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玄武の渡り人 ~帰還できるのは、ただ1つの大陸だけ~  作者: かにかま
第1章 始まりの街

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死の淵から…再び

宿へ戻った後。


ユースケは部屋を出た。


向かった先は、冒険者ギルドだった。


今日の洞窟攻略で手に入れたゴブリンとホブゴブリンの素材をまとめて換金する。


【125,300Gを獲得しました】


【所持金 135,100G】


「かなり稼げたな…」


5人で何度も戦闘をこなしたうえ、パーティー人数が増えたことでドロップ倍率も上がっている。


3人で狩っていた時とは、素材の集まり方が明らかに違った。


「防具はアイアン一式で揃ったし、次の街までは更新できないから…」


ユースケはそのまま武器屋へ向かった。



「アイアングレートソードとアイアンスタッフをお願いします」


「かしこまりました」


店員が奥から2つの武器を運んでくる。


【アイアングレートソード】

ATK:+16


【アイアンスタッフ】

MATK:+10


代金は合わせて66,000G。


そのまま支払い、2つの武器を受け取った。


武器屋を出ると、今度は魔法屋へ向かう。


「アイスバレットの魔法書をお願いします」


「ありがとうございます」


15,000Gを支払い、受け取った魔法書へ意識を向ける。


魔法書が淡い光に包まれ、そのまま消えていった。


【アイスバレットを習得しました】


【所持金 54,100G】


「よし」


これで試したかったものは揃った。



夜の旅立ちの草原は静まり返っていた。


ユースケはアイアンスタッフを構え、近くで草を食むホーンラビットを見つける。


まず試すのは、今日シオリが使っていた魔法だ。


ホーンラビットがこちらへ気付く。


「アイスバレット!」


杖の先に冷気が集まり、氷弾が一直線に飛んだ。


ホーンラビットへ直撃する。


その身体は一瞬で光の粒となって消えた。


「さすがに一撃か」


ユースケはアイアンスタッフを眺める。


相手は格下のホーンラビット。


これだけでは威力を判断できない。


それでも、自分でも攻撃魔法を使えるという確認にはなった。


「サトルさんとランさんが前にいるなら…」


今日の戦闘を思い返す。


2人が前衛として安定していたことで、ユースケ自身はかなり自由に動くことができた。


「状況によっては、俺が後ろから魔法を使うのもありかもしれないね」


盗賊だから前。


そう決める必要はない。


状況に応じて役割を変えられるなら、その方が選択肢は増える。


「じゃあ、次はこっち」


アイアンスタッフをしまい、アイアングレートソードへ持ち替える。


大きな剣を両手で握る。


「重いな…」


片手剣とは明らかに感覚が違う。


盾は使えない。


振りも大きくなる。


その代わり、攻撃力はアイアンソードを大きく上回る。


盗賊の両手剣適性は80%。


得意武器とは言えない。


「でも、使えないほど低くはないんだよね」


これも試してみる価値はある。



次のホーンラビットを見つける。


ユースケは両手剣を構えた。


こちらへ気付いたホーンラビットが、一気に駆けてくる。


タイミングを合わせて大剣を振るう。


だが――。


「っと!」


片手剣より振り始めが遅い。


先にホーンラビットの突進が身体へ当たった。


HPが少し減る。


それでも体勢は崩さない。


「はっ!」


そのまま踏み込み、大剣を振り下ろす。


重い一撃がホーンラビットを捉えた。


その身体が光の粒となって消える。


「やっぱり遅いな」


ユースケは大剣を構え直す。


片手剣と同じ感覚では使えない。


盾がない分、防御もしにくい。


その一方で――。


「威力はかなり高い」


格下とはいえ、手応えがまるで違った。


問題は、この重さにどこまで慣れられるか。


「もう少しやってみよう」



それからユースケは、ホーンラビットを相手に両手剣を振り続けた。


最初のうちは間合いが合わない。


振り始めが遅れ、攻撃を受けることもある。


だが、何度も繰り返すうちに少しずつ感覚が分かってきた。


相手の突進を横へかわす。


すれ違う瞬間に振り向き、大剣を振るう。


今度は被弾せずに倒せた。


「なるほど」

「片手剣と同じタイミングで振るのが駄目なんだな」


次は、少し早めに動く。


また1匹。


さらに1匹。


