神様、仏様、亀様
6人は宝箱の前へ集まった。
「開けよう!」
シオリが待ちきれない様子で宝箱を見る。
ユースケが蓋へ手を伸ばした。
カチッ。
次の瞬間、宝箱から眩しい光が溢れ出す。
「わっ!」
光が6人を包み、それぞれの前に通知が表示された。
【職業に応じた討伐報酬を獲得しました】
「やっぱり前と同じだ」
以前、ゴブリンジェネラルを倒した時も、参加者全員に職業に応じた装備が与えられた。
ユースケは自分の報酬を確認する。
【修練の指輪】
【装飾品】
【効果:獲得経験値が減少する代わりに、行動によるステータス上昇が発生しやすくなる】
「…」
ユースケの視線が止まった。
獲得経験値が減少する。
普通ならデメリットだ。
だが、その代わりに――。
「行動成長しやすくなる?」
もう1度表示を確認する。
間違いない。
「これ、めちゃくちゃいいじゃん」
思わず声が漏れた。
「えっ?」
シオリがユースケを見る。
「経験値減るんでしょ?」
「うん」
「いいの?」
「むしろ欲しかった」
夜も1人で狩りを続けているせいで、ユースケはシオリとヒナよりレベルが少し先に進んでいる。
このまま夜狩りを続ければ、差はさらに広がっていく。
だが、この指輪ならレベルの上がり方を抑えながら、行動成長を狙える。
今のユースケには、かなり相性がいい。
「さすがタートル、亀様だね」
「亀様?」
シオリが首を傾げる。
ユースケは先ほどまで戦っていたリザードタートルを思い出す。
「亀様からの贈り物だね。ありがたや」
「急に玄武を信仰し始めた!」
シオリが笑う。
ユースケも笑いながら、修練の指輪を装備した。
これで装飾品は、安らぎの指輪と修練の指輪。
2つの枠が埋まった。
「じゃあ、次は私!」
シオリが自分の報酬を紹介する。
【魔導のローブ】
【胴装備】
【効果:攻撃魔法の消費MP軽減(小)】
「攻撃魔法のMPが減る!」
「シオリには合ってるね」
「これならもっと範囲魔法を撃てるじゃん!」
シオリはすぐにローブを装備し、嬉しそうに自分の身体を見回した。
「いい感じ!」
その隣で、ヒナも報酬を確認する。
【祈りのローブ】
【胴装備】
【効果:回復魔法の消費MP軽減(小)】
「私は回復魔法ですね」
「ヒールもリジェネも使うから、かなり良さそうだね」
「はい。助かります」
ヒナも祈りのローブを装備した。
「シオリは攻撃で、ヒナは回復だね」
「分かりやすい!」
今度はリクが腕を上げる。
「私はこれ!」
【属性の腕輪】
【装飾品】
【効果:弱点属性で攻撃した時の魔法効果上昇(小)】
「今回みたいに、弱点へウィンドを使った時に強くなるってことかな」
「マジ?それいいじゃん!」
リクがすぐに腕輪を装備する。
続いてカイが報酬を取り出した。
【鷹目の弓】
【ATK:+15】
【効果:弓スキルの消費MP軽減(小)】
「パワーショットやダブルショットを使いやすくなるな」
カイは軽く弦を引き、そのまま鷹目の弓を装備した。
最後はソラだ。
「俺はこれ!」
【連撃の短剣】
【ATK:+14】
【効果:短剣スキルの消費MP軽減(小)】
「よっしゃ!トリプルアタック使いやすくなるじゃん!」
嬉しそうに短剣を振り、感触を確かめる。
ユースケは6人の報酬を見回した。
同じ魔術師でもシオリとリクでは違う。
同じ盗賊でも、ユースケとソラではまったく違う装備だった。
職業だけではなく、それぞれの戦い方まで見られているようにも思える。
ユースケはもう1度、自分の指輪へ視線を落とした。
経験値を減らして、行動成長を狙いやすくする。
人によっては扱いに困る装備かもしれない。
だが――。
「亀様、本当にありがとう」
「まだ言ってる!」
地下にシオリとヒナの笑い声が響いた。
報酬を確認した6人は、来た道を戻ることにした。
途中、先ほど見つけた発掘ポイントの前でシオリが足を止める。
