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玄武の渡り人 ~帰還できるのは、ただ1つの大陸だけ~  作者: かにかま
第2章 玄武門

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クホホ

ユースケは玄武門を出ると、街の周辺を歩いていた。

今日の目的は、短剣の熟練度を上げることだ。


ユースケはポイズンダガーを軽く振る。

片手剣よりも軽く、その分だけ素早く動かせる。


「やっぱり、取り回しは良さそうだね」


ユースケは短剣を構え直す。

盗賊の得意武器。その使い勝手を確かめるには、実際に戦ってみるのが一番早い。


「ちょうどいい相手がいるといいんだけど」


しばらく歩いていると、少し離れた場所にモンスターの姿が見えた。


「…いた」


二足歩行する獣。

犬のような顔に、粗末な長剣と盾。


「コボルトか」


ユースケはヘルパーを確認する。


【コボルト】

【レベル17】


以前にも戦った相手だ。

アナライズで弱点も確認している。


弱点は火属性。

耐性属性はなし。

状態異常耐性もなかった。


「今回はポイズンダガーだけで戦ってみよう」

ユースケが1歩前へ出ると、コボルトもこちらに気付いた。


「ギャウ!」

長剣を構え、走ってくる。


コボルトが長剣を振り下ろす。

ユースケは横へ動いてかわし、そのまま懐へ入り込んだ。


ザシュッ!


短剣がコボルトの脇腹を斬り裂く。

さらに手首を返し、反対側からもう1撃。


ザシュッ!

「この速さ…いいね」


1撃の重さは片手剣に劣る。

だが、次の攻撃へ移るまでが速い。


コボルトが盾を構えた。

ユースケは正面から攻撃せず、横へ回り込む。


「こっちだね」


コボルトが振り向いた瞬間、ユースケは一気に踏み込んだ。

短剣がコボルトの身体を斬り裂く。


【コボルトに毒状態を付与しました】


「入った」


ユースケはすぐに距離を取る。

コボルトが苦しそうに身をよじった。


「毒も問題なく入るね」


ユースケは動きを観察する。

素早く動き、相手の隙を狙う。一度攻撃したら、深追いせずに離れる。


短剣の戦い方が少しずつ見えてきた。


毒で弱ったコボルトが長剣を振り上げる。

ユースケは横へかわし、そのまま背後へ回り込んで短剣を振る。


ザシュッ!


コボルトが光の粒となって消えていった。


「だいぶ感覚が分かってきたかな」


ユースケは手元の短剣を見る。

攻撃力では片手剣に劣るが、攻撃の回転が速い。そして、ポイズンダガーには毒がある。


「強い相手なら、毒を入れてから戦うのもありそうだね」


ユースケは小さく頷いた。


その後も街の周辺を歩き回り、コボルトを探して戦い続ける。


攻撃するときは深く踏み込みすぎない。

相手の攻撃をかわしたら、そのまま懐へ入る。

1度斬りつけたら、すぐに距離を取る。

盾を構えられたら、正面から攻めずに横へ回る。


何度も繰り返すうちに、短剣が少しずつ手に馴染んでいった。


短剣を振る速度。

相手との距離。

攻撃するタイミング。


最初は意識していた動きも、次第に自然とできるようになる。


そして、辺りが暗くなり始めた頃。


【短剣熟練度がLv2になりました】

【ダブルアタックを習得しました】


「やった、ピコーンきた」


ユースケはすぐに詳細を確認する。


【ダブルアタック】

消費MP:3

素早い2連撃を放つ。


「早速、試してみよう」


次のコボルトを見つけると、ユースケは一気に距離を詰める。


「ダブルアタック!」


短剣を素早く振り抜く。

直後、手首を返して反対側からもう1撃。


ザシュッ!

ザシュッ!


