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玄武の渡り人 ~帰還できるのは、ただ1つの大陸だけ~  作者: かにかま
第1章 始まりの街

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新たな法則

旅立ちの洞窟へ向かう道中。


ユースケは4人を見渡した。


「戦う前に、役割だけ確認しておこうか」


「俺は前で受ける!」


サトルが迷いなく答える。


「私は回避しながら前で戦うわ」


ランも続けた。


「じゃあ、サトルさんがタンクで、ランさんは避けタンクかな」


ユースケは頷く。


「俺は状況を見ながら動くよ。2人を援護しつつ、シオリとヒナに敵が流れたら止める」


「うん!」

「攻撃は任せて!」


シオリが元気よく杖を掲げる。


「私は回復を優先します」

「余裕があれば攻撃にも参加しますね」


ヒナも穏やかに続けた。


「いいな!」


サトルが笑う。


「役割が分かってると動きやすい」


「まずはこれで試してみよう」


ユースケの言葉に、4人が頷いた。



旅立ちの森へ足を踏み入れて間もなく。


茂みの奥に3匹のウルフが見えた。


「3匹か」


ユースケはアイアンボウを構える。


「パワーショット!」


放たれた矢が先頭のウルフを貫いた。


ウルフはそのまま光の粒となって消える。


「ワンキルか!」

「やるな!」


サトルが感心した、その時だった。


ガサガサッ!


