護衛クエスト
ユースケたちは冒険者ギルドを訪れていた。
「どんなクエストがあるかな?」
シオリがクエスト一覧を覗き込む。
討伐。
採取。
護衛。
鉱石発掘。
いくつかのクエストが並んでいる。
「護衛クエストがありますよ」
ヒナが1つを指差した。
「見てみようか」
ユースケが護衛クエストを選択する。
【湖釣り護衛クエスト】
【推奨レベル19】
【依頼内容】
【依頼人である夫婦を湖まで送迎する】
【釣りの間(2時間)、周辺の安全を確保する】
【報酬】
【150,000G】
「湖で釣り?」
シオリが首を傾げる。
「夫婦が湖まで釣りに行くみたいだね」
「その護衛ってことですか?」
「そうみたい」
ユースケは依頼内容を読み返す。
湖までの往復と、釣りをしている2時間の護衛。
「戦闘になる可能性もありそうだね」
「護衛ですからね」
ヒナが頷く。
シオリは報酬の表示を見て、目を輝かせた。
「150,000G!」
「3人で受けるなら、1人50,000Gですね」
「50,000Gか。送迎と2時間の護衛クエストなら悪くないね」
「十分大きいよ!」
シオリが即答する。
「受けてみませんか?」
ヒナも乗り気のようだ。
ユースケは2人を見る。
「じゃあ、これにしようか」
「うん!」
「はい!」
3人は護衛クエストを受注した。
受付嬢が説明を続ける。
「依頼人は本日の10時に冒険者ギルドへ来る予定です。その際に詳しい内容をご確認ください」
「分かりました」
ユースケたちは、そのまま依頼人を待つことにした。
◇
しばらくして、冒険者ギルドの入口から男女が入ってきた。
どちらも40代くらいだろうか。男性は人の良さそうな笑顔を浮かべ、女性も穏やかな表情をしている。
2人は受付へ向かった。
「湖釣りの護衛を依頼した者ですが」
「はい。お待ちしておりました」
受付嬢がユースケたちを見る。
「こちらの3名が、今回の護衛を担当します」
「おお、君たちか」
男性が笑顔で近づいてきた。
「今日はよろしく頼むよ」
「こちらこそ、よろしくお願いします。俺はユースケです。こちらがシオリとヒナです」
「シオリです!」
「ヒナです。よろしくお願いします」
「私はダンだ。こっちは妻のサイ」
「よろしくお願いしますね」
サイが微笑む。
「はい!」
シオリが元気よく返事をした。
改めて依頼内容を確認する。
目的地は玄武門から30分ほど離れた湖。夫婦が釣りをしている2時間、周囲の安全を確保する。釣りが終われば、2人を玄武門まで送り届けて依頼完了だ。
「それでは、出発しようか」
ダンがギルドの外へ向かう。
外には小さな馬車が用意されていた。
「これで行くんですね」
「そうだよ。大きな荷物もないから、これで十分なんだ」
ダンが御者台へ座り、サイは荷台へ乗り込む。
「小さな馬車だから、みんなは乗せられなくてごめんなさいね」
「大丈夫です。俺たちは馬車の近くを護衛します」
「それじゃあ、よろしく頼むよ」
「はい」
ユースケたちは馬車の横についた。
「じゃあ、出発!」
ダンが馬を操る。
小さな馬車がゆっくりと動き始め、ユースケたちもその横を歩き出した。
◇
しばらく進んだところで、ヒナが声をかけた。
「ユースケさん」
「どうしたの?」
「前に何かいます」
ユースケが視線を向ける。
道の先。木々の間から、複数の影がこちらへ近づいてきていた。
「モンスターだね」
ユースケは片手剣を抜く。シオリとヒナも杖を構え、馬車が止まった。
「モンスターかい?」
ダンが御者台から尋ねる。
「はい。俺たちが対処します」
「分かった。頼むよ!」
やがて、3匹のモンスターが姿を現した。
犬のような顔をした二足歩行の獣。手には長剣や盾を持っている。
「コボルトだね」
ユースケはヘルパーを確認する。
【コボルト】
【レベル17】
「前に戦ったのと同じだね」
「火属性が弱点だったよね?」
シオリが確認する。
「うん、そのはず」
その言葉を聞いた瞬間、シオリの顔が明るくなった。
「ねえねえ、フレイムサークル試していい?」
「もちろん」
ユースケは片手剣を構え、前へ出る。
3匹のコボルトが走り出した。
シオリが魔力の杖を掲げる。
「フレイムサークル!」
3匹を囲むように地面から炎が噴き上がった。
「ギャウッ!」
コボルトたちが炎に包まれる。次の瞬間、3匹とも光の粒となって消えた。
「えっ?」
ユースケが思わず声を漏らす。
シオリ自身も目を丸くしていた。
「全部倒した?」
「範囲魔法だから、1体への威力はファイアより低いはずだけど…」
ユースケはコボルトが消えた場所を見る。
ヒナも杖を下ろした。
「火属性が弱点なのと、杖を+4まで強化したのが大きそうですね」
「たぶんね」
条件が揃った結果とはいえ、十分な火力だ。
「シオリ、すごいね」
「でしょ!」
シオリが嬉しそうに杖を掲げる。
「大魔導士に近づいた!」
「まだ言ってるんだ」
戦闘は、ほんの数秒で終わった。
「すごい魔法だね」
ダンが感心したように笑う。
「これなら安心して釣りに行けそうですね」
サイも嬉しそうだ。
「ありがとうございます」
ユースケは軽く頭を下げる。
「それじゃあ、先へ行こうか」
ダンが再び馬車を進める。
ユースケたちも周囲を警戒しながら、その横についていった。
◇
「見えてきたよ」
ダンの声に、ユースケが前を見る。
木々の向こうに、日の光を反射した水面が見えてきた。
「湖だ!」
シオリが声を上げる。
馬車がゆっくりと湖へ近づいていく。
「綺麗な湖ですね」
ヒナも辺りを見渡した。
ユースケは馬車が止まると、まず周囲を確認する。
「先に安全を確認しよう」
「うん」
「はい」
3人で湖の周辺を見て回る。今のところ、モンスターの姿はない。
「湖の中にモンスターは見たことがないよ」
ダンが釣りの準備をしながら話す。
「いつも森の方から来るんだ」
「分かりました。森側を特に警戒しておきます」
ユースケは木々の方へ視線を向けた。
ダンとサイが釣りの準備を始める。
ここまで来るのは送迎。護衛クエストの本番は、ここからだ。




