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玄武の渡り人 ~帰還できるのは、ただ1つの大陸だけ~  作者: かにかま
第2章 玄武門

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玄武門

玄武門へ続く道を歩き、ユースケたち5人は目的地へたどり着いた。


深い緑色の石で造られた巨大な城門。その中央には、亀の甲羅と蛇を組み合わせたような紋章が刻まれている。


玄武。


この大陸を象徴する守護神の名を冠した門だった。


「…大きいね」

シオリが立ち止まり、目の前に広がる街を見上げる。


ユースケも同じように街を見渡した。始まりの街とは、明らかに規模が違う。高い城壁に囲まれた街の中には、大きな建物がいくつも並んでいた。


「渡り人は、ほとんどいないな」

サトルが周囲を見渡しながら呟く。


「始まりの街が2つ合流する場所のはずなんだけどね」


ユースケは以前、ヘルパーで確認した情報を思い出す。


玄武門。

2つの始まりの街から来た渡り人が合流する街。


それなら、いずれは多くの渡り人が集まるはずだ。だが、今のところ見かける人数は少ない。


「俺たちは早い方なのかもしれないね」


「ボスも倒してきたしな!」

サトルが楽しそうに笑う。


「そうかもね」


ユースケは再び街へ目を向けた。


「とりあえず、中を見てみようか」


4人も頷き、城門をくぐった。



まずは街の施設を確認する。


武器屋。

防具屋。

道具屋。

魔法屋。

宿屋。

冒険者ギルド。

玄武教会。


始まりの街で見慣れた施設が、玄武門にも揃っていた。


そして――。


「…鍛冶屋?」


ユースケの足が止まる。始まりの街にはなかった看板が目に入った。


その隣で、サトルの表情も明るくなる。

「テンションの上がる施設があるな!」


「分かる」

ユースケも思わず笑う。


「何ができるのか気になるな」


「早速行ってみようぜ!」

サトルが先頭に立って歩き出す。


「せっかちね」

ランが呆れたように笑い、ユースケたちもその後を追った。



鍛冶屋の扉を開けた瞬間、熱気が押し寄せてきた。


店の奥では、鍛冶職人らしきNPCが赤く熱した金属を叩いている。


カンッ!

カンッ!

カンッ!


