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玄武の渡り人 ~帰還できるのは、ただ1つの大陸だけ~  作者: かにかま
第1章 始まりの街

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将軍の力

「来るよ」

ユースケの声と同時に、魔物たちが動き出した。

予定どおり、ランはゴブリンジェネラルへ向かう。

サトルは4匹のゴブリンの前へ。

そしてユースケは、ホブゴブリンを迎え撃った。


「グオッ!」

棍棒が振り下ろされる。

ユースケは横へ身体をずらした。

直後。

ドンッ!

棍棒が石床へ叩きつけられ、小さなひびが走る。


「やっぱり威力は高いな」

まともに受ける必要はない。

昨日まで何度もホブゴブリンと戦っている。

さらに、ランが攻撃をかわしながら戦う姿も近くで見てきた。

同じ動きができるわけではない。

それでも、棍棒を振るタイミングは少しずつ分かってきている。


再び棍棒が迫る。

ユースケは身体を沈め、その脇を抜けた。

「アーマーブレイク!」

剣がホブゴブリンの胴を斬りつける。


【ホブゴブリンの防御力を下げました】


「シオリ!」

「うん!」

ユースケが距離を取る。

「アイスバレット!」

氷弾がホブゴブリンの胸へ突き刺さった。


「グオッ!」

巨体が大きく揺れる。

ユースケはすぐに間合いを詰めた。

「シールドバッシュ!」

盾がホブゴブリンの身体を捉える。

大きく体勢が崩れた。


「もう1発!」

シオリの杖に魔力が集まる。

「アイスバレット!」

2発目の氷弾が直撃した。

「グオォッ!」

ホブゴブリンの身体が光の粒となって消える。


「次、サトルさん!」

「助かる!」

4匹のゴブリンを引き受けていたサトルのもとへ、ユースケが駆ける。

「ワイドスラッシュ!」

青白い斬撃が前方へ広がり、ゴブリンたちをまとめて斬りつけた。


「俺もいくぞ!」

サトルが片手斧を振り上げる。

「ワイドスイング!」

大きく薙ぎ払われた斧が、傷ついたゴブリンたちをまとめて捉えた。

次々と身体が光の粒へ変わっていく。


「よし!」

残る敵は――。

ゴブリンジェネラルだけ。


その瞬間だった。

「グオオォォッ!」

巨大な咆哮が部屋中へ響いた。

空気が震える。

「っ…」

シオリが思わず杖を握り直した。


ゴブリンジェネラルが巨大な金棒をゆっくりと頭上へ持ち上げる。

その正面にはラン。

「来る!」

金棒が振り下ろされた。

ランは横へ跳ぶ。

直撃は避けた。


しかし――。

ドォンッ!

金棒が床へ叩きつけられた瞬間、衝撃が周囲へ広がった。

「くっ…!」

離れていたランの身体まで衝撃に煽られる。

HPが減った。


「ヒール!」

すぐにヒナの回復魔法が飛ぶ。

淡い光がランの身体を包んだ。

「ありがとう」

ランが体勢を立て直す。

「攻撃範囲が広いわね…」


ユースケも金棒が叩きつけられた場所を見る。

「直撃を避けても駄目か…」


ゴブリンジェネラルが再び金棒を持ち上げる。

「サトルさん!」

「分かってる!」

サトルが前へ出た。

「俺が受ける!」


振り下ろされる金棒。

サトルはアイアンシールドを構える。

ガァンッ!

凄まじい衝撃。

盾で受け止めたにもかかわらず、サトルの身体が後ろへ押された。

HPも減っている。


「ぐっ…!」

「ヒール!」

ヒナがすぐに回復する。

「助かる!」


その隙に、ランが動いた。

懐へ飛び込み、ゴブリンジェネラルへ拳を叩き込む。

ゴブリンジェネラルが唸り、巨大な金棒を横薙ぎに振るった。


「カウンターブロウ!」

攻撃が当たる直前。

ランが身体をひねる。

金棒を紙一重でかわしながら、その勢いを利用するように強烈な拳を叩き込んだ。


「今だ!」

ユースケも続く。

「アーマーブレイク!」

剣がゴブリンジェネラルの身体を斬りつける。


【ゴブリンジェネラルの防御力を下げました】


「アイスバレット!」

シオリの氷弾が直撃する。

だが――。

「グルル…」

ゴブリンジェネラルの巨体が、わずかに揺れただけだった。


「さすがボスだな…」

ユースケは剣を握り直す。

ホブゴブリンとは耐久力がまるで違う。


ゴブリンジェネラルが再び金棒を頭上へ持ち上げた。

「みんな、一旦下がって!」

4人が距離を取る。

その中で、ユースケだけが前へ出た。


「ユースケ?」

ランが一瞬だけ目を見開く。

ゴブリンジェネラルの懐へ入る。

狙いがユースケへ向いた。

金棒が振り下ろされる。


「クイックステップ!」

その瞬間。

ユースケの身体が素早く後方へ飛んだ。

ドォンッ!

直前まで立っていた場所へ金棒が叩きつけられ、衝撃波が広がる。

だが、今度は十分な距離がある。


「シオリ、今だ!」

「アイスバレット!」

攻撃直後で動きの止まったゴブリンジェネラルへ氷弾が直撃した。


「なるほど」

ランが笑う。

ユースケが何を狙ったのか理解したらしい。


攻撃を誘う。

避ける。

そして、大振りの直後を全員で狙う。


「その役、私に任せて」

「お願いします!」


ユースケはアイアンソードをしまい、すぐにアイアンスタッフへ持ち替える。


ゴブリンジェネラルが再び金棒を振り上げた。

「来なさい」

ランがその正面へ入る。

金棒が振り下ろされる。


「サイドステップ!」

ランの身体が素早く横へ跳んだ。

ドォンッ!

金棒が床を砕く。

ランは衝撃が広がる前に、大きく距離を取っていた。


「今よ!」

ユースケがシオリとヒナを見る。

全員のHPには余裕がある。

ヒナもすぐに杖をゴブリンジェネラルへ向けた。


「ウィンド!」

「アイスバレット!」

「アイスバレット!」


風の刃。

2発の氷弾。

3人の魔法が続けてゴブリンジェネラルへ直撃する。


「グオオォォッ!」

巨体が大きく仰け反った。


「サトルさん!」

「任せろ!」

サトルが駆ける。

大きく片手斧を振りかぶった。


「ヘビィスイング!」

渾身の一撃が、ゴブリンジェネラルの頭部を捉える。

ドンッ!

巨体が仰向けに倒れた。


一瞬の静寂。

そして――。

ゴブリンジェネラルの身体が光に包まれる。

無数の粒子となり、ゆっくりと消えていった。


【レベルが20に上昇しました】

【アナライズを習得しました】


続けて通知が現れる。


【STRが1上昇しました】

【AGIが1上昇しました】

【DEXが1上昇しました】


「よっしゃー!」

サトルが片手斧を掲げた。

「勝ったぞ!」


張り詰めていた空気が、一気にほどける。

「やったー!」

シオリも両手を上げる。

ヒナはほっとしたように胸へ手を当てた。

ランも小さく息を吐き、笑みを浮かべる。


ユースケも剣を下ろした。

「勝てたね」


初めてのボス戦。

誰か1人ではなく、5人で役割を繋いで勝った。


その時。

「あれ?」

シオリが部屋の中央を指差した。


ゴブリンジェネラルが消えた場所に、淡い光が集まっていく。

光は少しずつ形を作り――。

やがて、1つの宝箱が姿を現した。


「宝箱…?」

5人の視線が、一斉にそこへ集まった。


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