クエスト
サトルとランと別れた後。
ユースケ、シオリ、ヒナの3人は、宿のユースケの部屋に集まっていた。
「まずは、世界地図を確認しておこうか」
3人はヘルパーを呼び出す。
【玄武大陸 9,015名】
【第27始まりの街】
【現在の渡り人 215名】
↓
【第14玄武門】
【推奨レベル18】
【始まりの街2か所の渡り人が合流する街です】
【現在の渡り人 30名】
↓
【???】
【推奨レベル??】
↓
【???】
【推奨レベル??】
↓
【???】
【推奨レベル??】
3人の前に、玄武大陸の地図が表示される。
『第27始まりの街』から進んだ先にある、『第14玄武門』。そのさらに先には、まだ公開されていない街が続いている。
ユースケは『第27始まりの街』の詳細を開いた。
【第27始まりの街】
【開始時の渡り人 250名】
【第14玄武門へ移動した渡り人 10名】
【現在の生存者 225名】
「俺たちの『第27始まりの街』から来たのが10人。もう1つの『第28始まりの街』から来たのが20人みたいだね」
始まりの街は、それぞれ250人から始まっている。2つの街を合わせれば500人。
その中から玄武門へ移動したのは、まだ30人だけだった。
「もっとたくさんの人が来ていると思ってた」
シオリが地図を見つめる。
「俺たちの攻略スピードは、早い方だったみたいだね」
これから時間が経てば、もっと多くの渡り人が集まるはずだ。
「タケシたちも、どこかの玄武門まで来てるかもしれない」
「ここじゃなくても、同じくらい進んでる可能性はあるってこと?」
「うん」
シオリが少しだけ表情を明るくする。
ヒナも地図を見ながら頷いた。
「進んでいけば、会える可能性も高くなりそうですね」
「そうだね」
ユースケは、もう1度『第27始まりの街』の表示を見る。
現在の生存者は225人。
「25人…」
「25人が…亡くなったってことですか?」
ヒナの声が静かになる。
「うん」
ユースケが頷くと、シオリも画面から目を離せなくなった。
「そんなに…」
「思っていたより多いね」
そのまま玄武大陸全体の情報へ表示を切り替える。
【開始時の渡り人 10,000名】
【現在の生存者 9,015名】
ユースケの視線が止まった。
「…985人」
「え?」
シオリが顔を上げる。
「玄武大陸全体で、985人が亡くなったってことだね」
シオリの表情が曇る。ヒナも黙って表示を見つめた。
数字として表示されているだけだが、そのすべてが人の命だ。
ユースケは2人を見る。
「だから、無理はしないようにしよう。焦らずに少しずつ進もう」
「うん…」
シオリとヒナが小さく頷く。
少しして、シオリが顔を上げた。
「でも、タケシたちもここまで来てるかもしれないんだよね?」
ユースケは一瞬だけ黙った。
タケシ。
サクラ。
マユ。
3人の顔が頭に浮かぶ。
「…うん」
ユースケは頷き、地図を閉じた。
焦って進むつもりはない。だが、立ち止まっているつもりもなかった。
「まずは、この街の情報を集めたいけどいいかな?」
「もちろん!」
「それなら、冒険者ギルドに行ってみませんか?」
ヒナの提案に、ユースケが頷く。
「そうしようか」
3人は宿を出た。
◇
玄武門の冒険者ギルドは、始まりの街にあったものより大きかった。
中へ入ると、いくつもの受付カウンターが並んでいる。
「やっぱり人は少ないね」
シオリが周囲を見渡す。
「まだ到着してる人が少ないのかもしれないね」
ユースケも辺りを確認しながら、受付へ向かった。
「いらっしゃいませ。冒険者ギルドへようこそ」
女性のNPCが笑顔で迎える。
まずは、これまでに集めたゴブリンやホブゴブリンなどの素材をまとめて換金した。
【80,300Gを獲得しました】
続けて所持金を確認する。
【所持金 134,400G】
「結構増えたね」
「これなら何か買える?」
シオリが期待するように聞いてくる。
「シルバー装備を揃えるには、まだまだ足りないかな」
「高かったもんね…」
シオリが少し残念そうに肩を落とす。
その時、受付嬢が口を開いた。
「玄武門の冒険者ギルドでは、クエストを受注することができます」
「クエスト?」
シオリがすぐに反応する。
ユースケも受付嬢を見る。
「始まりの街にはなかったですよね?」
「はい。玄武門から利用できるようになります」
受付嬢が手をかざすと、クエスト一覧が表示された。
討伐。
採取。
護衛。
鉱石発掘。
ダンジョン攻略。
「おお、増えたね!」
シオリが楽しそうに一覧を見る。
「ダンジョン攻略もあるんですね」
「はい。玄武門の周辺には、複数のダンジョンがございます」
ユースケは順番に内容を確認していく。
その隣で、ヒナが1つの項目を指差した。
「鉱石発掘がありますね」
「あっ」
シオリも気付く。
「昨日の鍛冶屋!」
「俺もそれが気になった」
鍛冶屋では、装備の強化に鉱石を使うと聞いている。
ユースケは鉱石発掘を選択した。
「このクエストの詳細をお願いします」
「かしこまりました」
新しい表示が現れる。
【鉱石発掘クエスト】
【推奨レベル18】
【採掘場所:玄鉄鉱山】
【達成条件:玄鉄鉱を1人3個納品】
【報酬:1人100,000G】
「100,000G!?」
シオリが身を乗り出す。
「1人だから、3人なら300,000Gですね」
ヒナも少し驚いている。
「かなり大きいね」
ユースケはもう1度条件を見る。
玄鉄鉱を1人3個。3人なら全部で9個必要になる。
「玄鉄鉱って、どんな鉱石なんですか?」
「玄鉄鉱山で発掘できる鉱石です」
受付嬢が答える。
「発掘に必要な道具は、クエスト受注時にこちらから貸し出しいたします」
「道具まで貸してもらえるんだ!」
「はい。クエスト終了後にご返却ください」
ユースケは頷く。
「玄鉄鉱以外の鉱石も採れるんですか?」
「はい。主に鉄鉱石を採掘できます。納品対象以外の鉱石は、すべて渡り人様のものとなります」
「鉄鉱石…」
昨日、鍛冶屋で聞いた名前だ。
受付嬢が続ける。
「鉄鉱石は、装備の強化素材として使用できます」
「やっぱり!」
シオリの目が輝く。
「クエストのお金ももらえて、強化素材も手に入るってこと?」
「そうなるね」
ヒナも嬉しそうに頷く。
「一石二鳥ですね」
報酬は大きい。鉱石も手に入る。
さらに、昨日知ったばかりの装備強化にも繋がっている。
「これは1度やってみたいな」
「やろう!」
シオリが即答する。
「私も賛成です」
ヒナも頷いた。
「じゃあ、3人とも受けようか」
ユースケたちは鉱石発掘クエストを受注した。
【鉱石発掘クエストを受注しました】
受付嬢から、それぞれ発掘用のピッケルを受け取る。
シオリはさっそく両手で持ち上げた。
「よーし!」
「何か楽しそうだね」
「だって、鉱山で発掘だよ!」
シオリが笑う。
「玄鉄鉱を9個集めよう!」
「目的はそれだからね」
ユースケも笑った。
「それでは、お気をつけて」
受付嬢に見送られ、3人は冒険者ギルドをあとにする。
次の目的地は、玄鉄鉱山。
初めてのクエストを達成するため、3人は玄武門の出口へ向かって歩き始めた。