「やっぱり掘れないかぁ…」
岩壁を名残惜しそうに見つめる。
「帰ったら鍛冶屋で聞いてみよう」
「絶対だよ!」
場所をもう1度確認し、6人はリザードマンの巣窟をあとにした。
◇
玄武門へ戻った頃には、昼を大きく過ぎていた。
「お腹すいたー!」
シオリが真っ先に声を上げる。
「今日はボスも倒したし、みんなで何か食べようか」
「打ち上げ!」
「いいじゃん!」
リクもすぐに乗ってくる。
6人はそのまま宿の食堂へ向かった。
◇
料理が並ぶと、シオリがコップを持ち上げた。
「じゃあ、リザードタートル討伐を祝って!」
「乾杯!」
6人でコップを軽く合わせる。
「それにしても、6人で戦うの楽しかったね!」
シオリが料理を食べながら笑う。
「昨日会ったばっかなのに、結構いい感じだったよね」
リクも頷いた。
「そういえば、3人は第28始まりの街から来たんだよね?」
ユースケがリク、カイ、ソラを見る。
「うん。3人とも第28だよ」
「最初から一緒だったの?」
「いや」
カイが首を振った。
「俺たちは全員1人で参加した」
「ゲームが始まってから知り合ったんだ?」
「そうそう!」
リクが頷く。
「話してみたら3人とも高1だったから、それなら一緒にやろうって」
「同じ歳の方が組みやすかったしな」
カイの言葉に、ソラも頷いた。
「ユースケさんたちは第27ですよね?」
「うん。俺とシオリとヒナは第27から来たよ。ただ、3人で参加したわけじゃないけどね」
リクがシオリを見る。
「私とヒナも、ユースケさんとはこっちで知り合ったんだよ」
ユースケは少しだけ箸を止めた。
「俺は大学の友達3人と一緒にFKOを始めたんだけど、登録した大陸は同じでも、始まりの街が別々になったみたいでね」
「今、その3人を探してる」
「名前は?」
カイが聞く。
「タケシ、サクラ、マユ。3人とも俺と同じ大学1年」
リクたちが顔を見合わせ、首を振る。
「名前までは分からないかも」
「そっか」
始まりの街は40か所ある。
簡単に見つかるとは思っていない。
「向こうも俺を探してると思うから、ユースケを探してる人がいたら教えてくれる?」
「もちろん!」
ユースケは頷いた。
「そうだ。連絡できるようにフレンド登録しておこうか」
6人はそれぞれヘルパーを開く。
リク、カイ、ソラから届いた申請を順番に承認した。
【リクとフレンドになりました】
【カイとフレンドになりました】
【ソラとフレンドになりました】
シオリとヒナも3人とのフレンド登録を済ませる。
「あっ、もう1人いるよ」
シオリが声を上げる。
「ランさんの弟!」
「そうだった」
ユースケも3人を見る。
「ランっていう人が、小学生の弟を探してるんだ。シン君っていうんだけど」
リクが箸を止めた。
「第28始まりの街で、小学6年生くらいの子を見かけなかった?」
3人が顔を見合わせる。
「小学生は見た記憶ないかな…」
「分かった、ありがとう」
2つの始まりの街から来た渡り人が、この玄武門で少しずつ合流し始めている。
これから人が増えれば、情報も集まってくるはずだ。
やがて料理もなくなり、6人が席を立つ。
「今日は楽しかったー!」
シオリが大きく伸びをする。
「また一緒に行こうよ!」
「行こう行こう!」
シオリとリクがすぐに盛り上がる。
カイが苦笑し、ソラも笑った。
ユースケも3人を見る。
「また機会があったら一緒にやろう」
「はい!」
食堂を出たところで、リク、カイ、ソラと別れる。
「じゃあ、また!」
「お疲れさまでした!」
「またね!」
3人が手を振りながら離れていく。
ユースケはその背中を見送った。
今回の臨時パーティーは、これで解散。
また一緒に戦うこともあるだろう。
そう思いながら、ユースケは宿へ戻った。
この時はまだ知らなかった。
穏やかだった玄武門の空気が、まもなく大きく変わることを。




