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玄武の渡り人 ~帰還できるのは、ただ1つの大陸だけ~  作者: かにかま
第2章 玄武門

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にんげんっていいな

翌朝。


ユースケは目を覚ますと、しばらく天井を見つめていた。


「…」


昨晩の出来事が鮮明に蘇ってくる。


90%。

95%。

85%。


「考えるのはやめよう」


思い出すだけで、また疲れてきた。


ユースケはベッドから起き上がり、宿の食堂へ向かった。



食堂へ入ると、シオリとヒナはすでに朝食を食べ始めていた。


ユースケも同じテーブルに座る。


「おはよう」

「おはよっ!」

「おはようございます」


2人が挨拶を返す。


「そういえば!」

シオリが顔を上げた。


「昨日、お昼寝したあとにヒナと街の周りでレベル上げして、2人ともレベル20になったよ!」

「そうなんだ。おめでとう」

「ありがとうございます」


ヒナが嬉しそうに微笑む。


「ユースケさんは昨日、何してたの?」

「コボルトを相手に短剣の熟練度上げかな。レベルも22になったよ」


「やっぱり!」

シオリが笑う。


「短剣はどうだった?」

「だいぶ慣れてきたかな。熟練度もLv2になったよ」

「おお!新しいスキルは?」

「ダブルアタック」

「どんなの?」

「素早い2連撃を放つスキルだね」

「盗賊っぽい!」

シオリが楽しそうに笑う。


ユースケは少し間を置いた。

「…あと、ポイズンダガーも+3になったよ」

「えっ!もう強化したの?」

「うん」


「すごいじゃん!」

シオリが目を輝かせる。


その隣で、ヒナがユースケの顔をじっと見ていた。


「ユースケさん、何かあったんですか?」

「…分かる?」

「なんとなく」


ユースケは少し考えてから口を開く。


「成功率90%を失敗した」

「え?」

シオリが目を丸くする。


「その次の95%も失敗した」

「ええっ!?」

「そのあと85%も失敗した」

「うそでしょ!?」

「本当」


ユースケは遠い目をした。


ヒナも苦笑する。

「それは辛かったですね…」


「90%、95%、85%を続けて外す確率、0.075%だよ」


「…」


シオリが少し考える。


「そっか」

そして、顔を上げた。


「じゃあ、逆にすごくない?」

「何が?」

「そんな低い確率を引いたんだから!」


シオリが笑顔で頷く。

「ユースケさん、運がいいね!」

「それは違うと思う」

ヒナが小さく笑う。


「でも、最終的には+3になったんですよね?」

「うん」

「それなら、結果としては悪くなかったんじゃないですか?」

「まあ、結果だけ見ればね」

ユースケも苦笑する。


「じゃあ問題なし!」

シオリが元気よく言う。


「今日はリザードマンの巣窟に行くんでしょ?」

「うん」

「だったら昨日のことは忘れよ!今日は新しい人たちと一緒に冒険できるんだよ!」


ヒナも穏やかに微笑む。

「今日は今日で、楽しみなことがありますから」


ユースケは2人を見る。


シオリはいつも通り明るい。

ヒナも優しく笑っている。


昨日の強化失敗を、まだ引きずっていた。

それを年下の2人に励まされている。


「…何やってるんだろうな、俺」


思わず笑いが漏れた。


「どうしたの?」

「いや、何でもない」


ユースケは残っていた朝食を口に運ぶ。

不思議と、昨日までの重たい気分が消えていた。


人間っていいな。

そんな言葉が、ふと頭に浮かぶ。


「ありがとう」


「どういたしまして!」

シオリが満面の笑みを浮かべる。


「どういたしまして」

ヒナも優しく微笑んだ。



朝食を終え、3人は宿を出た。


「それじゃあ、冒険者ギルドへ行こうか」

「うん!」

「はい」


歩き始めると、シオリが楽しそうに話しかけてくる。


「どんな人が来てるかな?強い人だったらいいね!」

「シオリ、レベルだけで判断しちゃ駄目だよ」

「分かってるって!」

「本当?」

「本当だよ!」


2人のやり取りを聞きながら、ユースケは笑う。

しばらく歩いたところで、ふと思い出した。


「そういえば、2人ともレベル20になったんだよね」

「うん!」

「はい」

「じゃあ、新しいスキルも覚えた?」


「もちろん!」

シオリが嬉しそうに答える。


「私は【プッシュ】っていうスキルを覚えたよ!」

「プッシュ?」

「魔力で相手を吹き飛ばすんだって!」


シオリが両手を前へ突き出す。


「消費MPは5!」

「敵との距離を取れるなら、かなり便利そうだね」

「でしょ?」

シオリが得意げに笑う。


「ヒナは?」

「私は【プロテクション】です」

「どんなスキル?」

「味方1人のVITを上昇させます。効果時間は30分で、消費MPは8です」

「VITアップか」


ユースケは少し考える。

「前衛に使えば、かなり役立ちそうだね」

「はい。これからは戦闘前に使えそうです」


ユースケは2人を見る。

シオリは敵との距離を作るスキル。

ヒナは味方の耐久力を上げるスキル。


「2人とも、それぞれの役割に合ったスキルだね」

「じゃあ、今日はプッシュを試したい!」


シオリが楽しそうに言う。


「ダンジョンで使える相手がいたらいいな!」

「シオリ、まずは安全第一だよ」

「分かってるって!」

「本当?」

「もう、ヒナは心配しすぎ!」

シオリが頬を膨らませる。


ユースケは笑った。

「まあ、実戦で試してみるのは大事だね」

「でしょ!」

「ただ、無理はしないようにね」

「はーい!」


3人はそんな話をしながら、冒険者ギルドへ向かった。

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