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玄武の渡り人 ~帰還できるのは、ただ1つの大陸だけ~  作者: かにかま
第1章 始まりの街

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他山の石

サトルとランを見送ったあと。

ユースケは1人、旅立ちの森へ戻ってきた。

森の静けさは、さっきまで起きていたことが嘘のようだった。


足を踏み入れた途端、ナオヤが消えていく光景が頭をよぎる。

ユースケは片手剣を握り直した。

「…行こう」

そして、ゆっくりと森の奥へ歩き出した。



狩りは、いつも以上に慎重に進めた。

弓で1匹だけ釣る。

片手剣へ持ち替える。

シールドバッシュで体勢を崩す。

通常攻撃を重ね、最後はスラッシュで確実に仕留める。


リンクしそうな位置では無理をしない。

敵の位置だけでなく、退路も確認する。

「同じ危険を、見落とさないようにしよう」

ナオヤの死を、ただ目の前で起きた出来事として終わらせるつもりはなかった。


無理をすれば死ぬ。

数を見誤っても死ぬ。

分かっていたつもりだったことを、改めて突きつけられた。


だからこそ、今まで以上に慎重に進む。

それでも足りないなら、もっと強くなる。

ユースケは次のウルフへ弓を向けた。



昼頃。


【レベルが13に上昇しました】


「レベルアップか」

ユースケは周囲の安全を確認してから、ヘルパーを開いた。


【名前】ユースケ

【職業】盗賊

【レベル】13

【HP】44

【MP】28+2

【STR】16+2

【VIT】15+1

【AGI】17+2

【DEX】17+3

【INT】15

【LUK】16


「やっぱりAGIとDEXは毎回伸びてるな」

Lv11、Lv12、そして今回のLv13。

ここまで3回続いている。

「盗賊の成長傾向としては、かなり濃そうだ」


とはいえ、まだ確定とは言い切れない。

「もう少しデータを集めれば分かりそうだな」

ユースケはヘルパーを閉じ、再び森の奥へ進んだ。



午後も同じ戦法で狩りを続ける。

ブロンズシールドは、木盾より明らかに安心感があった。


ウルフの攻撃を受けた時の衝撃も軽い。


シールドバッシュも使いやすくなった気がする。


「ブロンズシールドに替えて正解だったな」


そんなことを考えながら、次のウルフと戦っていた時だった。


【HPが1上昇しました】


「…来たか」


ユースケは表示を見つめる。


今日も何度か攻撃を盾で受けている。


防いではいるものの、すべての衝撃を完全に消せているわけではない。


「ダメージを受けることが、HP上昇の条件なのかもな」


第9話で考えた仮説。


危険だからわざと試すことはしなかったが、普通に戦っているだけでも検証材料は集まる。


「これなら無理に試す必要もないな」


さらに狩りを続ける。


片手剣を振るう。


かわす。


また踏み込む。


そして――。


【STRが1上昇しました】


「こっちも来たか」


思わず口元が緩む。


さらに――。


【盾熟練度がLv3になりました】

【シールドノックを習得しました】


「ピコーンきた…けど、今日はちょっと複雑だな」


ユースケはヘルパーを開いた。


【シールドノック】

消費MP:3

盾を打ち鳴らし、敵の注意を自分へ向ける。


「挑発系か」


ソロでは使う機会は少なそうだ。


だが、パーティーなら話は違う。


敵の注意を自分へ向けられるなら、後衛へ向かった敵を引き戻すこともできるかもしれない。


「後衛を守る時に使えそうだな」


その瞬間。


ナオヤの姿が脳裏をよぎった。


ウルフに囲まれた姿。


助けを求める声。


そして、光となって消えた姿。


「…」


ユースケはしばらく黙っていた。


忘れるつもりはない。


けれど、今ここでできることもある。


「使えるものは、ちゃんと使えるようにしておこう」


シールドノックの表示をもう1度確認し、ユースケはヘルパーを閉じた。



気付けば、夕日が森を赤く染め始めていた。


そして――。


【レベルが14に上昇しました】


「よし」


ユースケはヘルパーを開いた。


【名前】ユースケ

【職業】盗賊

【レベル】14

【HP】46+1

【MP】31+2

【STR】16+3

【VIT】16+1

【AGI】18+2

【DEX】18+3

【INT】16

【LUK】16


Lv13の時と見比べる。


HPは今回も2。

MPは3。


AGIとDEXも、やはり1ずつ上がっている。


一方で、今回はSTRとLUKが伸びず、VITとINTが上昇していた。


「AGIとDEXは毎回」


そして――。


「STRとLUK、VITとINTが交互…かな」


Lv11ではSTRとLUK。

Lv12ではVITとINT。

Lv13では再びSTRとLUK。

そしてLv14ではVITとINT。


ここまで並べると、かなり規則的だ。

「まだ断定はしないけど…たぶん合ってる」

少しずつ、盗賊の成長法則が見えてきた。


「あと何回か確認すれば確定できそうだな」

ユースケはヘルパーを閉じた。


まだ検証したいことはいくらでもある。

それでも、この世界の仕組みは少しずつ見えてきていた。



その時だった。

ピコン♪


【グループチャットに新着メッセージがあります】


「ん?」

グループチャットを開く。


(シオリ)

『転職終わったよー!』


続いて、ヒナからも届く。


(ヒナ)

『私も無事に転職できました』


「おっ」

思わず笑みがこぼれた。


(ユースケ)

『おめでとう』


すぐに返信が届く。


(シオリ)

『今日は3人で夕飯食べに行かない?』


ユースケもすぐに返した。


(ユースケ)

『了解』

『ちょうど狩りを切り上げるところだから、今から街に戻るよ』


チャットを閉じる。


張り詰めていた気持ちが、ほんの少しだけ軽くなった。

ユースケは夕日に照らされた旅立ちの森を振り返る。

今日ここで起きたことを、忘れるつもりはない。

それでも――。

立ち止まり続けるわけにもいかない。


「さて…帰るか」


ユースケは森に背を向け、始まりの街へ向かって歩き始めた。

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