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玄武の渡り人 ~帰還できるのは、ただ1つの大陸だけ~  作者: かにかま
第1章 始まりの街

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死の淵から…

始まりの街へ戻った3人は、宿の食堂で夕食を囲んでいた。


「ホブゴブリン倒せた時、嬉しかった!」


シオリが笑顔でスープを口へ運ぶ。


「シオリの追撃、良かったよ」


「ほんと!?」


ぱっと表情が明るくなる。


「うん」

「シールドバッシュに、ばっちりファイアを合わせてくれたからね」


「えへへ」


シオリが照れたように笑う。


「ヒナのウィンドも効いてたし、ヒールのおかげで安心して前に出られたよ」


「ありがとうございます」


ヒナも少し嬉しそうに微笑んだ。


しばらく食事を続けたところで、ユースケが口を開く。


「あの洞窟だけど…」


2人が顔を上げる。


「今の3人だと、奥まで進むのは少し厳しいかもしれないね」


「うん…」


シオリも真面目な表情になる。


「毎回、あの距離から先制できるとも限りませんしね」


ヒナの言葉に、ユースケも頷く。


今回は入口が近く、全員のMPも満タンだった。


それでも、1戦だけでかなり消耗した。


同じような戦闘が続けば、途中で回復が追いつかなくなる可能性もある。


「そうだ!」


シオリが顔を上げた。


「冒険者ギルドで臨時パーティーを募集してみない?」


「臨時パーティーか」


「人数が増えれば、もう少し安全に進めそうですね」


ヒナも頷く。


ユースケは少し考えてから答えた。


「そうだね」

「臨時募集はまだ使ったことないし、試してみようか」


「決まり!」


「では、明日は冒険者ギルドからですね」


「うん」


明日の方針も決まり、3人は残りの夕食をゆっくりと味わった。



食事を終え、宿の前で別れる。


「それじゃ、おやすみ!」


「おやすみなさい」


「また明日」


シオリとヒナを見送る。


ユースケも宿へ――。


戻ろうとして、足を止めた。


今日買ったヒール。


まだ自分では1度も使っていない。


「…少しだけ確認しておこう」


そのまま踵を返し、街の門へ向かった。



夜の旅立ちの草原は、昼間よりも静かだった。


街からそれほど離れていない場所で、ブルースライムがゆっくりと跳ねている。


今晩は恒例のゴーゴートレインが目的ではない。


確認したいのはヒールだ。


「まずは1匹でいいかな」


ブルースライムを1匹だけ引きつける。


アイアンソードも抜かない。


だが、いつでも避けられるように相手の動きは見ておく。


スライムが身体をぶつけてきた。


軽い衝撃が身体へ伝わる。


HPを確認する。


まだ十分に余裕がある。


もう1度だけ攻撃を受けたところで、距離を取った。


「このくらいでいいかな」


杖を使わず、そのまま魔法を発動する。


「ヒール」


柔らかな光が身体を包み、減っていたHPが戻っていく。


「ちゃんと使えるね」


回復量はヒナほど高くない。

盗賊の回復魔法適性は70%。

それでも、自分で回復できる手段があるのは大きい。


そこで、もう1つ気になることが浮かんだ。

以前、実戦でダメージを受けた後にHPが成長したことがある。


ならば、ダメージを受けてヒールで回復する。

この一連の行動を繰り返した場合、どうなるのか。


「試す価値はあるかな」


ただし、危険を冒すつもりはない。


相手はブルースライム1匹。


街の門もすぐ近くだ。


HPにも十分な余裕を残し、減りすぎる前に必ずヒールを使う。


ユースケは再びスライムの攻撃を受けた。


少しHPが減ったところで距離を取る。


「ヒール」


回復。


もう1度攻撃を受ける。


距離を取って、またヒール。


何度か繰り返したところで、通知が表示された。


【INTが1上昇しました】


「おっ」


狙っていたHPではない。


だが、ヒールを使い続けたことでINTが伸びた可能性は高そうだ。


「これはこれで収穫だね」


MPが少なくなったところで、ブルースライムを倒す。


そのまま街へ戻ることはせず、近くの岩へ腰を下ろした。


MPが自然回復するのを待ち、十分に戻ったところで立ち上がる。


そして、また別のブルースライムを1匹だけ引きつけた。


攻撃を受ける。


ヒールで回復する。


MPが減れば休む。


回復したら、また繰り返す。


「HPはまだ変化なしか」


何度目かの休憩を挟んだ頃――。


【MPが1上昇しました】


「MPも来たか」


