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玄武の渡り人 ~帰還できるのは、ただ1つの大陸だけ~  作者: かにかま
第1章 始まりの街

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転職(後編)

【転職が完了しました】


眩い光がゆっくりと消えていく。

ユースケは静かに目を開いた。


目の前には、新たな表示が浮かんでいる。


【職業 盗賊】


「これが盗賊か…」


身体が少し軽くなったような感覚が全身を駆け抜ける。


シスターが穏やかに微笑んだ。


「改めまして、ユースケ様。おめでとうございます」

「ありがとうございます」


「転職された渡り人様には、お祝いとしてお好きな武器を1つお授けしております」


「お祝いの品ですか?」


「はい。さらに、僧侶と魔術師へ転職された方には、初級魔法書を1冊お贈りしております」

「攻撃魔法、回復魔法を問わず、お好きな初級魔法を1つお選びいただけます」


「なるほど」


武器は全員。

僧侶と魔術師は、それに加えて魔法書も受け取れるらしい。


魔法屋で見た魔法書は、簡単に手が出せる値段ではなかった。

転職直後でも、それぞれの職業らしく戦えるように用意されているのだろう。


シスターに促され、祭壇の横へ移動する。

そこには盾を除く各武器種が、整然と並べられていた。


短剣。

片手剣。

両手剣。

槍。

斧。

弓。

杖。

鈍器。

ナックル。


どれも初心者装備とは一目で違う。

丁寧に手入れされた武器ばかりだ。


「お好きな武器を1つ、お選びください」


ユースケは並んだ武器を見渡した。


盗賊なら短剣との相性が一番良い。

だが、今のメインは片手剣だ。


だからこそ、別の選択肢を増やしたい。


「弓をお願いします」


シスターが1本の弓を両手で差し出した。


「こちらはアイアンボウでございます」


ユースケは弓を受け取る。

思っていたより軽い。


それでも弦にはしっかりとした張りがあり、初心者用とは違う武器らしい存在感があった。


「玄武様の御加護がありますように」

「ありがとうございます」


ヘルパーへ念じ、アイアンボウを装備する。


弓が淡い光に包まれ、背中へ収まった。


その直後、新たな表示が浮かぶ。


【通常の矢は必要ありません】

【装備中の弓に応じた矢が一定時間ごとに自動生成されます】


「いいね、そういう仕様か」


矢を買う必要はないらしい。

弓だけあれば戦える。


荷物も増えない。

盗賊がサブウェポンとして使うにも扱いやすそうだ。


さらに、もう1つ通知が表示された。


【ヘルパー機能が更新されました】


「更新?」


何が追加されたのか気になる。


だが、ここで全部確認する必要はない。


「宿に戻ってから見よう」


ユースケはシスターへもう1度礼を告げ、玄武教会をあとにした。



玄武教会を出たあと、ユースケは冒険者ギルドへ立ち寄った。


今日までに集めた素材を換金し、そのまま宿へ戻る。


部屋へ入ると、ベッドへ腰を下ろした。


「さて…」


転職は終わった。

新しい武器も手に入った。


次に確認したいのは、さっきの更新だ。


(更新情報)

【ヘルパー機能が更新されました】

【世界地図を公開しました】


「世界地図か」


すぐに表示する。


(世界地図)

【玄武大陸 9,815名】


【第27始まりの街】(現在地 245名)

【第14玄武門】(推奨レベル18)

【始まりの街2か所の渡り人が合流する街です】

【???】(推奨レベル??)

【???】(推奨レベル??)

【???】(推奨レベル??)


「思ったより広いね…」


始まりの街は、本当に最初の拠点に過ぎないようだ。

そのまま現在地へ目を戻す。


245名。

「…245人?」

詳細を開く。


(第27始まりの街)

【開始時の渡り人 250名】

【現在の生存者 245名】


「5人…死んだのか」


胸の奥が重くなる。


自分が知っているのは、まだ旅立ちの草原までだ。

それでも、すでに5人がいなくなっている。


続いて玄武大陸全体を確認する。


【開始時の渡り人 10,000名】

【現在の生存者 9,815名】


「185人…」


思っていたより多い。


数字として表示されているだけなのに、そのすべてが人の命だ。


ユースケは少し黙ったあと、地図へ視線を戻した。


「玄武門は、始まりの街が2つ合流するのか」


250人ずつなら最大500人。

もちろん、向こうの街でも死者は出ているはずだ。


それでも、ここよりずっと多くの渡り人が集まることになる。


「タケシたちも、生きていてくれればいいんだけどな…」


タケシ。

サクラ。

そしてマユ。


今どこにいるのかも分からない。

それでも、生きていれば再会できる可能性はある。


「まずはレベルを上げて、玄武門を目指そう」


次の目標が決まった。

続いて、転職したばかりの職業情報を開く。


(盗賊)

【固有スキル】

【瞬足】


「これが固有スキルか」

さらに詳細を開く。


(瞬足)

【移動速度が上昇します】

【ON/OFFの切り替えが可能です】

【消費MP:0】


「MP消費0か」

説明を見る限り、上がるのは移動速度らしい。

戦闘でも移動でも使えそうだ。


「これは明日試してみよう」

ヘルパーを閉じようとした、その時だった。


【グループチャットに新着メッセージがあります】


「シオリたちだ」

グループチャットを開く。


(シオリ)

『やったよ! レベル8になった!』


(ヒナ)

『私もレベル8になりました! ホーンラビットも安定して倒せるようになってきました』


思わず笑みがこぼれる。

2人とも順調に成長しているようだ。


(ユースケ)

『おめでとう』

『こっちは今日レベル10になって、盗賊へ転職したよ』


少しして返信が届く。


(シオリ)

『えっ!? もう転職したの!?』


(ヒナ)

『さすがユースケさんです!』


ユースケは小さく笑い、続けて入力した。


(ユースケ)

『2人もレベル10になって転職したら、一緒にパーティーを組もう』

『それまでは焦らず、安全第一でね』


すぐに返信が返ってくる。


(シオリ)

『うん! 頑張る!』


(ヒナ)

『はい。約束ですね』


約束か。


1人で進むことはできる。

それでも、仲間と一緒に戦えるなら、その方が心強い。


(ユースケ)

『おやすみ』


最後にそう送って、チャットを閉じた。


新しい職業。

新しい武器。

そして、試したいことも増えた。


「明日はまず、瞬足と弓を試してみよう」


そう決めると、ユースケはベッドへ身体を預けた。

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