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玄武の渡り人 ~帰還できるのは、ただ1つの大陸だけ~  作者: かにかま
第1章 始まりの街

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再会

翌朝。


宿の食堂へ向かうと、シオリとヒナが先に席へ着いていた。


「おはよう!」


「おはようございます」


「おはよう」


ユースケが席へ座ると、シオリがじっと顔を覗き込んだ。


「ユースケさん、眠そう!」


「そうかな?」


苦笑しながら答える。


「夜更かしはダメだよ」


そう言った直後、シオリとヒナが顔を見合わせた。


「えへへ…」


「実は私たちも少しだけ夜更かししてしまいました」


「え?」


ユースケが思わず聞き返す。


「昨日ね、ホーンラビット相手に魔法の練習してたの!」


シオリが照れ笑いを浮かべる。


ヒナも静かに頷いた。


「杖の熟練度とINTを少しでも上げたくて」

「洞窟では魔法が頼りになりますから」


ユースケは少し呆れたように笑う。


「無理はしないでね」

「夜更かしは体にも良くないし」


するとシオリがすかさず言い返した。


「それ、ユースケさんが言うの?」


「……」


一瞬だけ沈黙が流れる。


ヒナも小さく笑った。


「説得力がありませんね」


「…ごもっともです」


ユースケが肩をすくめると、3人は思わず笑い合った。


朝食を食べ終えると、ユースケが切り出す。


「今日はまず冒険者ギルドへ行こうか」


「臨時メンバーの募集だね!」


シオリが元気よく頷く。


ヒナも続けた。


「最低でも前衛は1人欲しいですね」

「ユースケさんの負担が大きすぎます」


ユースケも頷く。


「前衛を1人」

「もう1人は職業にこだわらなくても良さそうかな」


「じゃあ!」


シオリが笑顔になる。


「前衛1人ともう1人は職業不問で計2人!」


「それでいこう」


3人は顔を見合わせ、冒険者ギルドへ向かった。



冒険者ギルドは朝から多くの渡り人で賑わっていた。


受付へ向かうと、いつもの受付嬢が微笑む。


「本日はどのようなご用件でしょうか?」


「臨時パーティーの募集をお願いしたいんです」


受付嬢はカウンターの上へ小さな受付端末を置いた。


「募集内容の登録をお願いいたします」


ユースケは端末を手に取る。


【募集人数:2名】

【目的:旅立ちの洞窟攻略】

【募集条件:前衛1名、職業不問1名】


続いて現在のパーティー情報を登録する。


【ユースケ  盗賊 Lv17】

【シオリ  魔術師 Lv14】

【ヒナ    僧侶 Lv14】


登録を終えると、端末が淡く光った。


受付嬢が内容を確認し、微笑む。


「登録を確認いたしました」

「応募がありましたらご連絡いたします」

「それまで定期的に冒険者ギルドへお立ち寄りください」


「分かりました」


ユースケは受付端末を返却した。


そのまま、これまでに集めた素材もまとめて換金する。


昨日のウルフ狩りで手に入れた素材。


旅立ちの洞窟で入手したゴブリンの爪とホブゴブリンの牙。


さらに、昨夜の検証中に倒したブルースライムの素材もある。


換金を終えると、3人は冒険者ギルドをあとにした。



ギルドを出ると、魔法屋が目に入った。


シオリが立ち止まる。


「そういえば!」


「どうしたの?」


「アイスバレットとかアースも覚えた方がいいのかな?」


ユースケも魔法屋へ目を向ける。


「どうだろう」

「モンスターによっては弱点属性があるのかもしれないね」


「あっ!」


シオリが思い出したように声を上げた。


「ゲームだとゴブリンって氷に弱いイメージない?」


ヒナは少し考えてから答える。


「そういう作品もありますね」

「でもFKOでも同じとは限りません」


「うん」


ユースケも頷く。


「今のところは分からないけど試す価値はありそうだね」


シオリは魔法屋を見つめ、小さく頷いた。


「よし!」

「私はアイスバレット買う!」


「昨日の洞窟でも思ったんだ」

「ファイアだけだと効きにくい敵が出てきた時に困るかなって」


ヒナも穏やかに微笑む。


