再会
翌朝。
宿の食堂へ向かうと、シオリとヒナが先に席へ着いていた。
「おはよう!」
「おはようございます」
「おはよう」
ユースケが席へ座ると、シオリがじっと顔を覗き込んだ。
「ユースケさん、眠そう!」
「そうかな?」
苦笑しながら答える。
「夜更かしはダメだよ」
そう言った直後、シオリとヒナが顔を見合わせた。
「えへへ…」
「実は私たちも少しだけ夜更かししてしまいました」
「え?」
ユースケが思わず聞き返す。
「昨日ね、ホーンラビット相手に魔法の練習してたの!」
シオリが照れ笑いを浮かべる。
ヒナも静かに頷いた。
「杖の熟練度とINTを少しでも上げたくて」
「洞窟では魔法が頼りになりますから」
ユースケは少し呆れたように笑う。
「無理はしないでね」
「夜更かしは体にも良くないし」
するとシオリがすかさず言い返した。
「それ、ユースケさんが言うの?」
「……」
一瞬だけ沈黙が流れる。
ヒナも小さく笑った。
「説得力がありませんね」
「…ごもっともです」
ユースケが肩をすくめると、3人は思わず笑い合った。
朝食を食べ終えると、ユースケが切り出す。
「今日はまず冒険者ギルドへ行こうか」
「臨時メンバーの募集だね!」
シオリが元気よく頷く。
ヒナも続けた。
「最低でも前衛は1人欲しいですね」
「ユースケさんの負担が大きすぎます」
ユースケも頷く。
「前衛を1人」
「もう1人は職業にこだわらなくても良さそうかな」
「じゃあ!」
シオリが笑顔になる。
「前衛1人ともう1人は職業不問で計2人!」
「それでいこう」
3人は顔を見合わせ、冒険者ギルドへ向かった。
◇
冒険者ギルドは朝から多くの渡り人で賑わっていた。
受付へ向かうと、いつもの受付嬢が微笑む。
「本日はどのようなご用件でしょうか?」
「臨時パーティーの募集をお願いしたいんです」
受付嬢はカウンターの上へ小さな受付端末を置いた。
「募集内容の登録をお願いいたします」
ユースケは端末を手に取る。
【募集人数:2名】
【目的:旅立ちの洞窟攻略】
【募集条件:前衛1名、職業不問1名】
続いて現在のパーティー情報を登録する。
【ユースケ 盗賊 Lv17】
【シオリ 魔術師 Lv14】
【ヒナ 僧侶 Lv14】
登録を終えると、端末が淡く光った。
受付嬢が内容を確認し、微笑む。
「登録を確認いたしました」
「応募がありましたらご連絡いたします」
「それまで定期的に冒険者ギルドへお立ち寄りください」
「分かりました」
ユースケは受付端末を返却した。
そのまま、これまでに集めた素材もまとめて換金する。
昨日のウルフ狩りで手に入れた素材。
旅立ちの洞窟で入手したゴブリンの爪とホブゴブリンの牙。
さらに、昨夜の検証中に倒したブルースライムの素材もある。
換金を終えると、3人は冒険者ギルドをあとにした。
◇
ギルドを出ると、魔法屋が目に入った。
シオリが立ち止まる。
「そういえば!」
「どうしたの?」
「アイスバレットとかアースも覚えた方がいいのかな?」
ユースケも魔法屋へ目を向ける。
「どうだろう」
「モンスターによっては弱点属性があるのかもしれないね」
「あっ!」
シオリが思い出したように声を上げた。
「ゲームだとゴブリンって氷に弱いイメージない?」
ヒナは少し考えてから答える。
「そういう作品もありますね」
「でもFKOでも同じとは限りません」
「うん」
ユースケも頷く。
「今のところは分からないけど試す価値はありそうだね」
シオリは魔法屋を見つめ、小さく頷いた。
「よし!」
「私はアイスバレット買う!」
「昨日の洞窟でも思ったんだ」
「ファイアだけだと効きにくい敵が出てきた時に困るかなって」
ヒナも穏やかに微笑む。
「選択肢が増えるのは良いかもね」
「そうだね」
ユースケも頷いた。
「じゃあ私は頭と腕だけアイアンにする!」
