パーティープレイ(前編)
翌朝。
宿を出たユースケは、ヘルパーを開いた。
「そういえば、パーティー機能ってちゃんと見てなかったな」
昨日までは組む相手がいなかった。
だが、今日からは違う。
(パーティー)
【最大12人まで編成可能】
【獲得経験値・ドロップは人数に応じて増加】
【経験値はパーティーメンバーへ均等に分配】
【ドロップアイテムはパーティーメンバーへランダムに分配】
【レベル差に関係なく参加可能】
【一定範囲内にいれば、戦闘へ参加していなくても経験値・ドロップを獲得可能】
【行動成長は実際に行動したメンバーのみ発生】
【パーティーメンバーのHPを表示】
【パーティーチャット使用可能】
「なるほど」
戦闘に参加していなくても、一定範囲内にいれば経験値は入るらしい。
「寄生もできるってことか」
ただし、何もしなければ行動成長は起きない。
「そこはちゃんと考えられてるな」
さらに説明を開く。
【経験値・ドロップ倍率】
【1人 100%】
【2人 125%】
【3人 150%】
【4人 175%】
【5人 200%】
【6人 225%】
【7人 250%】
【8人 275%】
【9人 300%】
【10人 325%】
【11人 350%】
【12人 375%】
「3人なら150%か」
経験値なら、それを3人で均等に分配する。
同じ敵を1匹倒した場合、1人あたりに入る経験値はソロの半分になる計算だ。
「1匹だけ見れば、レベル上げはソロの方が早いな」
だが、3人なら倒す速度も変わる。
複数の敵にも対応しやすくなり、休憩する回数も減らせるかもしれない。
単純に1匹あたりの数字だけでは判断できない。
続いてドロップを見る。
例えば、ドロップ率50%のアイテムなら、3人パーティーでは150%の倍率がかかる。
「50%の150%なら75%か」
ドロップしたアイテムは、3人のうち誰かへランダムに分配される。
「全員がもらえるわけじゃないけど、パーティー全体なら手に入りやすくなるわけだな」
経験値効率。
討伐速度。
安全性。
ドロップ。
人数が増えれば、単純に得をするわけでもないらしい。
昨日の出来事が脳裏をよぎる。
「…まあ、生き残るのが1番だな」
ユースケはヘルパーを閉じ、冒険者ギルドへ向かった。
◇
「換金をお願いします」
受付嬢へ素材を渡す。
昨日集めたウルフの牙などをまとめて換金すると、所持金が更新された。
【所持金 49,000G】
「これで残りの防具も買えるな」
ユースケはそのまま防具屋へ向かった。
◇
「いらっしゃいませ」
店主に声を掛けられる。
「ブロンズガントレットとブロンズグリーブをお願いします」
「ありがとうございます」
【ブロンズガントレットを購入しました】
【ブロンズグリーブを購入しました】
【17,000Gを支払いました】
【所持金 32,000G】
これでブロンズ防具が全て揃った。
「これなら、前より安心して戦えそうだな」
腕や足を軽く動かし、装備の感触を確かめる。
そして――。
「次は武器だな」
ユースケは武器屋へ向かった。
◇
店内には、さまざまな武器が並んでいた。
片手剣。
短剣。
両手剣。
槍。
斧。
弓。
杖。
鈍器。
ナックル。
ユースケは片手剣の値札へ目を向ける。
【片手剣】
【ブロンズソード ATK+6 10,000G】
【アイアンソード ATK+10 28,000G】
続いて、短剣を見る。
【短剣】
【ブロンズダガー ATK+5 10,000G】
【アイアンダガー ATK+9 27,000G】
「短剣も試したいんだけどな…」
盗賊の短剣適性は120%。
今後、使ってみたい武器ではある。
だが――。
ユースケは再び片手剣へ視線を戻した。
片手剣は熟練度Lv4。
適性も110%まで上がっている。
今まで最も使い続けてきた武器だ。
「今はこっちだな」
昨日、防具を優先して見送った武器。
今なら買える。
「アイアンソードをお願いします」
「ありがとうございます」
【アイアンソードを購入しました】
【28,000Gを支払いました】
【所持金 4,000G】
ユースケは新しいアイアンソードを手に取った。
木製の片手剣とは違う重みが手に伝わる。
軽く振ってみる。
ヒュッ。
空気を切る感触も違う。
「いいね」
思わず口元が緩む。
「やっぱりメイン武器の更新はテンション上がるな」
防具も揃った。
武器も更新した。
そして今日は、初めての3人パーティーだ。
ユースケはアイアンソードを腰に提げ、待ち合わせ場所へ向かった。
◇
旅立ちの草原入口。
「おはよっ!」
シオリが元気よく手を振る。
