リザードタートル(前編)
翌朝。
9時になる少し前、ユースケは冒険者ギルドの前へ向かった。
すでにシオリとヒナ、リク、カイ、ソラの5人が集まっている。
「おはよう」
「おはよっ!」
「おはようございます!」
それぞれ挨拶を交わす。
シオリがすぐにユースケの装備へ目を向けた。
「あっ、鎧変わってる!」
「昨日、シルバーアーマーを買ったよ」
「私たちも装備更新したよ!」
見ると、5人とも昨日より装備が良くなっている。
全員Lv21以上。
昨日1日狩りを続けた成果もあり、地下へ進む準備はできていた。
「じゃあ、行こうか」
「うん!」
6人は玄武門を出て、リザードマンの巣窟へ向かった。
◇
リザードマンの巣窟へ到着すると、6人は昨日と同じように1階を進んでいった。
途中で何度かリザードマンと遭遇したが、昨日散々戦った相手だ。
カイが先に敵を見つけ、ユースケが引きつける。
ソラが側面から攻撃し、シオリとリクが後ろから魔法を放つ。
ヒナは前衛のHPを見ながら支援する。
昨日よりも声を掛け合う回数は少ない。
それでも、それぞれが自然に動いていた。
戦闘を終え、地下へ続く階段を目指して再び歩き始める。
しばらく進んだところで、シオリが突然足を止めた。
「ねえ、ちょっと待って!」
5人が振り返る。
「どうしたの?」
「ここ!」
シオリが通路脇の岩壁を指差す。
「ここだけ、ちょっと色違わない?」
ユースケも岩壁を見る。
確かに、シオリが指差した部分だけ周囲とは色合いが違う。
「これって…」
どこかで見たことがある。
ユースケが近づいてヘルパーを確認すると、岩壁の上に見覚えのある採掘マークが表示された。
「発掘ポイントだ」
「やっぱり!」
シオリの目が輝く。
「掘ろう!」
すぐにアイテムボックスを開いたシオリだったが、その動きが止まった。
「…あれ?」
「どうしたの?」
「ピッケルがない」
ユースケも自分のアイテムボックスを確認する。
当然、入っていない。
玄鉄鉱山で使ったピッケルは、鉱石発掘クエストで冒険者ギルドから借りたものだ。
クエストを終えた時に返却している。
「そっか。あれ借り物だったね」
「せっかく見つけたのに!」
シオリが残念そうに岩壁を見る。
リクも発掘ポイントを覗き込んだ。
「ピッケルって買えないの?」
「どうだろう」
今まで武器屋や道具屋で見た記憶はない。
ユースケは少し考える。
「帰ったら鍛冶屋で聞いてみようか」
「あのおじさんなら知ってそう!」
シオリがすぐに顔を上げた。
「そうだね」
今は地下攻略が先だ。
ユースケは岩壁の特徴を覚えておく。
「今後、また来よう」
「絶対だよ!」
6人は発掘ポイントをあとにした。
◇
地下へ続く階段へたどり着くと、6人は足を止めた。
階段の先は薄暗く、下までは見通せない。
「ここからだね」
ユースケはシルバーソードと盾を構える。
ソラも短剣を抜き、カイが弓へ手をかけた。
「行こうか」
6人は慎重に階段を下りていった。
◇
階段を下りきった先には、大きな空間が広がっていた。
その中央に、巨大な魔物がいる。
「何あれ…」
シオリが足を止めた。
太い手足に、大きな身体。
背中には硬そうな甲羅があり、その周囲には弓を構えたリザードアーチャーが2体いる。
ユースケはすぐにアナライズを使った。
【リザードタートル】
【レベル21】
【弱点属性:風】
【耐性属性:氷】
【状態異常耐性:なし】
「弱点は風!氷には強い!状態異常耐性はなし!」
「了解!」
シオリとリクが杖を構える。
その直後、リザードタートルがこちらを向いた。
「グォォォッ!」
低い咆哮が空間に響く。
同時に、2体のリザードアーチャーが弓を引いた。
「来るよ!」
矢が飛んでくる。
6人が左右へ散った。
「先にアーチャー!リクとカイは右!シオリは俺と左!」
ユースケは続けて指示を飛ばす。
「ソラはタートルのヘイトを取って!絶対に無理はしないでね!」
「はい!」
カイが右側のリザードアーチャーへ弓を向ける。
「ダブルショット!」
2本の矢が続けて突き刺さる。
「ウィンド!」
リクの風の刃が直撃した。
リザードアーチャーが大きくよろめき、そのまま光の粒となって消える。
反対側では、シオリが杖を構えた。
「ウィンド!」
風の刃がリザードアーチャーを切り裂く。
ユースケは素早く距離を詰め、シルバーソードを振るった。
「トリプルスラッシュ!」
3連続の斬撃が命中する。
残ったリザードアーチャーも光の粒となって消えた。
「よし!」
その間、ソラはリザードタートルへ近づき、短剣で脇腹を斬りつけていた。
リザードタートルの巨大な前脚が振るわれる。
ブォン!
