物欲センサー
ゴーレムを倒したユースケたちは、さらに鉱山の奥へ進んでいた。
「また部屋があるね」
ユースケが前方を見る。
「中に何かいるみたい」
ヒナが目を凝らす。
そこには、先ほどと同じように巨大なゴーレムが立っていた。
「またゴーレムか」
ユースケはアナライズを使う。
【ゴーレム】
【レベル18】
【弱点属性:風】
【耐性属性:土】
【状態異常耐性:毒無効】
「さっきと同じだね」
「それなら、今度は大丈夫そうだね」
「うん。行こうか」
ユースケは片手剣と盾を構え、ゴーレムへ向かって走り出した。
「アーマーブレイク!」
片手剣が岩の身体を斬りつける。
「アイスバレット!」
「ウィンド!」
シオリとヒナの魔法が続けて命中する。
ゴーレムが巨大な拳を振り下ろした。
「クイックステップ!」
ユースケは後方へ飛び退き、攻撃をかわす。
1度戦った相手だ。
無理に攻撃を受けず、動きを見て避ける。その間にシオリとヒナが魔法を撃ち込んでいく。
やがて、ゴーレムの身体に大きな亀裂が走った。
ドォン!
巨体が崩れ、光の粒となって消えていく。
「よし」
ユースケが周囲を確認する。
ゴーレムがいた場所の奥には、先ほどと同じ採掘マークが表示されていた。
「ここにも発掘ポイントがあるね」
「今度こそ!」
シオリがすぐにピッケルを取り出す。
「最初にやる?」
「うん!」
岩壁の前へ立つ。
ガンッ!
ガンッ!
ガンッ!
ガンッ!
ガンッ!
5回掘り終え、シオリが手元を確認する。
「……」
「どうだった?」
「鉄鉱石が5個…」
「また?」
「玄鉄鉱、0個…」
シオリの肩が落ちる。
「まあ、そういうこともあるよ」
ユースケが苦笑する。
「次は俺がやってみるね」
ユースケも5回発掘する。
「鉄鉱石が4個と、玄鉄鉱が1個」
「またユースケが出した…」
シオリの声が少し低くなる。
「次は私だね」
ヒナも発掘を始めた。
5回を終え、鉱石を確認する。
「玄鉄鉱が2個。あとは鉄鉱石だね」
「えっ、2個!?」
シオリが目を見開く。
「これで俺が2個、ヒナが3個か」
「私だけ、まだ0個…」
シオリが自分の鉄鉱石を見つめる。
「3人で集めればいいんだから、気にしなくていいよ」
「そうだよ。まだ先もあるし」
ヒナも微笑む。
「…次こそは!」
シオリが顔を上げた。
3人は発掘道具を片付け、さらに鉱山の奥へ進んでいった。
◇
しばらく進むと、また小部屋が見えてきた。
中には、やはりゴーレムが立っている。
「またゴーレムだね」
「ゴーレムの奥に発掘ポイントがある可能性は高そうだね」
ヒナの言葉に、ユースケも頷く。
「今のところは、そうみたいだね」
「今度こそ玄鉄鉱を見つける!」
シオリが気合いを入れる。
「その前に倒さないとね」
「分かってるよ!」
ユースケたちはすぐに戦闘へ入った。
「アーマーブレイク!」
「アイスバレット!」
「ウィンド!」
ユースケがゴーレムの攻撃をかわし、その隙にシオリとヒナが魔法を撃ち込んでいく。
すでに戦い方は分かっている。
ほどなくして、ゴーレムは光の粒となって消えた。
「よし!」
シオリがすぐにピッケルを取り出す。
「今度こそ玄鉄鉱を掘るよ!」
「じゃあ、誰から掘る?」
「私!」
シオリが手を挙げる。
だが、すぐに動きを止めた。
「……と言いたいところだけど」
「どうしたの?」
「今回は最後にする!」
「最後?」
「うん。ユースケとヒナが先に掘って」
「どうして?」
シオリは自信満々に胸を張る。
「今度は最後に掘ったら、玄鉄鉱が出る気がする!」
「なるほど…」
ユースケは苦笑した。
「じゃあ、俺からやるね」
5回発掘する。
「玄鉄鉱が2個。鉄鉱石が3個」
「なんでっ!」
シオリがすぐに声を上げる。
ヒナが笑いをこらえながらピッケルを受け取った。
「次は私だね」
発掘を終え、手元を見る。
「玄鉄鉱が1個で、鉄鉱石が4個だったよ」
「…おめでとう」
シオリが俯いたまま祝福する。
ユースケは集まった玄鉄鉱を数えた。
「これで合計8個だから、あと1個だね」
「いくよ!」
シオリがピッケルを振りかぶる。
ガンッ!
