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玄武の渡り人 ~帰還できるのは、ただ1つの大陸だけ~  作者: かにかま
第1章 始まりの街

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将軍

翌朝。


旅立ちの草原の入口には、5人全員が揃っていた。


ユースケは皆を見渡す。


「みんな、準備は大丈夫?」


「ばっちり!」


シオリが元気よく答える。


「私たちも全部アイアン防具にしたよ!」


ヒナも新しい装備を確かめながら頷いた。


「昨日より安心して戦えそうです」


サトルも自分の鎧を軽く叩く。


「俺たちも今買える中では一番いい装備を揃えたぞ!」


「準備は十分ね」


ランも静かに続ける。


「あとは、あの扉だね」


シオリが少し楽しそうに笑った。


「玄武の紋章があったし、やっぱりボス部屋かな?」


「俺の直感ではそうだな!」


サトルが豪快に笑う。


「その直感は俺も同じかな」


ユースケも笑ってから、洞窟のある方角へ視線を向けた。


「じゃあ、行こうか」


5人は旅立ちの洞窟へ向かった。



旅立ちの森を抜け、洞窟へ入る。


昨日通った道ということもあり、5人の足取りに迷いはない。


しばらく進んだところで、ユースケが足を止めた。


「敵がいる」


前方には、ホブゴブリンが1匹。


その周囲に、ゴブリンが6匹いる。


「昨日と同じですね」


ヒナが小さく呟く。


「うん」


ユースケはアイアンソードではなく、アイアンスタッフを取り出した。


シオリが目を丸くする。


「あれ?」

「ユースケさん、杖使うの?」


「昨日ちょっと試してみたんだ」


「また夜に!?」


「…まあ、その話は置いといて」


シオリの視線から逃げるように、ユースケは前を見る。


「この相手なら、サトルさんとランさんに前を任せて、俺も後ろから攻撃した方が良さそうだからね」


ランが頷く。


「やってみましょう」


敵がこちらへ気付いた。


「行くぞ!」


サトルが前へ出る。


「シールドノック!」


盾を打ち鳴らす音が洞窟へ響き、ゴブリンたちの視線がサトルへ集まった。


同時に、ランがホブゴブリンへ向かう。


棍棒をかわし、その懐へ潜り込む。


鋭い拳打を数発叩き込んだ。


「シオリ」


「うん!」


2人が杖を構える。


「アイスバレット!」


「アイスバレット!」


2発の氷弾がほぼ同時に飛ぶ。


ホブゴブリンの胸へ続けて直撃した。


「グオッ…!」


巨体が光の粒となって消える。


「おお!」


サトルがゴブリンを受け止めながら声を上げた。


「速いな!」


シオリも嬉しそうに笑う。


「アイスバレット強いね!」


ユースケは消えていく光を見ながら頷いた。


「ホブゴブリンには効果は抜群だね」


「やっぱり!」


シオリが得意げに笑う。


残ったゴブリンも、5人で落ち着いて倒していった。



その後も洞窟の奥へ進む。


昨日までに戦い方は十分分かっている。


サトルがゴブリンを受け止め、ランがホブゴブリンを引き付ける。


ユースケとシオリは必要な時だけ魔法を使い、ヒナは前衛のHPを見ながら回復する。


ランが攻撃を受けた時には、ユースケもヒールを使った。


無理にスキルを連発する必要はない。


MPに余裕を残しながら、確実に敵を倒していく。


昨日よりも、さらに動きは安定していた。


何度か休憩も挟みながら進み――。


やがて。


前方に、巨大な石造りの扉が姿を現した。


中央には、蛇が絡みつく亀の紋章。


昨日見つけた扉だ。


「着いたね」


ユースケが足を止める。


5人の表情から、自然と笑みが消えた。



ユースケは全員を見る。


「入る前に、もう1度だけ確認しておこうか」


4人が頷く。


「無理だと思ったら、すぐ下がる」

「倒すことより、生き残ることを優先しよう」


「おう!」


「分かったわ」


「はい」


「うん!」


「まずは相手を確認するところからでいこう」


ユースケが扉へ手を伸ばす。


ゆっくりと押す。


ギィィィ…。


重い音を響かせながら、巨大な扉が開いていく。


その先には、広い円形の空間が広がっていた。


壁には古びた松明が並び、薄暗い部屋を照らしている。


念のため、すぐに戻れるよう扉は開けたままにする。


そして――。


部屋の中央。


「…いるね」


ユースケが小さく呟いた。


棍棒を持ったゴブリンが4匹。


その後ろに、ホブゴブリンが1匹。


そして。


さらに奥に、他の魔物とは明らかに違う存在が立っていた。


ホブゴブリンよりも二回りは大きな身体。


太い腕。


その手には、巨大な金棒が握られている。


周囲のゴブリンたちを従えるように、堂々と立っていた。


「でかっ…」


シオリが思わず呟く。


ユースケはその魔物へ視線を向け、ヘルパーを開いた。


【ゴブリンジェネラル】

【レベル18】


「ジェネラル…将軍か」


サトルが金棒を見ながら笑う。


「名前からして強そうだな!」


「そうだね」


ユースケは敵の配置を確認する。


ゴブリンが4匹。


ホブゴブリンが1匹。


そして、未知のゴブリンジェネラル。


「まず数を減らした方がいいかな」


ユースケはランを見る。


「ランさん、ジェネラルの相手をお願いできますか?」


「任せて」


ランが真剣な表情で頷く。


「倒そうとしなくて大丈夫です」

「安全優先で、時間を稼いでください」


「分かったわ」


次にサトルを見る。


「サトルさんはゴブリン4匹をお願いします」


「任せろ!」


サトルが盾を握り直す。


「俺がまとめて引き受ける!」


「俺はホブゴブリンを取ります」

「シオリと一緒に速攻で倒して、終わったら2人の援護に回る」


「了解!」


シオリが杖を構える。


「ヒナはサトルさんとランさんを優先して見てて」

「俺は危なくなったら自分でヒールするから」


「分かりました」


ヒナも杖を握り直した。


倒し方が分からない相手を、最初から全員で囲む必要はない。


まずは危険な相手をランが引き付け、その間に数を減らす。


それから5人でジェネラルへ向かう。


「これでいこう」


全員が頷く。


その時だった。


「グルルル…」


ゴブリンジェネラルが低く唸る。


巨大な金棒を持ち上げ――。


ドンッ!


石床へ叩きつけた。


重い音とともに、空気が震える。


「うわ…」


シオリが杖を握り直す。


ランは無言で腰を落とした。


サトルも盾を前へ構える。


ユースケはアイアンソードを抜く。


ゴブリンジェネラルが顔を上げた。

赤い瞳が、5人を捉える。


【ユースケ Lv19】

【シオリ  Lv16】

【ヒナ   Lv16】

【サトル  Lv17】

【ラン   Lv17】


5人は武器を構えた。

旅立ちの洞窟、その最深部。


初めてのボス戦が始まる。


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