弱点特攻
湖の近くで、ダンとサイが釣りを始めてからしばらく。
ユースケたちは、湖の周囲を警戒していた。
その時だった。
「…来る」
ユースケが森へ視線を向ける。
木々の間から、2つの影がこちらへ近づいてきていた。
二足歩行するトカゲのようなモンスター。手には長剣を持っている。
「リザードマンかな?」
ユースケはすぐにアナライズを使う。
【リザードマン】
【レベル19】
【弱点属性:風】
【耐性属性:氷】
【状態異常耐性:なし】
「弱点は風。氷には耐性があるみたいだね」
「距離もあるし、ウィンドでいくね」
シオリが杖を構える。
「ウィンド!」
風の刃がリザードマンへ飛んでいく。
直撃。そのままリザードマンが光の粒となって消えた。
「よし!」
シオリが嬉しそうに笑う。
残った1匹がこちらへ走ってくる。
「ウィンド!」
今度はヒナの風の刃が直撃した。
リザードマンが大きくよろめく。
「あと少しですね」
ユースケも杖を向ける。
「ウィンド!」
風の刃が命中し、リザードマンが光の粒となって消えた。
【リザードマンを討伐しました】
【リザードマンの鱗を獲得しました】
「シオリのウィンドならワンキルか」
「ヒナのウィンドでも、ほとんど削れてたね」
シオリが自分の杖を見る。
「やっぱり+4って大きい?」
「弱点も突いてるし、たぶん両方だね」
その時。
「おーい!」
湖からダンの声が聞こえてきた。
「釣れたよ!」
「今行きます!」
3人は湖へ戻る。
ダンの竿には、大きな魚が掛かっていた。
「おお!」
シオリが目を輝かせる。
「大きいですね」
「そうだろう?」
ダンが嬉しそうに魚を持ち上げる。
「今日は調子がいいみたいだ」
サイも笑顔で魚を見ている。
「この調子なら、たくさん釣れそうですね」
ユースケたちは釣果を確認すると、再び周囲の警戒へ戻った。
◇
それからしばらくして。
「また来たよ」
ユースケが森へ視線を向ける。
今度は3匹のリザードマンが近づいてきていた。
「またリザードマンだね」
「じゃあ、私がやる!」
シオリが杖を構える。
「ウィンド!」
風の刃が先頭のリザードマンを切り裂く。
そのまま光の粒となって消えた。
「ふふっ!」
シオリが満足そうに笑う。
残った2匹も、ユースケとヒナがウィンドを中心に攻撃していく。
ほどなくして戦闘が終わった。
その直後。
【杖熟練度がLv2になりました】
【詠唱短縮Ⅰを習得しました】
「よし、ピコーンだ」
ユースケが思わず声を上げる。
「久しぶりだね、それ」
シオリが笑う。
ユースケは習得したスキルを確認した。
【詠唱短縮Ⅰ】
詠唱時間を10%短縮する。
「10%か」
「少しでも早くなるなら便利ですね」
「うん。杖で魔法を使うなら役立ちそうだね」
その後も、リザードマンは何度か姿を現した。
3匹。次は2匹。そして、また3匹。
そのたびにユースケたちは風属性の魔法を中心に迎え撃つ。
「このくらいの間隔なら、MPも問題なさそうだね」
どの戦闘も短時間で終わっていた。
ユースケは、リザードマンたちが現れる方向を見る。
「どうしたの?」
シオリが尋ねる。
「ずっと同じ方向から来てるんだよね」
森の奥へ視線を向ける。
「向こうに何かあるのかもしれない」
「巣とかですかね?」
「可能性はありそうだね」
ユースケは少し考える。
ここから遠く離れるつもりはない。場所を確認するだけなら、それほど時間もかからないだろう。
「少しだけ見てこようかな」
「1人で大丈夫?」
シオリが心配そうに聞く。
「近くまで行って、様子を見るだけだよ。危なそうならすぐ戻る」
ユースケは2人を見る。
「ここは任せても大丈夫?」
「もちろん!」
「ダンさんたちは私たちが守ります」
ヒナも頷く。
「何かあったらチャットで教えてね」
「うん」
ユースケは瞬足を発動し、リザードマンが現れた方向へ走り出した。
◇
しばらく森を進むと、木々の間から岩場が見えてきた。
「…あれかな」