「おはようございます」
ヒナも小さく会釈した。
「おはよう」
シオリとヒナは、転職祝いでもらったアイアンスタッフを装備している。
ヒナのもう片方の手には、初心者装備の木盾もあった。
「あっ!」
シオリがすぐにユースケの腰へ気付く。
「剣、新しくなってる!」
「さっき買ってきた」
ユースケは柄を軽く叩いた。
「いいじゃん! かっこいい!」
シオリが目を輝かせる。
ヒナも微笑んだ。
「とてもお似合いです」
「ありがとう」
その時だった。
ピコン♪
【シオリからパーティー参加申請が届きました】
「もう作ってくれてたんだ」
「準備ばっちり!」
ユースケは申請を承認する。
【パーティーへ参加しました】
視界に3人の情報が表示された。
【ユースケ Lv14】
【シオリ Lv10】
【ヒナ Lv10】
それぞれの名前の横にはHPバーも表示されている。
「おおー! ちゃんとパーティーっぽい!」
シオリが嬉しそうに声を上げる。
「HPが見えるのは便利ですね」
ヒナも頷いた。
「昨日、ホーンラビットでファイア試してきたよ!」
「どうだった?」
「ちゃんと燃えた!」
「そっか」
シオリらしい答えに、ユースケが笑う。
「ヒールも問題なく使えました」
ヒナも続けた。
「それなら今日は実戦だね」
ユースケは2人を見る。
「まずは無理せず行こう」
「うん!」
「はい」
3人は旅立ちの森へ向かった。
◇
旅立ちの森入口。
ユースケは足を止め、2人へ向き直った。
「昨日分かったことだけ、先に共有しておくね」
2人の表情が引き締まる。
「1番怖いのはリンクだ」
「あの話ですよね」
ヒナが静かに言う。
「うん。近くのウルフまで戦闘に入ってくる」
ユースケは森の奥へ視線を向けた。
「今日は無理しない。危ないと思ったらすぐ下がろう」
2人が頷く。
「基本は俺が弓で1匹だけ釣る」
アイアンボウへ手を添える。
「近付いてきたら俺が前に出る。シオリは後ろからファイアをお願い」
「了解!」
「MPを使い切る必要はないよ。余裕がある時は杖も試してみようか」
「杖で殴るってこと?」
「そう。使えば杖熟練度がどう上がるかも確認できるかもしれない」
シオリの目が輝く。
「なるほど! それも試したい!」
「ただし、無理に近付く必要はないからね」
「はーい」
ユースケはヒナを見る。
「ヒナは回復を優先で。余裕があるなら木盾も使ってみよう」
「はい」
ヒナが木盾を構える。
「僧侶は盾適性が110%だったから、相性はいいはずだよ」
「敵が後ろへ抜けてきても、倒そうとしなくていい」
「盾で時間を作ってくれれば、その間に俺が戻る」
「分かりました」
続いてユースケは、自分のブロンズシールドを軽く叩いた。
「複数リンクした時は、俺が前に出る」
「昨日覚えたシールドノックもあるから、後ろへ向かった敵をこっちへ引き戻せるかもしれない」
「そんなスキルあるんだ!」
シオリが反応する。
「便利そう!」
「便利だと思う。ただ――」
ユースケは苦笑した。
「集めすぎたら、今度は俺がタコ殴りになる」
「それはダメ!」
「だから使いどころは考えないとね」
ヒナも小さく笑う。
「回復はしますけど、無茶はしないでくださいね」
「もちろん」
簡単な打ち合わせを終えたところで、ユースケはふと思い出した。
「そうだ。もう1つ確認しておこう」
「何を?」
「フレンドリーファイア」
シオリが首を傾げる。
「味方への攻撃判定があるかどうか」
「ああ!」
シオリが納得した直後、少し嫌そうな顔をした。
「まさか私、ユースケさんにファイア撃つの?」
「いや」
ユースケは即答した。
「さすがにこれは身体で試す内容じゃないな」
「よかったぁ…」
シオリが胸を撫で下ろす。
「昨日の今日ですからね」
ヒナも少し安心したように言う。
「うん。まずヘルパーに聞いてみよう」
ユースケはヘルパーを呼び出した。
(フレンドリーファイア)
【パーティーメンバーへの攻撃にダメージ判定は発生しません】
「やっぱり無効か」
これなら、ユースケが前で戦っている時でもシオリは攻撃魔法を使える。
「じゃあ、ユースケさんごと燃やしていいってこと?」
シオリが笑う。
「言い方」
ユースケも苦笑した。
「でも、これなら前衛の近くでも撃ちやすいね」
「任せて!」
「頼もしいけど、ほどほどにね」
ヒナがくすりと笑った。
確認も終わった。
ユースケはアイアンボウを取り出す。
「じゃあ、行こうか」
「うん!」
「はい」
3人は森の奥へ歩き始めた。
木々の隙間から差し込む朝日が地面を照らす。
どこか遠くから、ウルフの遠吠えが聞こえた。
初めてのパーティープレイが始まる。




