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玄武の渡り人 ~帰還できるのは、ただ1つの大陸だけ~  作者: かにかま
第2章 玄武門

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神様、仏様、亀様

6人は宝箱の前へ集まった。


「開けよう!」


シオリが待ちきれない様子で宝箱を見る。

ユースケが蓋へ手を伸ばした。


カチッ。


次の瞬間、宝箱から眩しい光が溢れ出す。


「わっ!」


光が6人を包み、それぞれの前に通知が表示された。


【職業に応じた討伐報酬を獲得しました】


「やっぱり前と同じだ」


以前、ゴブリンジェネラルを倒した時も、参加者全員に職業に応じた装備が与えられた。


ユースケは自分の報酬を確認する。


【修練の指輪】

【装飾品】

【効果:獲得経験値が減少する代わりに、行動によるステータス上昇が発生しやすくなる】


「…」


ユースケの視線が止まった。


獲得経験値が減少する。

普通ならデメリットだ。


だが、その代わりに――。


「行動成長しやすくなる?」


もう1度表示を確認する。

間違いない。


「これ、めちゃくちゃいいじゃん」


思わず声が漏れた。


「えっ?」


シオリがユースケを見る。


「経験値減るんでしょ?」

「うん」

「いいの?」

「むしろ欲しかった」


夜も1人で狩りを続けているせいで、ユースケはシオリとヒナよりレベルが少し先に進んでいる。

このまま夜狩りを続ければ、差はさらに広がっていく。


だが、この指輪ならレベルの上がり方を抑えながら、行動成長を狙える。

今のユースケには、かなり相性がいい。


「さすがタートル、亀様だね」

「亀様?」


シオリが首を傾げる。


ユースケは先ほどまで戦っていたリザードタートルを思い出す。


「亀様からの贈り物だね。ありがたや」

「急に玄武を信仰し始めた!」


シオリが笑う。


ユースケも笑いながら、修練の指輪を装備した。

これで装飾品は、安らぎの指輪と修練の指輪。

2つの枠が埋まった。


「じゃあ、次は私!」


シオリが自分の報酬を紹介する。


【魔導のローブ】

【胴装備】

【効果:攻撃魔法の消費MP軽減(小)】


「攻撃魔法のMPが減る!」

「シオリには合ってるね」

「これならもっと範囲魔法を撃てるじゃん!」


シオリはすぐにローブを装備し、嬉しそうに自分の身体を見回した。


「いい感じ!」


その隣で、ヒナも報酬を確認する。


【祈りのローブ】

【胴装備】

【効果:回復魔法の消費MP軽減(小)】


「私は回復魔法ですね」

「ヒールもリジェネも使うから、かなり良さそうだね」

「はい。助かります」


ヒナも祈りのローブを装備した。


「シオリは攻撃で、ヒナは回復だね」

「分かりやすい!」


今度はリクが腕を上げる。


「私はこれ!」


【属性の腕輪】

【装飾品】

【効果:弱点属性で攻撃した時の魔法効果上昇(小)】


「今回みたいに、弱点へウィンドを使った時に強くなるってことかな」

「マジ?それいいじゃん!」


リクがすぐに腕輪を装備する。


続いてカイが報酬を取り出した。


【鷹目の弓】

【ATK:+15】

【効果:弓スキルの消費MP軽減(小)】


「パワーショットやダブルショットを使いやすくなるな」


カイは軽く弦を引き、そのまま鷹目の弓を装備した。


最後はソラだ。


「俺はこれ!」


【連撃の短剣】

【ATK:+14】

【効果:短剣スキルの消費MP軽減(小)】


「よっしゃ!トリプルアタック使いやすくなるじゃん!」


嬉しそうに短剣を振り、感触を確かめる。


ユースケは6人の報酬を見回した。


同じ魔術師でもシオリとリクでは違う。

同じ盗賊でも、ユースケとソラではまったく違う装備だった。


職業だけではなく、それぞれの戦い方まで見られているようにも思える。


ユースケはもう1度、自分の指輪へ視線を落とした。


経験値を減らして、行動成長を狙いやすくする。

人によっては扱いに困る装備かもしれない。


だが――。


「亀様、本当にありがとう」

「まだ言ってる!」


地下にシオリとヒナの笑い声が響いた。