魔法を繰り返し使った影響だろう。


それでも、ユースケは検証を終えなかった。


ここまでやったなら、もう少し確かめたい。


新しいスライムを引きつけては、余裕を持って攻撃を受ける。


ヒールを使い、MPが減れば休憩する。


何度同じことを繰り返しただろう。


最初は数回だけ試すつもりだった。


それがいつの間にか、攻撃を受ける回数やヒールの使用回数まで頭の中で数え始めている。


「こうなると、どこまでやったら変化するのかも気になるな…」


さらに検証を続ける。


それでもHPは上がらない。


そして――。


【INTが1上昇しました】


「なっ、またINTか…」


これでINTは今晩だけで2上がった。


MPも1伸びている。


それだけ魔法を繰り返し使ったということだ。


一方で、HPには一度も変化がない。


ユースケはブルースライムを倒し、近くの岩へ腰を下ろした。


「ここまでやって上がらないなら…」


以前、ウルフとの戦闘中に被弾した時はHPが伸びた。


だが今回は、いつ攻撃を受けるか分かった状態で、危険のない相手からわざと攻撃を受けている。


同じダメージでも、状況が違う。


「わざと攻撃を受けるだけじゃ、駄目なのかもしれないな」


もちろん、まだ断定はできない。


だが、少なくとも簡単ではなさそうだ。


「まあ、これでHPまで上がるなら…」


安全なブルースライムを相手に、攻撃を受けて回復するだけ。


それを繰り返せば、誰でもHPを伸ばせることになる。


「さすがに、そんな都合よくはいかないか」


少し考えて、苦笑する。


「死の淵から復活したら戦闘力が上がる…なんて世界でもなさそうだね」


もっとも、今やっていることは死の淵どころか、かなり安全な検証だ。


HPは伸びなかった。


その代わり、ヒールを使い続けたことでINTが2、MPが1伸びた。


「これも情報だね」


今後、実際の戦闘でダメージを受けた時にもう1度確認すればいい。


ユースケは立ち上がると、何気なく時刻を確認した。


「…2時?」


思わず二度見する。


「少しだけのつもりだったんだけどな…」


どうやら検証を始めると、時間の感覚まで鈍くなるらしい。


「さすがに今日は寝よう」


始まりの街へ戻りながら、最後に現在のステータスを開く。


【名前】ユースケ

【職業】盗賊

【レベル】17

【HP】52+3

【MP】40+5

【STR】18+5

【VIT】17+4

【AGI】21+4

【DEX】21+5

【INT】17+3

【LUK】18+1


【武器熟練度】

片手剣:Lv5

盾:Lv4

弓:Lv2


【習得スキル】


■盗賊固有スキル


【瞬足】

消費MP:0

移動速度が上昇する。


【クイックステップ】

消費MP:3

素早く後方へ飛び退き、敵との距離を取る。


■片手剣スキル


【スラッシュ】

消費MP:3

強力な斬撃を放つ。


【ワイドスラッシュ】

消費MP:6

前方広範囲へ斬撃を放つ。


【片手剣適性アップ】

パッシブ

片手剣の武器適性が10%上昇する。


【アーマーブレイク】

消費MP:5

強力な一撃を放ち、一定時間、敵の物理防御力と魔法防御力を低下させる。


■盾スキル


【シールドバッシュ】

消費MP:2

盾で相手を強く打ち付け、吹き飛ばす。


【シールドノック】

消費MP:3

盾を打ち鳴らし、周囲の敵の注意を自分へ向ける。


【盾適性アップ】

パッシブ

盾の武器適性が10%上昇する。


■弓スキル


【パワーショット】

消費MP:3

威力の高い矢を放つ。


【武器適性】

短剣:120%

片手剣:110%(100%+10%)

両手剣:80%

槍:100%

斧:90%

弓:110%

杖:90%

鈍器:90%

ナックル:110%

盾:100%(90%+10%)


【魔法適性】

攻撃魔法:90%

回復魔法:70%


【装備】

武器:アイアンソード(ATK+10)

盾:アイアンシールド(DEF+10)

頭:ブロンズヘルム(DEF+2)

胴:アイアンアーマー(DEF+12)

腕:ブロンズガントレット(DEF+3)

足:ブロンズグリーブ(DEF+3)

装飾品①:安らぎの指輪

効果:横臥時のHP・MP自然回復速度上昇(小)

装飾品②:なし


「うん」

「少しずつだけど、ちゃんと伸びてるね」


ヘルパーを閉じる。


明日は臨時パーティーを募集して、旅立ちの洞窟へ挑む。


今度は3人ではない。


どんな相手と組むことになるのか。


そんなことを考えながら、ユースケは宿へ戻っていった。

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