避けられる攻撃は避ける。


無理に攻撃を受ける必要はない。


それでも盾を使えない両手剣では、片手剣と盾で戦う時より自然と被弾は増えた。


そこで、昨日の検証を思い出す。


ブルースライムを相手に、わざと安全な攻撃を受け続けてもHPは成長しなかった。


では、こうして普通に戦っている中で受けたダメージならどうなのか。


「ちょうど確認できるね」


戦い方を変える必要はない。


両手剣の練習を続けながら、HPの変化も観察すればいい。


何戦か終えたところで、HPを確認する。


まだ余裕はある。


さらに戦闘を続ける。


被弾したら無理に粘らず、間合いを取る。


HPが7割ほどまで減ったところで、ユースケはアイアンスタッフへ持ち替えた。


「ヒール」


淡い光が身体を包み、減っていたHPが回復していく。


「こっちは昨日と同じだね」


ヒールを使えば、INTやMPが伸びる可能性もある。


回復を終えると、再びアイアングレートソードを構えた。


両手剣の練習。


実戦中の被弾。


ヒールによる回復。


それを繰り返しながら、夜の草原で戦い続ける。


そして――。


【HPが1上昇しました】


「おっ!」


ユースケの表情が緩む。


昨日は、ブルースライムの攻撃を意図的に受け続けてもHPは伸びなかった。


今日は違う。


普通に戦っている中で受けたダメージから、HPが上昇した。


「やっぱり、実戦中の被弾が関係してる可能性は高そうだね」


もちろん、まだ1回だけだ。


他にも条件があるかもしれない。


それでも、昨日とは明らかな違いが出た。


「これも覚えておこう」


さらに検証を続ける。


しばらくして――。


【INTが1上昇しました】


さらに。


【MPが1上昇しました】


「こっちも順調だね」


何度もヒールを使った影響だろう。


昨日に続き、魔法を使うことでINTとMPが伸びている。


少しずつ、行動と成長の関係が見えてきた。



時刻は1時を過ぎていた。


「…またこんな時間か」


今日はちゃんと寝る。


数時間前に、確かにそう思ったはずだ。


ユースケは少しだけ目を逸らした。


「まあ…あと少しだけ」


再び大剣を構える。


ホーンラビットが駆けてくる。


今度は真正面から受けない。


突進を引きつけ、ぎりぎりで身体をずらす。


だが、避けきれなかった角が脇腹をかすめた。


「っ!」


そのまま踏み込む。


「せいっ!」


大剣が振り下ろされる。


ホーンラビットが光の粒となって消えた。


直後。


【HPが1上昇しました】


「2回目か」


ユースケはステータスを確認する。


偶然とは言い切れなくなってきた。


少なくとも、安全な相手からただ攻撃を受け続けるのと、実際に戦っている最中の被弾では、何かが違う可能性が高い。


「面白いな…」


さらに通知が続いた。


【両手剣熟練度がLv2になりました】


【パワースラッシュを習得しました】


「おっ」

「久しぶりのピコーンだな」


すぐに詳細を確認する。


【パワースラッシュ】

消費MP:3

重い一撃を叩き込む。


「これも試しておこう」


近くにいたホーンラビットへ大剣を構える。


「パワースラッシュ!」


通常攻撃よりも力強く、大剣が振り下ろされた。


「おお…」


重い。


だが、その分だけ威力も高い。


ユースケは残ったMPを確認する。


「あと何回かいけるね」


その後も安全を確認しながらパワースラッシュを試し、MPが少なくなったところで検証を終えた。



宿へ戻り、眠る前にヘルパーを開く。


【名前】ユースケ

【職業】盗賊

【レベル】19

【HP】56+5

【MP】46+6

【STR】19+6

【VIT】18+4

【AGI】23+5

【DEX】23+6

【INT】18+4

【LUK】19+1


HPは今日だけで2上昇。


INTとMPも1ずつ増えた。


さらに両手剣熟練度もLv2になった。


「結構伸びたな…」


思わず頬が緩む。


盾を持たずに実戦を重ねれば、HPが伸びる機会は増えるかもしれない。


もちろん、わざと危険な攻撃を受けるつもりはない。


避けられるものは避ける。


危なくなれば回復する。


そのうえで、両手剣のような今までとは違う戦い方を試していく。


「これなら色々伸ばせそうだね」


ユースケはしばらくステータスを眺める。


そして、満足そうに頷いた。


「戦闘民族大作戦もできそうだ」

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