「それならアイスバレットも買える!」
「私は頭と腕、それから足も更新します」
「俺も残ってるブロンズ装備をアイアンに変えようかな」
買うものが決まり、3人はまず魔法屋へ向かった。
◇
店内へ入ると、シオリは迷うことなくアイスバレットの魔法書を手に取った。
「これください!」
購入した魔法書へ意識を向ける。
淡い光に包まれた本が、そのまま光の粒となって消えていった。
【アイスバレットを習得しました】
「やったぁ!」
シオリが嬉しそうに笑う。
「これで火と氷が使える!」
「次にゴブリンと戦ったら試せるね」
「うん!」
ヒナも微笑む。
「本当に弱点かどうかはその時に確認ですね」
「そうだね」
「思い込みで決めないようにしよう」
「分かってるって!」
そう言いながらも、シオリは新しい魔法が嬉しいらしく、何度もスキル欄を眺めていた。
◇
続いて防具屋へ入る。
「いらっしゃいませ」
店員が笑顔で迎える。
ユースケは店内を見回し、そのまま欲しい装備を伝えた。
「アイアンヘルムとアイアンガントレットとアイアングリーブをお願いします」
「かしこまりました」
「やっとアイアンシリーズが揃ったね」
新しい装備へ切り替え、身体を軽く動かして感触を確かめる。
シオリも予定どおり、頭と腕をアイアン装備へ更新した。
「私はここまで!」
ヒナは頭と腕、それから足もアイアンへ変える。
「これで昨日より安心ですね」
「装備も魔法も強化できた!」
シオリが嬉しそうに笑う。
ユースケも2人を見渡して頷いた。
「うん」
「洞窟へ行く前にできる準備はしておこう」
買い物を終えた3人は、再び冒険者ギルドへ向かった。
◇
冒険者ギルドへ戻ると、受付嬢が3人に気付き、微笑んだ。
「ユースケ様、お待ちしておりました」
「もう応募があったんですか?」
ユースケが少し驚く。
「はい」
「2名ともお待ちです」
受付嬢が奥へ向かって声を掛けた。
「こちらへどうぞ」
その声に応じて、2人の渡り人が歩いてくる。
姿を見た瞬間、ユースケは目を見開いた。
「サトルさん…?」
「ユースケ!」
サトルも驚いたように目を見開き、すぐに笑った。
隣のランも小さく会釈する。
「お久しぶりです」
「ランさんも…」
思わぬ再会に、ユースケも自然と笑みがこぼれた。
シオリが小声で尋ねる。
「知り合い?」
「うん」
「前に旅立ちの森で一緒に戦った2人なんだ」
ヒナも納得したように頷いた。
「そうだったんですね」
サトルが少し照れくさそうに頭をかく。
「あの時はちゃんと礼も言えなかったからな」
「改めてありがとう」
ランも静かに頭を下げた。
「助けていただいたおかげで、また戦えるようになりました」
ユースケは首を横に振る。
「俺だけで助けたわけじゃないですよ」
「2人とも無事で良かったです」
サトルが笑う。
「募集を見たらユースケって名前があってな」
「まさかと思って来てみたら本当にお前だった」
「俺もびっくりしました」
「こっちもだ!」
サトルが豪快に笑う。
ランが続ける。
「私は格闘家でLv15です」
「俺は戦士でLv15だ」
サトルが胸を張る。
「前衛を募集してるんだろ?」
「はい」
昨日の洞窟で足りなかった前衛が、一気に2人増える。
しかも、1度一緒に戦ったことがある相手だ。
ユースケは迷わず頷いた。
「こちらこそ、ぜひお願いします」
「よし!」
サトルが手を差し出す。
「よろしく頼む!」
ユースケもその手をしっかりと握り返した。
「よろしくお願いします」
「よろしくね!」
「よろしくお願いします」
シオリとヒナも続く。
ランも小さく微笑んだ。
こうして、5人の臨時パーティーが結成された。
ユースケ。
シオリ。
ヒナ。
そして、思いがけず再会したサトルとラン。
旅立ちの洞窟へ挑む準備が整った。