報酬を確認した6人は、来た道を戻ることにした。


途中、先ほど見つけた発掘ポイントの前でシオリが足を止める。


「やっぱり掘れないかぁ…」

岩壁を名残惜しそうに見つめる。


「帰ったら鍛冶屋で聞いてみよう」

「絶対だよ!」


場所をもう1度確認し、6人はリザードマンの巣窟をあとにした。



◇

玄武門へ戻った頃には、昼を大きく過ぎていた。


「お腹すいたー!」

シオリが真っ先に声を上げる。


「今日はボスも倒したし、みんなで何か食べようか」

「打ち上げ!」

「いいじゃん!」


リクもすぐに乗ってくる。

6人はそのまま宿の食堂へ向かった。



◇

料理が並ぶと、シオリがコップを持ち上げた。


「じゃあ、リザードタートル討伐を祝って!」

「乾杯!」


6人でコップを軽く合わせる。


「それにしても、6人で戦うの楽しかったね!」

シオリが料理を食べながら笑う。


「昨日会ったばっかなのに、結構いい感じだったよね」


リクも頷いた。


「そういえば、3人は第28始まりの街から来たんだよね?」


ユースケがリク、カイ、ソラを見る。


「うん。3人とも第28だよ」

「最初から一緒だったの?」

「いや」

カイが首を振った。


「俺たちは全員1人で参加した」

「ゲームが始まってから知り合ったんだ?」

「そうそう!」

リクが頷く。


「話してみたら3人とも高1だったから、それなら一緒にやろうって」

「同じ歳の方が組みやすかったしな」


カイの言葉に、ソラも頷いた。


「ユースケさんたちは第27ですよね?」

「うん。俺とシオリとヒナは第27から来たよ。ただ、3人で参加したわけじゃないけどね」


リクがシオリを見る。


「私とヒナも、ユースケさんとはこっちで知り合ったんだよ」

ユースケは少しだけ箸を止めた。


「俺は大学の友達3人と一緒にFKOを始めたんだけど、登録した大陸は同じでも、始まりの街が別々になったみたいでね」


「今、その3人を探してる」

「名前は?」


カイが聞く。


「タケシ、サクラ、マユ。3人とも俺と同じ大学1年」


リクたちが顔を見合わせ、首を振る。

「名前までは分からないかも」

「そっか」


始まりの街は40か所ある。

簡単に見つかるとは思っていない。


「向こうも俺を探してると思うから、ユースケを探してる人がいたら教えてくれる?」

「もちろん!」


ユースケは頷いた。

「そうだ。連絡できるようにフレンド登録しておこうか」


6人はそれぞれヘルパーを開く。

リク、カイ、ソラから届いた申請を順番に承認した。


【リクとフレンドになりました】

【カイとフレンドになりました】

【ソラとフレンドになりました】


シオリとヒナも3人とのフレンド登録を済ませる。


「あっ、もう1人いるよ」

シオリが声を上げる。


「ランさんの弟!」

「そうだった」

ユースケも3人を見る。


「ランっていう人が、小学生の弟を探してるんだ。シン君っていうんだけど」

リクが箸を止めた。


「第28始まりの街で、小学6年生くらいの子を見かけなかった?」


3人が顔を見合わせる。

「小学生は見た記憶ないかな…」

「分かった、ありがとう」


2つの始まりの街から来た渡り人が、この玄武門で少しずつ合流し始めている。

これから人が増えれば、情報も集まってくるはずだ。


やがて料理もなくなり、6人が席を立つ。


「今日は楽しかったー!」

シオリが大きく伸びをする。


「また一緒に行こうよ!」

「行こう行こう!」


シオリとリクがすぐに盛り上がる。

カイが苦笑し、ソラも笑った。


ユースケも3人を見る。


「また機会があったら一緒にやろう」

「はい!」


食堂を出たところで、リク、カイ、ソラと別れる。


「じゃあ、また!」

「お疲れさまでした!」

「またね!」

3人が手を振りながら離れていく。


ユースケはその背中を見送った。


今回の臨時パーティーは、これで解散。

また一緒に戦うこともあるだろう。

そう思いながら、ユースケは宿へ戻った。


この時はまだ知らなかった。


穏やかだった玄武門の空気が、まもなく大きく変わることを。

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