「いいね」

通常攻撃よりも明らかに速い2連撃だった。


その後も何度かダブルアタックを試し、気付けば周囲はすっかり暗くなっていた。


「今日はこのくらいかな」

ユースケは玄武門へ戻ることにした。


歩きながらステータスを確認する。

レベルは22。さらにSTRとAGIも1ずつ上昇していた。


【名前】ユースケ

【職業】盗賊

【レベル】22

【HP】62+7

【MP】55+7

【STR】20+9

【VIT】20+5

【AGI】26+9

【DEX】26+9

【INT】20+6

【LUK】20+2



玄武門へ戻ったユースケは、そのまま鍛冶屋を訪れていた。


店に入ると、鍛冶屋の親父がユースケに気付く。


「今日は大魔導士の嬢ちゃんは不在か?」

「眠たいらしくて、今は別行動してます」

「ガハハ!寝る子は育つってな」


鍛冶屋の親父が豪快に笑う。


「それで、兄ちゃんも強化か?」

「はい。こいつをお願いします」


ユースケはポイズンダガーを差し出した。

鍛冶屋の親父の表情が変わる。


「+1は鉄鉱石1個と10,000Gだ」

「お願いします」


ユースケは鉄鉱石と代金を渡した。


カンッ!

カンッ!

カンッ!


「成功だ」

「ありがとうございます。続けてお願いします」

鍛冶屋の親父が頷く。


「次は+2だ。成功率は90%。本当にいいか?」

「お願いします!」


鉄鉱石2個と20,000Gを渡す。


カンッ!

カンッ!

カンッ!


「クッ、失敗だ」

「なっ…」


90%を外した。

ユースケは少し固まったが、すぐに鉄鉱石を取り出す。


「続けてお願いします」

「すまねぇ。次の成功率は95%だ」


再び鉄鉱石2個と20,000Gを渡す。


カンッ!

カンッ!

カンッ!


「クッ、失敗だ」

「なっ…」


今度こそ、ユースケの手が止まった。


90%。

そして95%。


2回続けて失敗した。


「…続けてお願いします」

「安心しな。次は100%だ」


さらに鉄鉱石2個と20,000Gを渡す。


カンッ!

カンッ!

カンッ!


「成功だ」

「ありがとうございます…」

ようやくポイズンダガーが+2になった。


ユースケは少し考える。

残る鉄鉱石は8個。

+4にするには足りない。


次の成功率は85%のはずだ。


10%、5%、15%の失敗を続けて引く可能性は0.075%しかない。


大丈夫だ。


「続けてお願いします」

「+3の成功率は85%だ。いいんだな?」

「はい、大丈夫です」


鉄鉱石4個と40,000Gを渡す。


カンッ!

カンッ!

カンッ!


「クッ、失敗だ」


「……」


何が大丈夫だ。

何が0.075%だ。

何が「クッ」だ。

クホりすぎだろう。


MMOの装備強化は基本的に沼だが、失敗しても次回の成功率が上がるなら、これは比較的ストレスの少ない仕様かもしれない。


とか言ってた自分を殴りたい。

ストレスしかないぞ。


落ち着け。

落ち着くんだ、ユースケ。


ここは玄武大陸。

亀様、どうかお力添えをお願いします。


ユースケは深呼吸し、鍛冶屋の親父を真っ直ぐ見る。


「気にしないでください。続けてお願いします」

「すまねぇ。次の成功率は90%だ」


ユースケは最後の鉄鉱石4個と40,000Gを渡す。


カンッ!

カンッ!

カンッ!


「成功だ」

「よかった…」


ユースケは安心のあまり膝から崩れるorz


「亀様、ありがとうございます」


こうしてユースケは、鉄鉱石15個と150,000Gを引き換えに、ポイズンダガー+3を手に入れた。


鍛冶屋の親父に礼を言い、宿屋へ戻る。

部屋に入ると、そのままベッドへ倒れ込んだ。


「今日はもう何も考えたくない…」


ユースケは目を閉じ、そのまま眠りについた。

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