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玄武の渡り人 ~帰還できるのは、ただ1つの大陸だけ~  作者: かにかま
第2章 玄武門

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鍛冶屋

シオリの叫び声が、鉱山の奥まで響いていた。


「玄鉄鉱なんていらないって言ったのに!」

「その叫びそのものが物欲まみれだよ…」

ユースケが苦笑する。


「次は俺が掘るね」


ユースケもピッケルを手に取った。

ガンッ!


「あっ」

「どうしたの?」

「1回目で玄鉄鉱が出た」


「うそぉ!」

シオリが思わず叫ぶ。


「残り4回も掘るね」

ガンッ!

ガンッ!

ガンッ!

ガンッ!


ユースケは掘り出した鉱石を確認する。

「残りは全部、鉄鉱石だった」


「最後は私ですね」

ヒナがピッケルを受け取る。


ガンッ!

ガンッ!

ガンッ!

ガンッ!

ガンッ!


5回掘り終え、ヒナが手元を見る。

「私は5個とも鉄鉱石でした」


ユースケは集まった玄鉄鉱を確認した。

これで9個。クエストの達成条件には届いている。


「もしかして、必要数が集まったら出なくなるのかな」

「でも、まだ9回しか掘ってないですよね」

ヒナが考えるように鉱石を見る。

「そうだね。これだけじゃ分からないか」


その隣で、シオリがぼそりと呟いた。

「私は20回掘って0個だけど…」


ユースケとヒナの視線がシオリへ向く。

「……」

「何、その目!」

ユースケは思わず笑った。


「でも、シオリは守護のお守りを手に入れたじゃない」

「あっ、そうだった!」

一瞬でシオリの表情が明るくなる。


「物理攻撃のダメージを10%軽減するんだよね!」

「うん。かなり良い装備だと思うよ」

「じゃあ、私はもう満足!」


さっきまで叫んでいたのが嘘のように、シオリが満面の笑みを浮かべる。

ヒナも小さく笑った。


「それじゃあ、玄武門へ戻ろうか」

「うん!」

「はい」


3人は発掘道具を片付け、玄鉄鉱山をあとにした。



玄武門へ戻ったユースケたちは、そのまま冒険者ギルドへ向かった。


「クエストの達成報告をお願いします」

ユースケが受付へ声をかける。


「お帰りなさいませ。玄鉄鉱の発掘依頼ですね」

「はい。これが玄鉄鉱9個です」


集めた玄鉄鉱をカウンターへ置き、借りていたピッケルも返却する。


受付嬢が確認すると、笑顔で頷いた。

「確かに玄鉄鉱9個、受け取りました。これで依頼達成となります」

「よかった」

「こちらが報酬です」


3人それぞれのヘルパーに通知が表示された。


【100,000Gを獲得しました】


ユースケは所持金を確認する。


【所持金 234,400G】


「ありがとうございます」

「お疲れさまでした」


続けて、ゴーレムたちから手に入れた素材も換金する。


【90,500Gを獲得しました】

【所持金 324,900G】


「半日でかなり稼げたね」

「新しい魔法を買いたい!」

シオリがすぐに反応する。


「シオリは分かりやすいね」

「だって、魔法増やしたいもん!」

シオリが笑う。


ヒナが自分のアイテムを確認した。


「ところで、発掘した鉄鉱石はどうするんですか?」

「鍛冶屋で強化に使えるって聞いたし、詳しく聞きに行こうか」

「せっかく掘ったんですし、使えるなら試してみたいですね」

「私も杖を強化したい!」

シオリが手を挙げる。


「じゃあ、行ってみよう」

3人は冒険者ギルドをあとにした。



鍛冶屋へ入ると、店員が声をかけてきた。


「いらっしゃい」

「装備の強化について、もう少し詳しく聞きたいんですけど」

「強化かい?」

「鉄鉱石を発掘してきたんです」


ユースケが鉄鉱石を見せる。


「それなら使えるよ」

「やった!」


シオリから声が漏れる。


「ただし、装備によって必要な素材と費用は違う。強化値が上がるほど、必要な量も増えていくよ」

「例えば、このポイズンダガーなら?」


ユースケは、ゴブリンジェネラルの討伐報酬で手に入れたポイズンダガーを取り出した。


すると、工房の奥から大柄な男が姿を現す。

いかにも鍛冶職人といった風貌だ。


男はポイズンダガーを受け取り、じっくりと眺めた。


「こいつなら、+1は鉄鉱石1個と10,000Gだな」

「安い!」


シオリが思わず声を上げる。

男がじろりとシオリを見る。

「あっ…」

シオリがユースケの後ろへ少し下がった。


「+1は必ず成功する。+2は鉄鉱石2個と20,000Gで、成功率90%」

「えっ、そこから失敗するの!?」


再び男の視線が向く。

シオリがさっとユースケの背中へ隠れた。


「+3は鉄鉱石4個と40,000G。成功率85%。+4は鉄鉱石8個と80,000Gで、成功率80%だ」


