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玄武の渡り人 ~帰還できるのは、ただ1つの大陸だけ~  作者: かにかま
第1章 始まりの街

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転職(前編)

始まりの街へ戻ってきたユースケは、その足でヘルパーを呼び出した。


(転職)


【転職は玄武教会で行えます】


「玄武教会か」

昨日までは気にも留めていなかった建物だ。


街の中心部へ向かうと、ひときわ大きな建物が目に入る。

深緑色の屋根に、黒い石造りの外壁。


入口の上には、巨大な玄武の紋章が掲げられていた。

亀に蛇が巻き付く姿が、精巧に彫られている。


「さすが玄武大陸の教会だね…」

これだけ立派な建物なら、玄武はこの大陸にとって特別な存在なのだろう。


青龍、朱雀、白虎にも、それぞれ違った教会があるのかもしれない。


「他の大陸へ行くことがあれば、その時に分かるかな」

ユースケは玄武教会の扉を開いた。



教会の中は静寂に包まれていた。


磨き上げられた石畳。

深緑の絨毯が祭壇まで真っすぐ続き、壁には玄武を描いた大きな壁画が飾られている。


祭壇の奥には、巨大な玄武像が静かに鎮座していた。

その前に立つシスターが、ユースケへ微笑みかける。


「ようこそ、玄武教会へ」

「ユースケです。転職に来ました」

「承りました」


シスターは穏やかに一礼した。


「レベル10へ到達された渡り人は、こちらで転職を行えます。転職後は再び経験値を獲得できるようになります」

「職業は全部で6つございます」


シスターが手をかざす。

ユースケの前に、新たな表示が現れた。


【戦士】

【格闘家】

【盗賊】

【僧侶】

【狩人】

【魔術師】


「6つか」


「転職後は、職業ごとにレベルアップ時の成長傾向が変化します」


続けて画面が切り替わる。


【職業ごとの成長傾向】

【戦士 STR・VIT】

【格闘家 STR・AGI】

【盗賊 AGI・DEX】

【僧侶 VIT・INT】

【狩人 DEX・AGI】

【魔術師 INT・DEX】


「成長傾向…?」


「はい。職業によって、特に伸びやすい能力が異なります」

「例えば戦士ならSTRとVIT、魔術師ならINTとDEXです」


「盗賊はAGIとDEXか」


「その通りです。ただし、それ以外の能力が成長しなくなるわけではございません」


「なるほど」

得意な能力が変わるだけで、完全に成長が固定されるわけではないらしい。


「さらに、各職業には固有スキルが存在します」


「武器スキルとは別ですか?」


「はい。職業ごとに習得できる特別な能力です。戦闘だけでなく、探索や支援に役立つものもございます」


職業固有スキル。

これも転職後に確認しておきたい。


「そして、もう1つ重要なのが武器適性です」


シスターが再び手をかざした。


【主な武器適性】

【戦士 片手剣120%/両手剣120%/斧120%/盾120%】

【格闘家 ナックル120%】

【盗賊 短剣120%/弓110%/ナックル110%/片手剣100%/槍100%】

【僧侶 杖120%/鈍器110%/盾110%】

【狩人 弓120%/短剣110%】

【魔術師 杖120%/短剣110%】


「武器適性が高いほど、その武器の性能を引き出しやすくなります。また、武器熟練度も上がりやすくなります」


「なるほど…」

ユースケは表示を見比べる。


戦士は剣や斧、盾に強い。

格闘家ならナックル。

狩人なら弓。

僧侶と魔術師なら杖。


どの職業にも、分かりやすい得意武器がある。


その中で盗賊は少し違った。


短剣が120%。

弓とナックルも110%。

片手剣と槍も100%ある。


「盗賊は使える武器が多いんですね」


「はい。突出した分野では他の職業に譲る場合もございますが、多くの武器を扱いやすい職業となっております」


「これは面白い」


片手剣を使いながら、必要なら弓へ持ち替える。

短剣にも強い。

槍も使える。


今まで試してきた戦い方と相性が良さそうだった。


「ちなみに、魔法にも職業ごとの適性がございます」


「魔法にも?」


新たな表示が現れる。


【魔法適性】

【戦士 攻撃魔法70%/回復魔法50%】

【格闘家 攻撃魔法70%/回復魔法50%】

【盗賊 攻撃魔法90%/回復魔法70%】

【僧侶 攻撃魔法100%/回復魔法130%】

【狩人 攻撃魔法80%/回復魔法70%】

【魔術師 攻撃魔法130%/回復魔法100%】


「職業が違っても、魔法は覚えられるんですね」


「はい。魔法書を使用すれば、職業を問わず習得できます。ただし、適性によって効果は変化します」


「同じファイアでも?」


「魔術師が使用した方が高い威力を発揮できます」


「逆に、ヒールなら僧侶が一番ですね」


「その通りです」


誰でも使える。

だが、誰が使っても同じではない。

武器と同じ仕組みらしい。


ユースケはもう1度、盗賊の適性を確認した。


短剣120%。

弓110%。

片手剣100%。

攻撃魔法も90%ある。


戦士ほどSTRは伸びない。

専門職ほど剣や弓、魔法を極められるわけでもない。


その代わり、選択肢が多い。


敵や状況に合わせて武器を変え、必要なら魔法も使う。


昔からMMOでは、特化型よりバランス型でキャラを作ることが多かった。


バランス型は器用貧乏。

そう言われることも多い。


確かに、1つの能力だけを比べれば特化型には勝てない。

でも、それだけじゃない。


できることが多ければ、それだけ状況に合わせて戦い方を変えられる。


器用貧乏も、突き詰めれば万能型になる。

少なくとも、ユースケは昔からそう思っていた。


「盗賊が一番合いそうだね」

自然と笑みが浮かぶ。


シスターが静かに尋ねた。


「転職先はお決まりになりましたか?」


ユースケは頷く。


「盗賊でお願いします」


「かしこまりました。それでは、祭壇の中央へお進みください」


促されるまま、祭壇の中央へ立つ。

足元には玄武の紋章が刻まれていた。


シスターが静かに祈りを捧げる。


すると、玄武像の足元から深緑色の光がゆっくりと溢れ出した。

光は祭壇を包み込み、やがてユースケの身体へ広がっていく。


その瞬間、目の前に表示が浮かび上がった。


【転職を開始します】


深緑の光が、ユースケの身体を包み込んだ。

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― 新着の感想 ―
攻撃魔法と回復魔法で適性があるのは面白いかも! 上級職とか出たきたときが楽しみです。
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