ソラは素早く後ろへ下がり、攻撃をかわした。
「ソラ、そのまま避けながら2人で挟もう!」
「はい!」
ユースケもリザードタートルへ向かう。
しかし、その瞬間。
リザードタートルが大きく息を吸い込んだ。
口元に白い冷気が集まっていく。
「何か来る!」
カイが声を上げる。
「ブレスだ!みんなこっち!」
ユースケは5人の方へ走り、盾を構える。
シオリたちもすぐにユースケの周囲へ集まった。
「シールドウォール!」
淡い光がユースケを中心に広がり、周囲の5人を包み込む。
次の瞬間。
ゴォォォッ!
白い冷気が一気に吐き出された。
冷気が6人を飲み込む。
「くっ!」
全身を凍えるような感覚が走る。
HPも減っている。
だが、想像していたほどではない。
周囲の5人も同じだった。
「早速、役に立ったね」
シオリが笑う。
冷気が消える。
ユースケはすぐに前へ出た。
「アーマーブレイク!」
シルバーソードがリザードタートルの身体を斬りつける。
【リザードタートルの防御力が低下しました】
「ウィンド!」
シオリの風の刃が直撃する。
少し遅れて、リクも杖を向けた。
「ウィンド!」
もう1つの風の刃が命中し、リザードタートルが大きく身体を揺らした。
「やっぱり風魔法は効いてる!」
ユースケとソラが左右へ分かれる。
リザードタートルがユースケへ前脚を振れば避ける。
ソラへ噛みつこうとすれば、その反対側から攻撃する。
2人で注意を引きつけながら、後衛が攻撃を重ねていった。
しばらくすると――。
「グォォッ!」
リザードタートルが突然動きを止めた。
「何?」
頭と手足を引っ込めていく。
巨大な身体が、甲羅の中へ完全に収まった。
「甲羅にこもった!」
ソラが短剣を振り下ろす。
ガキンッ!
刃が甲羅に弾かれた。
「硬っ!」
カイの矢も甲羅へ当たるが、ほとんど刺さらない。
「防御モードかな」
ユースケが様子を見る。
その時だった。
ヒュッ!
背後から風を切る音がした。
「えっ?」
ドスッ!
矢がヒナの肩へ突き刺さる。
ほぼ同時に、もう1本。
「くっ!」
カイの脇腹にも矢が刺さった。
2人のHPが一気に減る。
「またいる!」
シオリが振り返る。
部屋の奥に、リザードアーチャーが2体現れていた。
さっき倒したはずの取り巻きだ。
「再出現するのか!」
完全にリザードタートルへ意識を向けていた。
その隙を狙われた。
だが、ヒナの反応は早かった。
自分の肩に矢が刺さったまま、すぐにカイへ杖を向ける。
「ヒール!」
柔らかな光がカイを包み、減ったHPが回復していく。
「ありがとう!」
ユースケとシオリもすぐにヒナへヒールを使う。
「ヒール!」
「ヒール!」
2人の回復魔法が続けてヒナを包む。
大きく減っていたHPが戻っていった。
「ありがとうございます!」
その間にも、リザードアーチャーが次の矢をつがえる。
「1体やるよ!」
ソラが走った。
リクも同じ敵へ杖を向ける。
「ウィンド!」
風の刃がリザードアーチャーへ直撃する。
「トリプルアタック!」
ソラの短剣が3回連続で閃いた。
斬撃を受けたリザードアーチャーが光の粒となって消える。
「あと1体!」
残ったリザードアーチャーが弓を構えた。
ユースケは距離を詰めながら盾を構える。
「シールドノック!」
ガンッ!
盾を打ち鳴らす。
リザードアーチャーの視線がユースケへ向いた。
矢が放たれる。
ユースケは盾で受け止めた。
その隙に、ソラとカイが攻撃を重ねる。
短剣が斬りつけ、矢が突き刺さる。
少し遅れて、リクの魔法も飛んだ。
集中攻撃を受けたリザードアーチャーは耐えきれず、光の粒となって消えた。
「よし!」
その時。
中央で甲羅にこもっていたリザードタートルが、ゆっくりと動き始めた。