ユースケは順番に頭へ入れていく。


「失敗した場合、装備はどうなるんですか?」

「壊れもしないし、強化値も下がらない。ただし、使った素材と金は戻らない」


シオリは何か言いたげに口を開きかけたが、すぐに言葉を飲み込んだ。


「その代わり、失敗するたびに同じ段階の次回成功率が5%ずつ上がる。最大100%までだ」


失敗して装備そのものを失うわけではない。

それなら、強化システムとしてはまだ優しい方かもしれない。


MMOの装備強化は基本的に沼だ。

だが、失敗するほど成功率が上がるなら、比較的ストレスの少ない仕様にも思える。


「あと、この工房で強化できるのは+4までだ」

「その先もあるんですか?」

「ある。ただ、ここじゃ無理だな」


男はポイズンダガーをユースケへ返す。


「上級の鍛冶屋なら、特殊な鉱石を使って属性や特殊効果を付けることもできるらしい」


「すごい!それ楽しそう!」

シオリが目を輝かせる。

ヒナも興味深そうに身を乗り出した。

「特殊効果まで付けられるんですね」


ヒナはこういう話になると意外と食いつく。

やっぱり、結構ゲーマーなんだよな。

ユースケはそう思ったが、口には出さなかった。


装備を買い替える。

今の装備を強化する。

さらに先では、特殊な強化もあるらしい。

今すぐ決める必要はない。


「まずは装備や魔法を見直してから考えようかな」

「私も!」

シオリが元気よく答える。


ユースケは鍛冶職人へ頭を下げた。


「ありがとうございました。よく分かりました」

「おう」


男はもう1度、ポイズンダガーを見る。

「それ、良いダガーだぞ。鍛え続ける価値はある」

「えっ?」

ユースケも手元の短剣を見る。


まだ実戦では使っていない。

毒の効果も、短剣そのものの使い勝手も分からないままだ。


「ありがとうございます」

まずは使ってみよう。

それから強化を考えても遅くない。


3人は鍛冶屋をあとにした。

外へ出ると、空はすっかり暗くなっていた。


「今日はもう宿に戻ろうか」

「うん!」

「そうですね」


3人は並んで宿へ向かった。



明日は朝から装備や魔法を見に行く。

そう決めて、3人はそれぞれの部屋へ戻った。


ユースケはベッドに腰を下ろし、今日のゴーレムとの戦いを思い返す。


最初の戦闘で攻撃を受けた。

その後は、回避を意識して戦い続けた。


結果として、HPとAGIが1ずつ上昇している。


「ちゃんと繋がってるね」


ユースケは現在のステータスを開いた。


【名前】ユースケ

【職業】盗賊

【レベル】20

【HP】58+6

【MP】49+6

【STR】19+7

【VIT】19+4

【AGI】24+7

【DEX】24+7

【INT】19+4

【LUK】19+1


【武器熟練度】

片手剣:Lv5

盾:Lv4

弓:Lv2

両手剣:Lv2

杖:Lv1


【盗賊固有スキル】

瞬足

クイックステップ

アナライズ


【片手剣スキル】

スラッシュ

ワイドスラッシュ

片手剣適性アップ

アーマーブレイク


【盾スキル】

シールドバッシュ

シールドノック

盾適性アップ


【弓スキル】

パワーショット


【両手剣スキル】

パワースラッシュ


【習得魔法】

アイスバレット

ヒール


【武器適性】

短剣:120%

片手剣:110%(100%+10%)

両手剣:80%

槍:100%

斧:90%

弓:110%

杖:90%

鈍器:90%

ナックル:110%

盾:100%(90%+10%)


【魔法適性】

攻撃魔法:90%

回復魔法:70%


【防具】

盾:アイアンシールド(DEF+10)

頭:アイアンヘルム(DEF+5)

胴:アイアンアーマー(DEF+12)

腕:アイアンガントレット(DEF+6)

足:アイアングリーブ(DEF+6)


【主な所持武器】

ポイズンダガー(ATK+10)

アイアンソード(ATK+10)

アイアングレートソード(ATK+16)

アイアンスタッフ(MATK+10)


【装飾品】

1:安らぎの指輪

効果:横臥時のHP・MP自然回復速度上昇(小)

2:なし


「明日は装備を見直して、魔法も増やそうかな」


買えるものを全部買う必要はない。

今の所持金と、これから必要になりそうなものを考えて決めればいい。


ユースケはヘルパーを閉じ、ベッドへ身体を横たえた。


新しい装備。

新しい魔法。

まだ試していないポイズンダガー。


考えることは多い。


「まあ、明日でいいか」


目を閉じる。

鉱山を歩き回った疲れもあって、ユースケはすぐに眠りへ落ちていった。

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