「いらっしゃい」

店員がユースケたちへ声をかける。


ユースケは店内を見回してから尋ねた。


「ここでは、何ができるんですか?」


「武器や防具の強化だよ」


「強化?」

その言葉に、ユースケの目が止まる。


「今持ってる装備を強くできるんですか?」


「必要な素材とお金があればね」


「なるほど」


装備を買い替えるだけではない。今使っているものを強化するという選択肢も増えたらしい。


「必要な素材は、ここで買えるんですか?」


「基本的にはモンスターから手に入れるか、鉱石を掘って集める。装備によって必要なものも違ってくるよ」


「鉱石…」


ユースケはその言葉を覚えておく。


どの装備に何が必要なのか。費用はいくらなのか。まだ分からないことは多い。


だが、装備を更新するか。それとも、今の装備を強化するか。これからは、その判断も必要になりそうだった。


「今日は情報収集だけにしておこうかな」


「それがいいと思います」

ヒナも頷く。


「必要な素材や費用を確認してからの方が良さそうですね」


「うん」


サトルは少し残念そうに店内を見る。


「強化してみたかったけどな」


「素材がないでしょ」

ランがすぐに返す。


「それもそうだな!」

サトルが豪快に笑った。


「ひとまず武器屋と防具屋も見てみようか」


「うん!」


「はい」


5人は鍛冶屋をあとにした。



次に向かったのは武器屋だった。


店へ入ったユースケは、並んでいる装備を見て足を止める。


「…シルバー?」


始まりの街では見たことのない武器が並んでいる。近くには、シルバーシリーズの防具も表示されていた。


「装備が1ランク上がってるんだね」


シオリも興味深そうに杖を眺めている。5人の視線が自然と新しい装備へ向いた。


だが――。


「…高い」

ユースケが呟く。


「え?」

シオリが振り返った。


ユースケは表示された価格を見つめている。

「始まりの街とは、かなり違うね」


性能が上がった分、価格も大きく上がっていた。いくつも買い揃えるとなれば、かなりの金額が必要になる。


ユースケは自分の所持金を確認する。

「全部更新するのは厳しそうだな」


ヒナも考えるように口元へ手を当てた。

「それなら、必要なものから買い替えるのが良さそうですね」


「そうだね」


今はボスから手に入れた装備もある。急いで全部を買い替える必要はない。


「今日は無理に買わずに、何を優先するか考えておこうか」


ランが頷く。

「それが良さそうだわ」


一通り商品と価格を確認し、5人は店を出た。



街の中央付近まで戻ったところで、ランが足を止めた。


「ユースケ」


「ん?」


振り返ると、ランは少し真剣な表情をしていた。

「ここで、一度別れましょう」


ユースケは一瞬だけ言葉を止める。だが、すぐに理由は分かった。


「…シン君を探すんだね」


「ええ」

ランが頷く。


小学6年生の弟、シン。この世界へ来てから、ランがずっと探し続けている家族だ。


「ここまで来れば、始まりの街より情報も集まりそうだから」


「そうだね」


その時、サトルがランの隣へ並んだ。


「俺も付き合うぞ!」


「え?」

ランが少し驚いたように見る。


「ランが弟を探してるんだ。ここまで一緒に来たんだから、俺も探す!」


迷いのない声だった。


ランはしばらくサトルを見つめる。やがて、小さく息を吐いた。


「…ありがとう」


「気にするな!」

サトルがいつものように笑う。


ユースケも2人を見ながら頷いた。


臨時で組んだパーティーだ。いつか別れることになるとは分かっていた。それでも、実際にその時が来ると少し寂しい。


「分かった」


ユースケはランを見る。


「俺たちもシン君を見つけたら、すぐ連絡するよ」


「お願いします」

ランが頭を下げる。


「俺たちも、タケシたちを見つけたら連絡するからな!」

サトルが力強く言う。


「ありがとう」

ユースケも頭を下げた。


その隣で、シオリが少し寂しそうな顔をしている。


「また一緒に戦えますよね?」


ランはシオリを見る。


「ええ。また会いましょう」


「絶対ですよ!」


「分かったわ」

ランが小さく笑う。


ヒナも2人へ微笑んだ。


「お互いに、無事でいましょう」


「そうね」


ランはそう答えると、そっとシオリの頭を撫でた。


「またね」


「はい!」

シオリが大きく頷いた。



サトルとランを見送る。2人の姿が少しずつ遠ざかっていった。


「行っちゃったね…」

シオリが呟く。


「うん」

ユースケも2人の背中を見つめる。


短い間だけ組んだ臨時パーティー。それでも、一緒に洞窟を進み、ボスまで倒した仲間だ。


「シン君に会えるといいですね」

ヒナが静かに言う。


「うん。きっと会えるよ」

ユースケは答えた。


やがて、2人の姿が人混みの向こうへ消える。


ユースケはしばらくその方向を見てから、ゆっくりと視線を戻した。


隣にはシオリとヒナがいる。


また3人だ。


「さて」

ユースケが2人を見る。


「俺たちも行こうか」


「うん!」


「はい!」


2人が頷く。


玄武門へ到着し、新しい装備や鍛冶屋も見つけた。まだ調べていないことはいくらでもある。


「まずは、次の狩場を探そうか」


「どんなモンスターがいるのかな?」

シオリがすぐに目を輝かせる。


「それも含めて、調べてみよう」

ユースケは笑った。


始まりの街を抜け、玄武門へ。ここから先には、また知らない場所が待っている。


ユースケ、シオリ、ヒナ。


3人は並んで、新しい街を歩き始めた。

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