ユースケは足を止める。
少し離れた場所に、岩場に囲まれた洞窟があった。
その周囲には2匹のリザードマンがいる。
ユースケは木の陰から様子を窺った。
しばらくすると、洞窟の近くにいた1匹が湖の方向へ歩き始める。
「やっぱり、こっちから来てるのかもしれないね」
断定はできない。
だが、可能性は高そうだ。
リザードマンが離れた隙に、ユースケは洞窟の入口近くまで移動する。
ヘルパーを確認した。
【リザードマンの巣窟】
【推奨レベル21】
「なるほど」
やはり、ただの洞窟ではなかった。
推奨レベルは21。今のユースケと同じだ。
「今日は護衛中だし、入る必要はないね」
場所だけ覚え、ユースケはすぐに湖へ戻ることにした。
◇
「ただいま」
「おかえり!」
シオリが駆け寄ってくる。
「どうだったんですか?」
ヒナも尋ねる。
「洞窟があったよ。リザードマンの巣窟って場所みたいだね」
「じゃあ、あそこから来てたんだ」
「たぶんね」
ユースケは湖を見る。
ダンとサイは、今も楽しそうに釣りを続けている。
「今回は護衛だから、今は攻略しなくていいと思う」
「来たら倒せばいいんだよ!」
シオリが杖を構える真似をする。
「そういうこと」
ユースケは笑った。
◇
その後も、リザードマンは何度か湖へやって来た。
「ウィンド!」
シオリの魔法が弱点を捉え、リザードマンを一撃で倒す。
ユースケとヒナも風魔法で攻撃し、残った相手を倒していく。
時にはユースケが弓を使うこともあった。
現れる方向も分かっている。
3人はダンとサイに近づかれる前に、危なげなく迎撃を続けた。
そして――。
「大きいよ!」
湖からダンの嬉しそうな声が響く。
ユースケがそちらを見る。
「楽しそうですね」
ヒナが笑った。
やがて、ダンが釣り竿を置く。
「もうそろそろ十分かな」
サイも頷き、2人で釣り道具を片付け始めた。
「皆さんのおかげで、安心して釣りを楽しめました」
サイがユースケたちへ頭を下げる。
「いえ、これが俺たちの仕事ですから」
「それでも、本当に助かりました」
サイは釣った魚の中から3匹を取り出した。
「これは皆さんに差し上げます」
「え?」
ユースケが魚を見る。
「いいんですか?」
「もちろんです」
サイが笑顔で頷く。
「これは玄鱗魚という魚なんです」
「玄鱗魚?」
シオリが魚を覗き込む。
「高級魚で、とても美味しいんだよ」
ダンが嬉しそうに説明する。
「玄武門の食堂でも調理してもらえますよ」
「食堂で?」
「ええ。煮ても焼いても、刺身でも美味しいですよ」
シオリの目が輝いた。
「食べたい!」
サイが楽しそうに笑う。
「それに、玄鱗魚は普通の魚とは少し違うんです」
「違う?」
ユースケが尋ねる。
「食べると、体の調子が良くなると言われています」
「体の調子が…」
ユースケは玄鱗魚を見る。
ゲームで食べる。そして、体の調子が良くなる。
「もしかすると…」
隣を見ると、ヒナも玄鱗魚を見つめていた。
「私も同じこと考えました」
「ん?どういうこと?」
シオリだけが首を傾げる。
「食べれば分かるかもしれないね」
「2人だけ分かってるのズルい!」
シオリが頬を膨らませる。
「それじゃあ、釣りも終わったことだし戻ろうか」
ダンの言葉に、3人も馬車へ向かう。
歩きながら、ユースケはステータスを確認した。
レベルは21。
今日の戦闘でDEXとINTも1ずつ上昇している。
【名前】ユースケ
【職業】盗賊
【レベル】21
【HP】60+6
【MP】52+6
【STR】20+7
【VIT】19+4
【AGI】24+7
【DEX】24+8
【INT】19+5
【LUK】20+1
新しい杖スキルも覚えた。
それに、3人全員が4属性の攻撃魔法を使える強みも、今回の戦闘で実感できた。
弱点が分かれば、それに合わせて攻撃を選べる。
「揃えておいて正解だったね」
ユースケはヘルパーを閉じ、玄武門へ向かう馬車の横を歩いていった。