周囲の茂みが一斉に揺れる。


「えっ?」


シオリが振り向く。


新たに3匹のウルフが飛び出してきた。


最初に残っていた2匹と合わせて5匹。


一斉にこちらへ駆け出してくる。


「いきなり増えたな!」


サトルがすぐに前へ出る。


「任せろ!」

「シールドノック!」


盾を打ち鳴らす音が森へ響いた。


ウルフたちの視線がサトルへ集まる。


「来い!」


先頭のウルフが飛びかかる。


サトルは盾で受け止めたが、その横から別の1匹が回り込む。


鋭い牙が腕をかすめた。


「ヒール!」


ヒナがすぐに反応する。


柔らかな光がサトルを包んだ。


「助かる!」


さらに横から1匹が回り込もうとした。


「そっちは私がやるわ」


ランが進路へ入り込む。


ウルフが飛びかかる。


ランは身体を横へ滑らせるようにかわした。


「ダブルストライク!」


すれ違いざまに鋭い二連撃を叩き込む。


「ファイア!」


シオリの炎弾が、サトルへ向かっていた別のウルフを包み込んだ。


ユースケもアイアンソードへ持ち替える。


「スラッシュ!」


片手剣がウルフを切り裂く。


最初に見えていた3匹に加え、さらに3匹が反応した。


合計6匹。


「多いな…」


だが、こちらも5人いる。


サトルが正面で受け止め、ランが動き回る。


ヒナが2人の状態を見ながら回復し、シオリが後方から魔法を撃ち込む。


ユースケは手薄になった場所を埋めるように動いた。


やがて、最後のウルフへサトルの片手斧が振り下ろされる。


「ヘビィスイング!」


重い一撃を受け、ウルフが光の粒となって消えた。


「よし!」


サトルが片手斧を担ぐ。


シオリは周囲を見回した。


「最初は3匹だったのに、結局6匹いたね…」


「うん」


ユースケも茂みへ視線を向ける。


「前は、ここまで一気に反応しなかった気がする」


偶然かもしれない。


まだ判断するには早い。


「もう少し見てみようか」


そのまま森を進む。


次に見つけたのは、単独で歩いているウルフだった。


ユースケが弓で釣る。


すると――。


周囲から3匹が反応した。


「また増えた!」


シオリが杖を構える。


4匹を倒し、さらに先へ進む。


次の戦闘でも、複数のウルフが一度に反応した。


「やっぱり多いですね」


ヒナが周囲を警戒しながら呟く。


「人数が増えたことで、リンクする数も増えてるのかもしれない」


ユースケはそう答える。


まだ確定ではない。


だが、昨日までとの違いは明らかだった。


「洞窟でも同じなら、もう少し分かるかもね」


警戒を強めながら進んでいくと、やがて木々が途切れた。



旅立ちの洞窟を前に、ユースケは足を止める。


「洞窟でも基本は同じでいこう」

「危ないと思ったら無理はしない」


「おう!」


「分かったわ」


「うん!」


「はい」


5人は武器を構え、洞窟へ足を踏み入れた。


ひんやりとした空気が肌を撫でる。


岩壁から滴る水音が響く中、慎重に奥へ進んでいく。


しばらくすると、ユースケが足を止めた。


「いた」


岩陰から前方を覗く。


そこには、棍棒を持ったゴブリンたちがいた。


ユースケは数を確認する。


「…6匹」


さらに、その中央には一回り大きな魔物が立っている。


【ゴブリン】

【レベル14】


【ホブゴブリン】

【レベル16】


「前に3人で来た時は、ゴブリン4匹とホブゴブリン1匹だった」


シオリも数え直す。


「今日はゴブリンが6匹…」


ヒナが森の方角を振り返った。


「森でも、一度に相手をする数が増えていましたね」


「うん」


ユースケは敵の群れを見つめる。


3人の時は、ゴブリン4匹。


5人になった今回は、ゴブリン6匹。


「今のところ、パーティー人数が増えると敵の数も増えるみたいだね」


「人数が多ければ楽勝ってわけじゃないのか」


サトルが楽しそうに笑う。


「そう簡単にはさせてくれないみたいですね」


ヒナも苦笑した。


ランがゴブリンたちを見据える。


「でも、増えたのはゴブリンだけね」


「うん」

「ホブゴブリンは1匹のまま」


ユースケは頷く。


「人数に合わせて、敵の構成まで調整されてるのかもしれない」

「まだ2回だけだから断定はできないけどね」


「とりあえず、目の前のやつらを倒せばいいんだろ?」


サトルが盾を構える。


「そういうこと」


ユースケもアイアンソードへ持ち替えた。


「落ち着いていこう」


その瞬間。


ホブゴブリンがゆっくりと顔を上げた。


赤い瞳が、真っ直ぐこちらを捉える。


「…見つかった」


「グオオォォッ!」


咆哮が洞窟内へ響き渡った。


それを合図に、6匹のゴブリンが一斉に棍棒を構える。


「ホブゴブリンは私が引き受ける!」


ランが真っ先に飛び出した。


「グオッ!」


巨大な棍棒が振り下ろされる。


ランは踏み込む方向を変え、紙一重でかわした。


そのまま懐へ潜り込む。


「ダブルストライク!」


拳が立て続けにホブゴブリンの胴へ叩き込まれた。


「じゃあ、雑魚は俺だ!」


サトルが前へ出る。


「シールドノック!」


盾を打ち鳴らす。


甲高い音が洞窟に響き、6匹のゴブリンの視線が一斉にサトルへ向いた。


「来い!」


棍棒が次々と振り下ろされる。


ガンッ!


ガンッ!


数匹の攻撃を盾で受け止める。


だが、6匹すべてを防ぎ切ることはできない。


横から振るわれた棍棒がサトルの肩を捉えた。


「ぐっ!」


「ヒール!」


ヒナがすぐに反応する。


柔らかな光がサトルを包む。


「助かる!」


ユースケはランの方を見る。


ホブゴブリンの攻撃をかわしながら戦っているが、決定打には欠けている。


「ランさん、合わせます!」


「お願い!」


ユースケが横から踏み込む。


「アーマーブレイク!」


淡く光ったアイアンソードが、ホブゴブリンの胴を深く切り裂いた。


「グアッ!」


ホブゴブリンがよろめく。


ランはその隙を逃さない。


「ダブルストライク!」


鋭い二連撃が胸元へ叩き込まれた。


シオリもすでに杖を向けている。


「アイスバレット!」


杖の先から氷弾が放たれる。


ホブゴブリンの胸へ直撃した。


「グオオォッ!」


巨体が大きく揺れる。


だが、まだ倒れない。


「しぶとい!」


シオリが声を上げる。


その間にもサトルは6匹のゴブリンを相手にしている。


1匹の棍棒を盾で受け、別の1匹を片手斧で牽制する。


「サトルさん、まだいけますか!」


ユースケが声を飛ばす。


「任せろ!」


サトルの返事を聞き、ヒナも状態を確認する。


まだ急いで回復するほどではない。


ユースケはホブゴブリンへ向き直った。


「先にこっちを落とそう!」


「分かったわ!」


ランがホブゴブリンの攻撃をかわす。


空いた脇腹へ拳を叩き込んだ。


「シオリ!」


「いくよ!」


「アイスバレット!」


再び氷弾がホブゴブリンを捉える。


「グオッ…!」


巨体が光の粒へ変わった。


「よし!」


ユースケたちはすぐにサトルの援護へ回る。


「まとめて削るよ!」


ゴブリンたちの側面へ踏み込む。


「ワイドスラッシュ!」


青白い斬撃が数匹のゴブリンをまとめて切り裂いた。


反対側からランも飛び込む。


「スピニングキック!」


大きく身体を回転させ、周囲のゴブリンを蹴り飛ばす。


「ギャッ!」


「ギギィッ!」


ゴブリンたちの陣形が一気に崩れた。


「今なら私も!」


ヒナが杖を向ける。


「ウィンド!」


風の刃が傷付いたゴブリンを切り裂く。


ゴブリンが光の粒となって消えた。


「ナイス!」


シオリも別の1匹へ杖を向ける。


「アイスバレット!」


氷弾がゴブリンを貫く。


ユースケが片手剣を振るい、サトルが片手斧を叩き込む。


ランも動きの止まったゴブリンへ拳を打ち込んだ。


5人で押し切り、残ったゴブリンも次々と光へ変えていく。


最後の1匹へ、サトルの片手斧が振り下ろされた。


「ヘビィスイング!」


「ギャッ!」


ゴブリンが光の粒となって消える。


洞窟に静寂が戻った。


「ふぅ!」


サトルが大きく息を吐く。


「6匹相手はさすがに忙しいな!」


「でも、昨日より全然余裕があった!」


シオリが笑う。


ヒナも頷いた。


「人数が増えた分だけ敵も増えましたが、役割を分担できるのは大きいですね」


「そうだね」


ユースケは奥へ続く洞窟へ視線を向ける。


人数を増やせば、その分だけ敵も増える。


単純に仲間を増やせば簡単になるわけではない。


それでも、できることは確実に増えていた。


「このまま奥へ進んでみようか」


「おう!」


「行きましょう」


5人は武器を構え直し、旅立ちの洞窟の奥へ進んでいった。

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