↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
玄武の渡り人 ~帰還できるのは、ただ1つの大陸だけ~  作者: かにかま
第2章 玄武門

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
63/78

それぞれの選択

【玄武大陸の渡り人へ告げます】


【3日後に始まりの街は消滅します】


【それまでに旅立ちの洞窟を抜けてください】


光球の声が途切れた。

同時に、ヘルパーにも新たな表示が現れる。


【71時間59分58秒後に、始まりの街は消滅します】


玄武門のあちこちから、ざわめきが広がっていく。

「始まりの街が消えるって…」

「まだ人いるだろ?」

「3日でここまで来いってことか?」

戸惑う声が飛び交う。


その中から、別の声も聞こえてきた。

「待てよ。始まりの街が消えるなら、次は玄武門じゃないのか?」

「だったら戻ってる暇なんてないだろ」

「今のうちに先へ進んだ方がいい!」


すでに仲間同士で話し合う者もいる。

「残ってる奴らを助けに戻って、俺たちまで間に合わなくなったらどうするんだよ」

「自力でここまで来てもらうしかないだろ」


ユースケは黙ってその声を聞いた。

言っていることは分かる。

始まりの街が消えるなら、いずれ玄武門も消える可能性はある。

先へ進めるうちに進むのも、生き残るための選択だ。

それを間違っているとは思わない。


ユースケはヘルパーを開き、第27始まりの街を確認した。


【第27始まりの街】

【現在の渡り人 90名】


「まだ90人いるのか…」

以前よりは大きく減っている。

それでも、玄武門まで来ていない人がまだ大勢いた。


ユースケは少し考え、シオリとヒナを見る。

「俺、『第27始まりの街』に戻ろうと思う」

「戻るの?」

「うん」


『第27始まりの街』から玄武門までの道は1度通っている。

出現するモンスターも、危険な場所も分かっている。


「残ってる人たちを、こっちまで連れてきたい」

宣告を聞いて、自力で動き始める人もいるだろう。

それでも、全員が無事に辿り着けるとは限らない。

俺が先導すれば、生き残れる人は増えるはずだ。


「ただ、2人は無理に付き合わなくていいよ。戻る分、危険も増えるから」

シオリとヒナが顔を見合わせる。

すぐにシオリが笑った。

「さすが、私たちを野宿させなかったユースケさん!」


ヒナも優しく微笑む。

「ユースケさんなら戻ると思いました」

「私も行きます」

「もちろん私も!」


2人とも迷っている様子はなかった。

その返事が、思っていた以上に嬉しかった。

胸の奥がじんわりと熱くなる。


ユースケは一瞬言葉に詰まり、少しだけ笑った。

「ありがとう」


全員を助けられるとは限らない。

それでも、できることはある。

「じゃあ、『第27始まりの街』に戻ろう」


その時、シオリが何かを思い出したように顔を上げた。

「あ、その前に魔法屋寄っていい?」

「何か買うの?」

「フロストサークル!」

シオリが即答する。

「旅立ちの洞窟のゴブリンって、氷が弱点だったよね?」

「そうだったね」


始まりの街から玄武門へ向かうには、旅立ちの洞窟を通る必要がある。

大人数を連れて移動するなら、複数のゴブリンをまとめて攻撃できる範囲魔法は役に立つ。


「私も買っておきます」

ヒナも口を開いた。

「ヒナも?」

「はい。人数が多いなら、範囲魔法を使える人が多い方が安心です」

「確かに」


3人は魔法屋へ向かった。

シオリとヒナは、それぞれ100,000Gを支払い、フロストサークルを習得する。


【フロストサークル】

属性:氷

消費MP:12

指定した地点を中心に冷気を発生させ、範囲内の敵を攻撃する。


「ふふ、これで私は炎と氷を極めた!」

シオリが満足そうに頷く。

ヒナも新しく覚えた魔法を確認した。


ゴブリンは氷属性が弱点。

2人がフロストサークルを使えるなら、大人数を護衛する時にも役立つはずだ。


「準備もできたし、行こうか」

「うん!」

「はい」

3人は第27始まりの街へ向かって歩き出した。



◇


玄武門を出た3人は、来た道を引き返していく。

しばらく進むと、旅立ちの洞窟へ続く石造りの階段が見えてきた。

「ここを下りるの、なんか変な感じだね」

シオリが階段を覗き込む。

「前は上ってきたからね」


3人は階段を下り、ゴブリンジェネラルと戦った広間へ警戒しながら入った。

だが、部屋の中央に敵の姿はない。

「出ないんだ」

シオリが周囲を見回す。

「俺たちは全員攻略済みだからかな」


まだ断定はできない。

ユースケはそう考えながら、洞窟の入口へ向かって進んだ。

以前は慎重に進んだ道だが、今では3人とも大きく成長している。


やがて、前方から聞き慣れた鳴き声が響いた。

「ギギッ!」


ゴブリンが4匹。

その後ろにはホブゴブリンが1匹いる。

「ちょうどいいね」

シオリが嬉しそうに杖を構えた。

「試してみる?」

「もちろん!」


ユースケが前へ出る。

敵が一斉にこちらへ向かってきた。