ガンッ!
ガンッ!
ガンッ!
ガンッ!
「……」
シオリが黙って手元を確認する。
「どうだった?」
「鉄鉱石が5個…」
「……」
「玄鉄鉱、0個…」
「……」
シオリがその場でうなだれた。
「最後にしてもダメだった!」
そして、勢いよく顔を上げる。
「やっぱり物欲センサーってあるんだよ!」
「物欲センサー?」
ヒナが首を傾げる。
「欲しいと思ってる人には出ないの!」
「そんなことないと思うけど…」
ユースケが苦笑する。
「私、もう玄鉄鉱はいらない!」
シオリがそっぽを向く。
「本当に?」
「本当!」
「じゃあ、次は掘らなくていい?」
「違う、そうじゃないの!」
「どっちなの?」
ヒナが思わず笑う。
「だって、ここまで来たら絶対に見つけたいもん!」
シオリは悔しそうにピッケルを握りしめた。
「それ、欲しいって言ってるよね」
「言ってない!」
「言ってるよ」
「もう!」
シオリが頬を膨らませる。
ユースケも笑いながら立ち上がった。
「まあ、次こそ出るかもしれないしね」
「そうだね。次を探そう」
「うん!」
シオリは再び元気を取り戻す。
「次こそ玄鉄鉱を見つける!」
3人はさらに鉱山の奥へ進んでいった。
◇
さらに進んだ先で、新たな小部屋を見つけた。
その中央には、やはりゴーレムが立っている。
「これで4体目だね」
ヒナが呟く。
「じゃあ、倒そう!」
シオリがすぐに杖を構えた。
「切り替え早いね」
ユースケも片手剣と盾を構える。
ゴーレムがゆっくりと動き始めた。
「アーマーブレイク!」
ユースケが斬り込む。
「アイスバレット!」
シオリの氷弾が直撃する。
さらにもう1発。
「アイスバレット!」
「シオリ、ちょっと気合い入ってる?」
「入ってない!」
「入ってるね」
ヒナが小さく笑いながら杖を向ける。
「ウィンド!」
ユースケが攻撃をかわしてゴーレムを引きつけ、シオリとヒナが魔法を撃ち込む。
やがて、岩の身体に大きな亀裂が走った。
ドォン!
巨体が崩れ落ち、光の粒となって消えていく。
その直後だった。
「ええっ!?」
シオリの声が裏返った。
「どうしたの?」
「レアドロップ!」
シオリが目を見開いたまま、表示を指差す。
「ゴーレムからレアドロップが出た!」
「それって、ユースケさんが前に手に入れた
0.02%の?」
「うん!それ!」
シオリが手に入れたアイテムを確認する。
【守護のお守り】
装飾品
効果:物理攻撃によるダメージを10%軽減
「物理ダメージ10%軽減!?」
さっきまでの落ち込みが嘘のように、シオリの顔が輝く。
「玄鉄鉱よりすごいの出たね」
ユースケも思わず笑う。
ヒナがシオリの隣へ寄った。
「よかったね」
「うん!」
シオリはお守りを大事そうに眺める。
「物欲センサー恐るべし…」
ユースケが呟く。
「私はこれで満足!」
シオリが満面の笑みを浮かべた。
「じゃあ、発掘する?」
「もちろん!」
即答だった。
ユースケとヒナが顔を見合わせる。
シオリはピッケルを構えた。
「玄鉄鉱なんて、いらない!いらない!いらない!いらない!いらない!」
「それ、絶対欲しい人の言い方だよね」
聞こえていないのか、シオリは力いっぱい岩壁を叩く。
ガンッ!
ガンッ!
ガンッ!
ガンッ!
ガンッ!
シオリが手元を確認する。
「……」
「どうだった?」
「全部、鉄鉱石…」
「……」
シオリの肩が震える。
そして――。
「なんでぇぇぇ!」
鉱山の奥まで、シオリの叫び声が響き渡った。




