新たな宣告
リク、カイ、ソラと別れたあと、ユースケはシオリとヒナを見る。
「明日は発掘ポイントのことを鍛冶屋で聞いてみようか」
「あっ、ピッケル!」
シオリが声を上げる。
「朝9時に鍛冶屋の前でどう?」
「オッケー!」
「私も大丈夫です」
ヒナも頷いた。
「じゃあ、また明日」
「おやすみー!」
「おやすみなさい」
シオリとヒナとも別れ、ユースケは宿へ戻った。
◇
部屋へ入ると、ユースケはベッドへ腰を下ろした。
今日はリザードマンの巣窟の地下へ進み、リザードタートルを倒した。
VITとAGIが1ずつ上がっている。
ユースケは修練の指輪へ視線を落とした。
【修練の指輪】
【装飾品】
【効果:獲得経験値が減少する代わりに、行動によるステータス上昇が発生しやすくなる】
「どれくらい変わるんだろう」
気になる。
時刻を確認すると、まだ寝るには早い。
「…少しだけ試してみようかな」
◇
ユースケはアイアングレートソードを手に、玄鉄鉱山周辺でコボルトを狩っていた。
やることは前と同じだ。
両手剣で攻撃し、パワースラッシュも使う。
被弾すればヒールで回復し、MPが減れば休憩する。
無理をせず、それを繰り返した。
そして――。
【HPが1上昇しました】
【MPが1上昇しました】
【STRが1上昇しました】
【DEXが1上昇しました】
【INTが1上昇しました】
「5つか…」
ユースケは修練の指輪を見る。
いつもより多い気はする。
だが、これだけで指輪の効果だと決めるのは早い。
「もう少し使ってみないと分からないね」
それでも、口元は自然と緩んだ。
行動成長を狙うユースケには、やはり相性のいい装備だった。
しばらくして時刻を確認する。
「…2時か。そろそろ戻ろう」
明日は朝9時に鍛冶屋で待ち合わせだ。
ユースケはアイアングレートソードをしまい、玄武門へ戻っていった。
◇
宿へ戻ると、最後に今日のステータスを確認する。
【HP】64+10
【MP】58+9
【STR】21+11
【VIT】20+7
【AGI】27+10
【DEX】27+10
【INT】20+7
【LUK】21+2
「結構伸びたな」
ヘルパーを閉じ、ベッドへ身体を横たえる。
「今度こそ寝よう」
目を閉じると、ユースケはすぐに眠りへ落ちていった。
◇
翌朝。
ユースケが鍛冶屋へ向かうと、シオリとヒナもやってきた。
「おはよー!」
「おはようございます」
「おはよう」
時刻は9時。
3人で店へ入り、鍛冶屋のおじさんに声をかける。
「ピッケルって買えますか?」
「あるぞ。1本50,000Gだ」
「なんだ、売ってるんだ!」
シオリの表情が明るくなる。
「じゃあ、1本ください」
「私も!」
「私もお願いします」
3人ともピッケルを購入した。
【50,000Gを支払いました】
【ピッケルを獲得しました】
「これで掘れるね!」
「昨日の場所へ行ってみようか」
鍛冶屋を出ると、3人はリザードマンの巣窟へ向かった。
◇
道中のリザードマンを倒しながら進み、昨日見つけた発掘ポイントまで戻ってきた。
岩壁の一部には、昨日と同じ採掘マークが表示されている。
「まだある!」
シオリが嬉しそうに岩壁へ近づく。
ユースケもヘルパーを確認した。
この発掘ポイントも、1人5回まで採掘できるようだ。
「じゃあ、掘ってみようか」
「私から!」
シオリがピッケルを取り出す。
「今度こそいいの掘るからね!」
ガンッ!
ガンッ!
ガンッ!
ガンッ!
ガンッ!
5回掘り終え、シオリが取得結果を確認する。
「鉄鉱石が4個と…」
そこで声が止まった。
「どうしたの?」
「なんか魔鉱石ってのが出た!」
「当たりかな。おめでとう」
「次は俺がやってみるよ」
ユースケもピッケルを構えた。
5回の採掘を終え、取得結果を確認する。
「鉄鉱石が5個か」
魔鉱石はない。
「そっか、残念」
「次は私ですね」
ヒナもピッケルを取り出す。
5回掘り終え、結果を確認する。
「あっ」
ヒナが小さく声を上げた。
「鉄鉱石が4個と、魔鉱石が1個です」
「ヒナも出た!」
「魔鉱石って何に使うんだろう?」
シオリがヘルパーで詳細を確認する。
【魔鉱石】
魔力を含んだ特殊な鉱石。
何かの作成素材として使用できる。
「何かの作成素材か」
それ以上の情報は表示されない。
「鍛冶屋のおじさんなら分かるかな?」
「聞いてみよう!」
3人は発掘道具を片付け、玄武門へ戻ることにした。
◇
玄武門へ戻ると、そのまま鍛冶屋へ向かった。
「おじさん、魔鉱石って何に使えるの?」
シオリが尋ねると、鍛冶屋のおじさんが頷いた。
「魔鉱石か。俺なら装飾品に加工できるぞ」
「装飾品?」
「ああ。魔鉱石1個と50,000Gで、好きな能力を1つ、3上げる装飾品が作れる」
「3も!?」
シオリが身を乗り出す。
詳しく聞くと、STR、VIT、AGI、DEX、INT、LUKの中から1つを選べるらしい。
「私はINT!」
「即決だね」
「攻撃魔法を強くしたいもん!」
ヒナも少し考えてから口を開く。
「私もINTにします」
「ヒナも?」
「私は攻撃と回復の両方を使いますから」
2人はそれぞれ魔鉱石と50,000Gを渡した。
しばらくして、加工された指輪を受け取る。
【知恵の指輪】
【装飾品】
【効果:INT+3】
「おおー!」
シオリがさっそく知恵の指輪を装備する。
ヒナも嬉しそうに自分の指輪を確認した。
「これでINTが3上がるんですね」
「魔鉱石が見つかったら、かなり使えそうだね」
ユースケは喜ぶ2人を眺めながら、自分ならどうするか考えた。
装飾品の2枠は、安らぎの指輪と修練の指輪ですでに埋まっている。
今すぐ能力を3上げる装飾品が欲しいわけではない。
それに、鍛冶屋のおじさんは『俺なら装飾品に加工できるぞ』と言った。
以前、別の工房なら属性や特殊効果を付与できることもあると聞いている。
「魔鉱石にも、他の使い道があるかもしれないな」
今度手に入れたら、すぐに加工せず取っておくのもありかもしれない。
「それで、今日はどうする?」
シオリが聞く。
「冒険者ギルドでクエストを見てから決めようか」
「賛成!」
「私もそれでいいです」
3人は鍛冶屋を出た。
その時だった。
突然、空が白く輝いた。
「えっ?」
3人が同時に空を見上げる。
太陽のように高い位置に、巨大な光球が浮かんでいた。
玄武門を歩いていた渡り人たちも、次々と足を止める。
遥か遠くまで続く空が、白い光に包まれていた。
ユースケの表情が変わる。
「あれは…」
ゲーム開始直後に現れた、あの光球だった。
そして――。
玄武大陸全体へ、あの声が響き渡った。
【玄武大陸の渡り人へ告げます】
【3日後に始まりの街は消滅します】