「シールドノック!」

盾を打ち鳴らす。


ゴブリンたちの視線がユースケへ集まり、ホブゴブリンも棍棒を振り上げながら迫ってくる。

ユースケは攻撃を受けないよう動きながら、5匹を同じ方向へ誘導した。

「シオリ!」

「いくよ!」


ユースケが横へ抜ける。

「フロストサークル!」


ゴブリンたちの足元を中心に、一気に冷気が広がった。

白い霜が地面を覆い、凍てつく風が5匹をまとめて包み込む。

「ギャッ!」

「ギギィッ!」


4匹のゴブリンが次々と光の粒へ変わった。

その中から、ホブゴブリンだけがよろめきながら飛び出してくる。


「おお!」

シオリが目を輝かせた。

「すごい!まとめて倒せた!」

「ゴブリンにはかなり使えそうだね」


ユースケはシルバーソードへ持ち替える。

弱点を突いた範囲攻撃。

これなら人数が増えて敵の数が多くなっても、かなり戦いやすくなる。


残ったホブゴブリンも、3人で危なげなく倒した。

「買って正解だった!」

シオリが満足そうに頷く。


さらに進むと、再びゴブリンたちの集団が現れた。

「今度は私がやってみます」

ヒナが杖を構える。


ユースケは再び前へ出た。

「シールドノック!」

敵の視線を集め、棍棒をかわしながら位置をまとめていく。


十分に集まったところで、ヒナへ声を飛ばした。

「ヒナ、お願い!」

「はい!」

「フロストサークル!」


冷気が地面を走り、ゴブリンたちをまとめて包み込んだ。

先ほどと同じように、小柄なゴブリンが次々と光の粒へ変わっていく。

残ったホブゴブリンも、ユースケとシオリが攻撃を加えて倒した。


ヒナは自分のMPを確認する。

「シオリだけだとMPが持たないかもしれないし、私も使えるようにしておいて良かったです」

「うん。帰りは2人に頼ることになりそうだね」


洞窟をさらに進んでいく。

途中、玄武門へ向かう渡り人たちと何度もすれ違った。

4人組。

5人組。

それ以上の集団もいる。


皆、宣告を聞いて急いで始まりの街を出てきたのだろう。


ユースケはすれ違うたびに、分かっている範囲で旅立ちの洞窟の情報を伝えた。

「俺たちが初めて通った時は、この先の最深部にゴブリンジェネラルがいました」


足を止めた渡り人たちの表情が強張る。

「ボスですか?」

「はい。レベル18です」


ユースケは続ける。

「特に金棒を頭上まで振りかぶった時は気をつけてください。床に叩きつけると、周囲まで衝撃が広がります」

「盾で受ければ大丈夫ですか?」

「直撃を防いでもダメージを受けました。振りかぶったら、大きく距離を取った方がいいです」


何人かが真剣な顔で頷いた。

「ありがとうございます」

「助かります」


別の集団にも、同じように注意点を伝えていく。

ゴブリン系には氷属性が有効なこと。

ジェネラルの金棒を振り下ろす攻撃は、直撃を避けるだけでは足りないこと。


攻略方法を知っているだけでも、危険は減らせる。

不安そうな表情の者もいたが、足を止める者はいない。


「やっぱり、みんな動き始めてるね」

シオリが振り返る。

「うん」


90人全員が取り残されているわけではない。

自分たちの力で玄武門を目指せる人は、すでに行動を始めている。

それなら、そのまま進んでもらった方がいい。


ユースケたちが戻る意味があるのは、自力では動くのが難しい人たちだ。


洞窟を抜け、旅立ちの森へ入る。

森でも玄武門へ向かう渡り人たちと何度かすれ違った。


以前なら警戒していたウルフも、今の3人なら大きな脅威にはならない。

無理に戦う必要のない群れは避け、進路を塞ぐ敵だけを倒して先へ進む。


旅立ちの草原まで戻ってくると、見覚えのある街並みが遠くに見えてきた。

「帰ってきたね」

シオリが少し懐かしそうに言う。

「まだそんなに経ってないんだけどね」

「でも、すっごい久しぶりな気がする!」


ヒナも街を見つめる。

「いろいろありましたからね」

ユースケも小さく頷いた。


この街を出た時とは、レベルも装備も大きく変わっている。

3人はそのまま門をくぐった。


ユースケはすぐにヘルパーを開く。


【第27始まりの街】

【現在の渡り人 52名】


「52人…」


玄武門で確認した時は90人だった。

ここへ戻ってくるまでの間に、38人が街を出たことになる。


広場には、まだ多くの渡り人が残っていた。

だが、以前のような雰囲気ではない。


武器を持ったまま不安そうに話す者。

仲間と相談している者。

今にも出発しようとしている者。


宣告の影響は、この街にもはっきりと現れていた。


その中で――。


「大丈夫だって!まだ3日ある!」


少し離れたところから、男性の声が聞こえた。

「まず準備しよう。焦って出て全滅したら意味ないだろ!」


何人かの渡り人を前に、必死に声をかけている。

ユースケはその男性を見て、足を止めた。


「…あれ?」


どこかで見たことがある。

少し考えて、すぐに思い出した。


ゲームが始まったばかりの頃。

初心者案内所の場所を教え、スライムについて話した男性だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。