「選択肢が増えるのは良いかもね」


「そうだね」


ユースケも頷いた。


「じゃあ私は頭と腕だけアイアンにする!」

「それならアイスバレットも買える!」


「私は頭と腕、それから足も更新します」


「俺も残ってるブロンズ装備をアイアンに変えようかな」


買うものが決まり、3人はまず魔法屋へ向かった。




店内へ入ると、シオリは迷うことなくアイスバレットの魔法書を手に取った。


「これください!」


購入した魔法書へ意識を向ける。


淡い光に包まれた本が、そのまま光の粒となって消えていった。


【アイスバレットを習得しました】


「やったぁ!」


シオリが嬉しそうに笑う。


「これで火と氷が使える!」


「次にゴブリンと戦ったら試せるね」


「うん!」


ヒナも微笑む。


「本当に弱点かどうかはその時に確認ですね」


「そうだね」

「思い込みで決めないようにしよう」


「分かってるって!」


そう言いながらも、シオリは新しい魔法が嬉しいらしく、何度もスキル欄を眺めていた。



続いて防具屋へ入る。


「いらっしゃいませ」


店員が笑顔で迎える。


ユースケは店内を見回し、そのまま欲しい装備を伝えた。


「アイアンヘルムとアイアンガントレットとアイアングリーブをお願いします」


「かしこまりました」


「やっとアイアンシリーズが揃ったね」


新しい装備へ切り替え、身体を軽く動かして感触を確かめる。


シオリも予定どおり、頭と腕をアイアン装備へ更新した。


「私はここまで!」


ヒナは頭と腕、それから足もアイアンへ変える。


「これで昨日より安心ですね」


「装備も魔法も強化できた!」


シオリが嬉しそうに笑う。


ユースケも2人を見渡して頷いた。


「うん」

「洞窟へ行く前にできる準備はしておこう」


買い物を終えた3人は、再び冒険者ギルドへ向かった。



冒険者ギルドへ戻ると、受付嬢が3人に気付き、微笑んだ。


「ユースケ様、お待ちしておりました」


「もう応募があったんですか?」


ユースケが少し驚く。


「はい」

「2名ともお待ちです」


受付嬢が奥へ向かって声を掛けた。


「こちらへどうぞ」


その声に応じて、2人の渡り人が歩いてくる。


姿を見た瞬間、ユースケは目を見開いた。


「サトルさん…?」


「ユースケ!」


サトルも驚いたように目を見開き、すぐに笑った。


隣のランも小さく会釈する。


「お久しぶりです」


「ランさんも…」


思わぬ再会に、ユースケも自然と笑みがこぼれた。


シオリが小声で尋ねる。


「知り合い?」


「うん」

「前に旅立ちの森で一緒に戦った2人なんだ」


ヒナも納得したように頷いた。


「そうだったんですね」


サトルが少し照れくさそうに頭をかく。


「あの時はちゃんと礼も言えなかったからな」

「改めてありがとう」


ランも静かに頭を下げた。


「助けていただいたおかげで、また戦えるようになりました」


ユースケは首を横に振る。


「俺だけで助けたわけじゃないですよ」

「2人とも無事で良かったです」


サトルが笑う。


「募集を見たらユースケって名前があってな」

「まさかと思って来てみたら本当にお前だった」


「俺もびっくりしました」


「こっちもだ!」


サトルが豪快に笑う。


ランが続ける。


「私は格闘家でLv15です」


「俺は戦士でLv15だ」


サトルが胸を張る。


「前衛を募集してるんだろ?」


「はい」


昨日の洞窟で足りなかった前衛が、一気に2人増える。


しかも、1度一緒に戦ったことがある相手だ。


ユースケは迷わず頷いた。


「こちらこそ、ぜひお願いします」


「よし!」


サトルが手を差し出す。


「よろしく頼む!」


ユースケもその手をしっかりと握り返した。


「よろしくお願いします」


「よろしくね!」


「よろしくお願いします」


シオリとヒナも続く。


ランも小さく微笑んだ。


こうして、5人の臨時パーティーが結成された。


ユースケ。


シオリ。


ヒナ。


そして、思いがけず再会したサトルとラン。


旅立ちの洞窟へ挑む準備が整った。

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