きく崩れることもなく、ここまで危なげなく進めていた。
そのまま森を進んでいくと、やがて木々の向こうに岩山が見えてくる。
「見えてきたよ!」
シオリが前方を指差す。
岩壁に開いた大きな入口。
旅立ちの洞窟だ。
28人は、その前まで辿り着いた。
ユースケは足を止め、後ろを振り返る。
ここまでは順調だった。
だが、本番はここからだ。
「じゃあ、まずAチームから行きます」
ユースケは洞窟の入口と、ここに残る16人を見比べた。
「…コウジさん」
「ん?」
「コウジさんには、ここに残ってもらってもいいですか?」
「俺は一緒に行かなくていいのか?」
「はい。洞窟の前で待っていれば、敵と遭遇することはほとんどないと思います。でも、念のためです」
ユースケは待機する16人を見る。
「俺たち4人が入ると、ここには16人だけになりますから」
「なるほどな」
コウジはすぐに頷いた。
「分かった。こっちは任せろ」
「お願いします。何かあったらフレンドチャットで連絡してください」
「おう」
ユースケはBチームとCチームへ向き直る。
「待っている間は、洞窟を背にして固まっていてください。前衛職は外側、後衛職は内側でお願いします」
16人がそれぞれ動き始める。
その中心にコウジが残った。
ユースケはAチームの8人を見る。
「シオリとヒナが入って、11人でパーティーを組み直します」
シオリとヒナが元のパーティーを抜け、改めてAチームに入る。
11人のパーティーが完成した。
「洞窟の中では、できるだけ俺が敵を引きつけます。遠距離から攻撃できる人は後ろからお願いします」
ユースケは少し間を置く。
「ゴブリンとホブゴブリンは氷属性が弱点です。アイスバレットを使える人は優先してください」
全員が頷いた。
「危ないと思ったら、無理に攻撃しなくて大丈夫です」
ユースケはシルバーソードとシルバーシールドを構える。
「じゃあ、行きましょう」
11人は旅立ちの洞窟へ足を踏み入れた。




